会計用語には様々な用語がありますが、今回ご紹介する「期首簿価(きしゅぼか)」もその1つ。英語ではbook valueと呼ばれる簿価は帳簿価額の略語であり、期首簿価とは、期の初めに記載された簿価のことを意味します。会計処理には必ずと言ってよいほど必要な「減価償却」に必須な考え方です。本記事では、減価償却と期首簿価の関係などについて説明します。
「帳簿価額」の略称で、「簿価」と呼ばれる数字は、会計帳簿に記録された資産や負債の評価額のことです。企業や個人事業主は決算や申告時に、簿価について適正な会計処理をする必要があります。「簿価」は、帳簿における残高の金額ともなることから「帳簿残高」ともいい、前期末の帳簿価額は、次の期の開始時の帳簿価額と同額になり、これを「期首簿価」というのです。
つまり、前期の「期末簿価」=次の期の始めの「期首簿価」ということになります。
期首簿価は、次に説明する減価償却費の計算に必要な数字です。取得の次の年は、取得価額からその年の減価償却費を差し引いた金額が、翌年の期首簿価、翌年以降は、その期首簿価から減価償却費を差し引いた金額がさらにその翌年の期首簿価になり、期首簿価はどんどん減っていきます。
なお、簿価はあくまで帳簿上の価額ですが、市場における価値はその時によって変化しますので、税金の計算については時価で行うことが原則となっています。
減価償却とは、長期にわたって使用する固定資産を、購入時には資産として計上し、その利用期間にわたって毎年費用として計上することです。
不動産や建物、機械や自動車など長期にわたって使用し、年数がたつにつれてその資産価値が減少するものが減価償却の対象となります。建物や自動車などは劣化していく期間が異なりますので、減価償却できる期間を「法定耐用年数」として税法上の基準が定められているものです。
参照: 耐用年数表|国税局
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実際に固定資産を減価償却していくと、最終的に価値が0円になる?と思われるかもしれませんが、この時の取扱は、そのものが有形固定資産か無形固定資産によって変わります。
結論から言うと、自動車などの有形固定資産の場合はその処分まで資産自体が残るため、最終的にはその年の期首簿価-1円まで償却できます。
つまり帳簿上には1円が残り、固定資産台帳に残すように処理をします。これを備忘価格といいます。
ソフトウェアなどの無形固定資産は最終的に残存価格0円とし、1円を残す必要はありません。会計ソフトでは、固定資産の内容を選択することで、備忘価格を設定できるようになっています。
・有形固定資産:自動車 ・建物および附属設備 ・構築物 ・船舶 ・工具 ・器具備品 ・機械
・無形固定資産:ソフトウェア ・商標権 ・特許権 ・実用新案権 ・意匠権 ・育成権 ・営業権
耐用年数が法的に決められているといっても、諸事情で使わなくなるということもあります。その場合は、「除却」と「廃棄」の2通りの処理があります。
除却は、使用をやめるけれど、廃棄処分はせずに保管しておくことです。例えば型遅れのPCなどを倉庫に保管したままにしておくといった場合が除却になります。
有形固定資産を除却した時は、除却時における有形固定資産の簿価を「固定資産除却損」という勘定科目で損失の処理が必要です。
この「固定資産除却損」については、以下のように除却するタイミングで計上内容が異なります。
・期首に除却する場合:期首簿価で除却
・期中に除却する場合:
期首簿価-期首から除却時までの減価償却費を月割した価額(月未満の端数は切り上げ)で除却
・期末に除却する場合:期首簿価-当期の減価償却費で除却
もし、除却対象の固定資産に、売却したらお金になる価値が残っている場合には「貯蔵品」という勘定科目を使って計上したうえで、簿価との差額を「固定資産除却損」を使って記帳することになります。
また、固定資産を廃棄する場合は、廃棄時点における簿価と廃棄処分費用の合計金額を「固定資産廃棄損」として計上します。
「固定資産廃棄損」も除却と同様、廃棄のタイミングによって期首簿価をそのまま使うか、期中の減価償却費を減じて計算するかで経常内容が異なります。
・期首に廃棄する場合:期首簿価+処分費用
・期中に廃棄する場合:
期首簿価-期首から除却時までの減価償却費を月割した価額(月未満の端数は切り上げ)+処分費用
・期末に廃棄する場合:期首簿価-当期の減価償却費+処分費用
固定資産の計上における、減価償却の考え方や計算には、今回ご紹介した「期首簿価」が大事になってきますので、しっかりと理解しておきましょう。