KSFとは、Key Success Factorの略で、事業目標を達成するためには何が必要かを定めることを言います。経営戦略を担う人材であるなら理解必須の内容をまとめていきたいと思います。
KSFとは、Key Success Factorの略で、重要成功要因と訳されることが多いです。経営戦略論において、事業目標を達成するためには何が必要かを定めることを言います。企業経営においてはやみくもに動いたとしても成功はなく、成功するためには何が必要で、それを実現することの積み重ねで成功があるとされています。ここではKSFについて具体例をお話するとともに、どのように分析すればよいかを解説します。
まずKSFは唯一無二のものはないという理解をすることが前提となります。例えば、マクドナルドで成功した要素をトヨタ自動車で用いても必ずしも成功するとは限らないように、それぞれの業界別にKSFは異なってきます。
よく例として挙げられるのは生命保険などの保険です。商品としての差別化は確かに大事ですが、実際の商材を販売する力というのは最も重要なファクターつまりKSFとなります。
一方で化粧品や洋服等は販売力も確かに大事ですが、より高く売るというブランド力や広告宣伝がKSFとなったりします。これらを理解していれば、保険会社なのに設備投資をたくさん行うということはしなくなり、反対に優秀な人材の採用や教育に最も力を注ぐはずです。また、化粧品についても有名なモデルを使ったりテレビコマーシャルをたくさんしたりしてブランド力を上げたり認知度を上げたりする戦略がとられるはずです。
まず自社にとってのKSFを定義します。自社のリソースや競争優位性がそのKSFとあまりにもかけ離れていた場合は追いつくための作戦を練るか、場合によっては撤退も考えなければなりません。ですので、KSFを定義するのは自社目線で立つのではなく、あくまで市場の動向や景気などの外部要因から行うことが重要となります。内部要因を当てはめるのは、その後となります。
医薬品会社であればKSFは研究開発となり、新薬を開発したりジェネリックとして最も安価な製造手法を編み出したりの工夫が必要となってきます。あとは、自社が新薬を開発する能力に長けているのであれば、研究開発の中でも新薬の研究開発とより具体的なKSFとなりますし、どちらかというと新薬の開発は苦手だが製造コストを下げる能力がある場合はジェネリックの研究開発をKSFとしたりします。
KSFを使うと企業として突き詰めなければならない課題が浮き彫りになります。しかし、先ほどの例のように「ブランド力の向上が自社の課題」としているだけではどうなったら目標が達成されたのか、従業員はその目標を達成しているのか、といった判断ができません。最初にKGI(Key Goal Indicator)という経営目標達成指数を掲げます。ブランド力を向上させるためには、広告宣伝活動が必要となります。しかし、闇雲に行うことに意味はないので、利益に対する広告宣伝費を20%とすることを決めたとすれば、広告宣伝費を経常利益で割ったものを20%以内とする、といったKGIとなります。
今度は個人目標に置き換える、つまりKPI(Key Performance Indicator)という重要業績評価指数を与えることをします。先ほどの例で言うと、販売員一人当たりの粗利率を60%の目標とするとします。すると、安易に値引きを行うことができないので商品の見せ方やイメージを大事にする戦略をとるようになります。結果としてブランド価値が高まることでその後の販売戦略が立てやすくなります。
実際に、自動車ディーラーでも国産車では値引きをある程度することは当たり前である一方で、外車ディーラーでは値引きは一切行わず、ブランド力を維持しているところもあります。
このようにKSFは業界や自社を分析するにはとても重要なものだと言えます。しかし、一度把握したKSFにしがみついていると思わぬ落とし穴にはまってしまいます。
例えば、携帯電話は当初高価なものであったのですが、できるだけ安く売って最終的に大量生産をすることでコストを回収していました。携帯電話の機能はまだまだそれほどあるわけではなく、どれだけ安く買えるかがとても重要な購買要因となっていました。よって、当時のKSFは大量生産でコストカットできる仕組みを作るための技術革新等を掲げていました。
その後携帯電話の機能はパソコン並みとなってきて定価もどんどん上がってきました。すると、顧客が求めるものは画質が良いとかネットに早く繋がるとか携帯以外の機能がどれだけあるかなど付加価値を求めてくるようになってきます。そんな時代にKSFが大量生産やコストカットをしているうちに顧客は次の機種に移って行ってしまい、元が取れなくなってきます。そこで、付加価値をどれだけ出せるかというのがKSFとして必要となってきます。
しかし、技術革新もひと段落してどんな携帯電話を使っていても一定以上の満足度を得られるようになるとまたより安くて高性能な携帯電話を求めてくるようになってきます。すると、携帯製造会社のKSFはまたもやコストカットにシフトするようになってきます。もしくは、携帯電話の性能を大きく超えるような技術革新をKSFとして、次世代の携帯市場を引っ張っていくリーダーになろうとする会社も出てくるかもしれません。KSFを定めることは重要である一方で、不偏なものと勘違いせず常に自社のKSFを定義し続ける姿勢が大事であると言えます。
KSFはその会社ごとに異なり、絶対こうすべき!というものはありません。そのため、会社を取り巻く外部環境をしっかりと把握し、自社の位置づけを理解して、その時代の流れにそったKSFを定めていく必要があります。また、KSFを用いる場合、それらを達成するためのKGIやKPIといった具体的目標を定めて取り組むことが有効となります。
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