みなさんはお客様からお金を頂いた時に前受金か売上かで迷ったことはありませんか?会計に詳しくない人にとっては違いがわかりにくいですが、会計上、両者は性質が異なります。もっと言えば売上には計上要件があります。そのため「資金の動き」だけでなく取引全体の観点から勘定科目の性質まで説明していきます。
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前受金とは「取引に先立って資金の流入があること」です。つまり本来もらえるタイミングの前にお金が会社に入ることです。会社の資金繰りの観点からは、OK!ですね。
このお金を取引とは別であることを明示することを目的として,お金(要は現金預金)の相手勘定科目として負債に計上します。一方で売上は「商品を売り上げた事実が発生した」ことにより計上します。
では、前受金と売上はそもそも一緒なの?違うの?といった疑問が出てくると思います。当然ながら、一緒のところもあれば違うところもあります。一緒のところは売上取引に関係するという点です。違うところは、取引の前に発生するのが前受金、取引と同時に発生するのが売上です。
前受金は資金のみに着目するため、お金を受け取った時点で、現金100/前受金100と仕訳します。ポイントは借方(左側の勘定科目)は現金か預金であり債権ではない点です。売上の場合はほとんどが、売掛金100/売上100と仕訳します。ポイントは借方が現金でも債権でもいい点です。実務では信用取引が多いのでほぼ売掛金です。
前受金は流動負債に計上します。流動負債とは「1年以内の支払い義務」です。え?お金を受け取ったのに義務なの?となるかもしれません。しかしこれは、お金を払うことではなく、「前もって受け取ったから取引の時にお金もらえないよ」という意味での負債です。そのため、資金が社外流出することはありません。
資金を受けとった時に、現金100/前受金100として仕訳して、取引があった時に、前受金100/売上100と仕訳します。なので、最終的に前受金は財務諸表から消えます。これを経過勘定科目といいます。要はいつかなくなるから仮の性質ということです。そのため、一旦負債に計上して負債からなくなります。
そのため財務諸表全体のバランスが崩れることはありません。一方で売上は損益計算書に計上します。計上の要件は「役務の提供と現金又は現金同等物の受領を共に満たすこと」です。
なんだか難しい表現ですね。会計は専門家が専門家に向けて作っているのでテクニカルタームのオンパレードです。故に難しく感じます。もし上記の表現だけで理解できた方は相当、会計のセンスをお持ちです。では売上の計上要件に戻ります。要はサービスを提供することとお金を受け取ることを共に満たしたらOKということです。
例えば、あなたがコンビニのオーナーとします。お客さんがおにぎりを買えば、おにぎりを渡すサービスを満たします。お客さんがお金を払えばお金を受け取る要件を満たします。これで売上OKです。また、現金同等物でもよいとされているため、債権でもOKです。売掛金や受取手形でもいいということです。そして売上は先述したように収益を構成するため利益をもたらします。この利益は最終的に貸借対照表の利益剰余金となります。
つまり、利益が増えて純資産も増えるという二重の恩恵を受けれます。前受金が負債であることを考えると、損益計算書で当期の利益を増やし、貸借対照表では純資産となって自己資本比率を上げてくれる売上の方が財務諸表上は健全ですね。
簿記検定の受験生の方は前受金には注意が必要です。なぜなら経過勘定科目なので注意が散漫になりがちですが、よく出題されます。現金と売上の双方に関わるから重要なのです。特に2級では第1問の仕訳問題でミスすると4点逃がしちゃいます。
第3問の総合問題では簡単だけど忘れて2点落としたなんてミスも聞きます。ここは確実に取りたいですね。1級の受験生の場合はキャッシュフロー計算書が出題された時に差がつきます。
営業キャッシュフローを構成すると、前受収益と異なり、全額資金の移動を伴う前受金は全額計上しますよ!ここは試験前に最終確認で見てもいいと思います。ちなみに最近では公認会計士試験の短答式試験にも頻繁に出題されます。論文式試験では平成27年・30年にキャッシュフロー計算書の作成が問われました。
簿記検定でいつ出題されてもおかしくないですね。
一方で売上の計上する時の注意点は計上してはいけない分を計上しないことです。実務でよくあるのが翌期の売上を当期の売上に計上することです。これは絶対にやってはいけません。恐らく監査法人から指摘されます。例えば、あなたがゲームアプリ開発の会社の財務担当とします。お客さんはクレジットやiTunesで課金します。
しかし、この時点でサービスの提供はしていません。お客さんが実際にゲームをした時点で役務の提供が満たされます。売上の要件を満たしていることには注意が必要です。要は帰属させる期間が大切ということです。そのため、サービスとお金の両方に注意を払えるといいですね。
いかがでしたか?前受金と売上は発生する時期は近いですが近いですが、計上要件や性質は全く異なります。しっかりと理解しておくようにしましょう。