税理士には、様々な“研修制度”が設けられており、なかでも税理士に登録したばかりの人向けの、“登録時研修”なるものが用意されています。今回は、税理士登録時の研修と、それに合わせて税理士が受けるべきとされる研修制度全般について解説していきます。
税理士には、そもそも税理士法上に「税理士は、所属税理士会及び日本税理士会連合会が行う研修を受け、その資質の向上を図るように努めなければならない。」(税理士法第39条の2)と記載がある通り、研修を受け、自分自身の能力を向上させないといけないといった努力義務があります。税理士試験を突破したからといって、様々な実務上のケースに対応が出来る訳ではありません。お客様に迷惑をかけないためにも、常に自己研鑽は必要です。
ただし、現状はあくまで研修を受けるのは義務ではなく“努めなければならない”という表現の通り、努力義務の位置づけです。しかし、今後の法改正では、強制力を持たせていく方向性のようです。税理士会全体としても、税理士の質の向上は急務であるという認識があるのでしょう、そのためにも研修を受けるべきといった考えは年々強くなっている様子です。また、税理士会の研修規則上には、一事業年度に36時間以上研修を受けなければならないという表記があります。以前は研修を受けなかった場合の罰則規定はなかったですが、現在は研修を受けていない場合は会則遵守義務違反になります。2019年10月から研修受講時間の公表が始まり、税理士自身の名前と共に研修受講時間が公に発表されるようになりました。
また、税理士主催の研修や、日本税理士連合会が主催する研修は様々な内容がありますが、その中には、税理士になったばかりの方向けの“登録時研修”というものがあります。
それでは、この登録時研修について簡単に説明していきます。登録時研修とは、税理士として登録をすると1番はじめに行われる研修です。具体的には、税理士に登録をして1年以内の税理士を対象とした研修です。計20時間前後の研修で、数日間に渡り開催されている事が多いようです。研修の講師には、税理士はもちろんのこと、大学の教授などが講義している事もあるようです。主に内容は、税理士制度や憲法など法律について、そして業務知識についてとなります。詳細な内容は所属の税理士会や時期により若干違いもあるようです。
前述では登録時研修の説明をしましたが、それだけでは一事業年度36時間の研修努力義務を果たせないですよね?もちろん、登録時研修以外にも税理士向けの研修があります。登録時研修以降は、特段受講する順序が決まっているわけではなく、所属税理士会によっても変わりますが、おおよそ毎月10件前後の研修が行われているので、希望する研修に参加をする流れとなります。主に、税理士会や税理士会支部が主催する研修が多い様です。無料の研修もあれば、有料の研修もあり、有料のものだとしても、数千円程で受講が出来る研修が多いです。
下記記載の研修が、登録時研修以外に用意されている各種研修です。
こちらは、全国各地で実施されている研修会です。全国15の税理士会の協力の上、開催がされています。
36時間の研修会場で受けるのは時間的にもなかなか難しい、受けたい研修の日程が合わない、という方に向けて、日本税理士会連合会のホームページで公開されている研修動画を見て受講が出来る研修です。
全国15の税理士会をさらに7府ルームに分け、税理士の日々の研究結果の発表や、それに対しての質疑応答を実施する、研究討論会です。
研修会場に行くには往復の交通費や時間など、時間と労力がかかります。そういった方向けに、先ほども簡単に紹介しましたが、“マルチメディア研修”というものが用意されています。過去に開催された研修が動画で見られるため、事務所に居ながら研修を受ける事が出来、時間も気にする事無く受講が出来るので便利ですよね。ぜひ、時間を有効に活用し、「時間が無いので研修会場に行けないな…」という方もマルチメディア研修を受講してみましょう。
冒頭でもお伝えしていますが、税理士に対して一事業年度36時間の研修受講が課されておりますが、あくまで努力義務となっています。受けないからといって、何か罰則規定がある訳ではありません。(今は、受講していない税理士名がHPで検索できる様になっていきますが。)
しかし、昨今のビジネスの仕組みはどんどん変化しており、同時に商取引も複雑になっているケースも出ています。税理士の資格を取ったからといって、税理士の職務が問題無く遂行出来る訳ではなくなってきている、というのが現状でしょう。税理士になるため、資格取得に向けて毎日勉強されていた方も多いと思います。税理士になって終わりではなく、その後も日々勉強をしていかないといけないのは大変ですが、ぜひ研修制度を有効に使い、税理士自身のスキル・知識の向上を図っていけると良いですね。
《関連記事》
税理士登録について詳しく知りたい人は、下記の記事を参考にしてください。