消費税は、商品・製品の販売やサービスの提供によって課税される税金です。消費者は支払う義務があり、一定の事業者には納付の義務があります。
この消費税の計算方法には大きく以下の2つの方法があり、選択することが可能です。
1.本則課税
2.簡易課税
今回はこれら2つの計算方法を紹介し、どちらの方法を選択する方がお得になるか、つまり支払うべき税金が少なくなるのは、どちらの方法なのかを解説していきます。また、選択に際して注意すべき点等も紹介していきたいと思います。
消費税は、消費者に広く薄く負担を求めるものなので、本来は物品やサービスの提供を行う全ての事業者は消費税の納税が必要です。しかし、消費税の負担の大きさに配慮して、一部の事業者は消費税の納税義務が免除されています。免除を受けることができる要件は以下のとおりです。
この要件を満たさない場合は消費税の申告・納税が必要です。
ここで、消費税の計算方法を簡単に説明すると、売上により「預かった消費税額」から仕入や経費の支払いにより「支払った消費税額」を引いて残った金額が納めるべき消費税になります。
この「支払った消費税額」の計算方法として、1. 本則課税 と2. 簡易課税 の2種類の方法があります。
本則課税とは、原則課税ともいわれ消費税の原則的な計算を行う方法です。したがって、上述のとおり、売上により「預かった消費税額」から仕入や経費の支払いにより「支払った消費税額」を引いて残った金額が納めるべき消費税になります。「支払った消費税額」は実際に支払った消費税額です。
さらに、本則課税は1. 全額控除 2. 個別対応方式 3. 一括比例対応方式の3つに分類されます。
全額控除は文字通り仕入税額控除の全額を控除できる方法です。
全額控除を行うためには以下の要件を満たす必要があります。
・課税期間の課税売上が5億円以下
・課税売上割合が95%以上
上記の要件を満たさない場合、全額控除を行うことはできず、個別対応方式もしくは一括比例対応方式で計算する必要があります。個別対応方式 、一括比例対応方式は、一部の仕入税額控除が考慮されない方式になります。
簡易課税は、実際の仕入や経費の支払い等による消費税を一切考慮せず、売上に対する消費税額のみを使って消費税額を計算する簡便的な方法です。
具体的な計算方法は以下のようになります。
計算式から分かるように実際に支払った消費税額は一切考慮されません。
また、みなし仕入率は、業種ごとに決まった割合を適用します。
業種ごとのみなし仕入率を以下に記載していますので、参考にして下さい。
事業区分 該当する事業 みなし仕入れ率
第一種事業 卸売業 90%
第二種事業 小売業 80%
第三種事業 製造業等 70%
第四種事業 その他の事業 60%
第五種事業 サービス業等 50%
第六種事業 不動産業 40%
参考:国税庁HP
まず、簡易課税を選択するためには以下の要件を満たす必要があります。
・基準期間(前々事業年度)の課税売上高が5000万円以下
・前期末までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出
上記の要件を満たせば、簡易課税を適用することができますが、簡易課税を適用する際には注意点があります。それは、簡易課税を選択した場合、2年間は簡易課税を適用する必要があるということです。原則課税の方が有利な場合であっても、2年間は変更できませんので、簡易課税の選択は慎重に行う必要があります。
結論から申しますと、どちらがお得になるかという明確な基準はありません。
具体例を出してシミュレーションしていきましょう。以下の自営業者を例にします。
基本データ
自営業者(小売業)売上高1,080万円(税込)仕入540万円(税込)
本則課税の場合
簡易課税の場合
小売業を営んでいるため、みなし仕入率は80%になります。
そのため、仕入れに係る消費税は80万円 × 80% = 64万円とみなします。
したがって、今回の例では簡易課税が有利になります。
簡易課税を選択した場合、無条件で64万円を仕入れに係る消費税とみなすことができるので、実際に支払った消費税が64万円を超えた場合は、本則課税の方が有利ということになります。ご自身の状況に合わせて確認してみて下さい。
今回の記事では、消費税の本則課税と簡易課税の違いについて解説しました。
消費税の計算は非常に複雑で、わかりにくい部分があります。そういった意味では、簡易課税の方がより簡便的です。
しかし、上述のとおり、簡易課税には適用要件や注意点があり、間違った選択をすると、損をしてしまう可能性もあります。
したがって、繰り返しになりますが、計算方法の選択は慎重に行いましょう。