東芝の会計処理問題で問われた「バイセル取引」という取引ですが、そもそもバイセル取引とは何なのでしょうか。何が問題で、何が大丈夫なのか、また、実際にどういう仕組みなのかについて詳しく見ていきます。「バイセル取引」を会計上、どう捉えるべきなのかについても考えます。
「バイセル(Buy-Sell)取引」とは、例えば、製造メーカーが自社で直接調達した部品を一度買って、それを別の委託先に製造委託し、今度はそれを完成品として買う取引のことです。パソコンやスマートフォンなどの製造ではよく行われる取引となっています。
順番を追って説明していきますと、自社で調達した部品に一度利益をのせて、製造を委託する先に販売します。その後、製造委託先から完成品としてそれを購入します。そして、完成品を購入した段階で、部品代とそれに上乗せした利益、加工費なども含めて製造委託先に払われる仕組みです。
最初から、完成品として購入することなどを条件とした取引が「バイセル」取引です。あくまでも買い戻しや売り戻しを条件とした取引となっています。買戻しや売り戻しを終えた時点で、全ての取引が完了したと言えるものです。
大手の製造メーカーなどが直接部品を大量に仕入れることで安く仕入れて、製造だけをお願いするとしたら部品のコストを下げることができるでしょう。
部品の調達コストを自ら下げて、製造を委託する方法がバイセル取引のメリットです。これ自体、パソコンの製造メーカーなどではよく取られている方法で一般的な方法です。
また、製造メーカーでは、部品を仕入れて、そこに利益をのせて製造委託先に販売しますので、そこで一時的に利益が生じるのも特徴となっている取引です。
一般的に行われるバイセル取引ですが、東芝で問題になったバイセル取引については、そのどこに問題があったのかも考えていきます。会計上の処理について詳しく見ていきます。
東芝の会計処理では、部品の有償支給分を直接収益に上げていたというわけではないようです。まず、製造委託先へ有償支給の部品を多く購入してもらうことで、部品の在庫を多く持っている状況を作り、その分、有償支給の部品代が大きく、製造原価を引き下げることとなっています。そして、それがひいては利益を拡大させる結果となっています。
決算時期に、必要以上に多く部品を製造委託先に販売し、その分製造原価が下がったことになります。これが全て完成品として戻ってきて、購入してしまった場合は問題ないのですが、それが途中の場合、決算時の見せかけの利益となってしまうでしょう。利益の水増しをするために、バイセル取引を悪用したという風に見られるでしょう。
有償支給という形で部品を提供し、完成品を購入するのがバイセル取引です。調達購買部門では、部品を製造委託先に有償支給することになります。その有償支給部品の収益や利益の上乗せが、とても大きくなった場合は、チェックが必要です。部品の調達部門でそれほど大きな利益を生むことはないとチェックしてみることが大切です。
バイセル取引自体は、一般的ですが、決算時に特にどのように処理がなされているのかをチェックすることは重要です。
ただ、東芝の件も財務諸表の虚偽ではないという意見も中にはあります。どこが問題なのかをしっかり把握しておく必要があります。
バイセル取引は、自社で部品を大量に安く仕入れ、委託製造会社に利益をのせて販売することです。一時的に利益が生じることは当然です。そして、それを完成品として全部委託先製造メーカーから買い戻して購入することで、バイセル取引の利益は相殺されます。その仕組みをしっかり把握しておくことが大切です。
それを決算の時期で、部品に上乗せした利益を大きく計上し、製造原価を大幅に下げてしまったら、結果的に収益が上がるでしょう。この方法を取ってしまうと、まさに見せかけの収益を作ってしまうことになります。
利益をかさ増しするために利用されたバイセル取引と言えます。これらを会計上チェックすることが大切なことと言えます。
バイセル取引自体が悪いということではなく、バイセル取引を決算時にどう会計処理するのかということなどが問題です。
これから、ますますこうしたバイセル取引は増えてくるでしょう。部品だけを調達して製造をお願いするということは多くなり、海外での生産などももっと増えてくるでしょう。
その際に、決算時の会計処理については、慎重にする必要があります。利益の先取りをしているとならないように、完成品を全部購入していないのであれば、その分の有償支給材料、交付材料差益を計上する会計処理が必要となってくるでしょう。