経理や財務の仕事をしていると、仮と名の付く勘定科目がたまに出てきます。仮払金、建設仮勘定、そして仮受金です。それ以外にも企業によっては仮売上や仮仕入等計算上の数字を入れる会社もあります。この仮受金は決算時には残さず明確にする必要があります。仮受金とはなにか、どうやって使うのか、ご紹介します。
仮受金とは、第三者から入金があったもののうち、勘定科目が定まらないものや将来的にその金銭がどのように使われるかが決まっていない科目を言います。また、とりあえずどんな名目で受け取ったのかわからないものを仮受金とする場合もあります。
仮受金が決算でも財務諸表に残ってしまった場合には、流動負債の仮受金として表示されます。ただし、金額的にそれほど大きくなるような科目ではないため、財務諸表全体として重要でない場合には、「その他」の科目に集約されることもあります。
それでは実際に仮受金がどのように仕訳されるか実際の例を見て考えてみましょう。
・通常取引している相手から、不明な預金10,000円入金されたが、販売部門に問い合わせても何のお金かわからなかった
・後に、入金された内容は今後こちらが販売する予定の代金の前金であったことが判明した
仮受金と混同しやすい勘定科目として、前受金があります。前受金は商品代金を商品納入前に受け取った際に発生する科目であるのに対して、仮受金はそもそもなぜ受け取ったのかわからなかったり、将来的にどのような性質のものになるかわからなかったりする金銭を言います。
また、仮払金という勘定科目があります。そもそも仮払金は資産項目であり仮受金は負債項目であるため根本的に違うと言えます。また、仮払金は仮受金と同様に将来どのような勘定科目になるかわからない、という性質がありますが、なぜ支払ったのかがわからないというものではないからです。
例えば、従業員が長期出張するにあたって、個人で経費を立て替えするには大きすぎる場合に、一旦企業が仮払金としていくらか渡しておいて、後日使った分と残金とを報告させて会計処理することがあります。つまり、最終的には旅費交通費になることは決まっているが、金額が確定していないので仮払金になっているという形です。
他にも、預り金と混同されることが多いです。預り金は第三者から金銭を一時的に預かっており、最終的には目的の相手に金銭を渡すことが決まっています。
例えば、従業員給与から天引きされた所得税や社会保険料については、一旦預り金勘定で計上しておいて、国に納める際に預り金勘定を取り崩して出金されます。一方仮受金はそもそも返すかどうかもわからないですし、預かっているお金かどうかもわからないことが多いのです。
仮受金は基本的に決算書には残らない科目と考えた方が良いです。というのも、どんな科目で処理していいのかわからないから仮受金にしているだけで、決算日から決算書が提出される2か月の間にはその用途が判明していなければおかしいからです。
まず、税務署の観点からすると、その仮受金は売上等の収益科目ではないかを疑います。というのも、先方は売上代金と思って支払っていたにも関わらず、会社が入金の意味を分かっておらず仮受金にしていたとします。
後日調べてみると単なる請求書を発行していなかっただけで、実際には商品を発送していた場合は、売上計上漏れとなってしまいます。売上計上漏れとなると、その分の税金プラス加算税を取られることになってしまうため、税務署としては仮受金が最終的にどうなったかを追跡してきます。
また、銀行の観点からも仮受金はマイナスに映ります。まず、銀行は資産や負債を種類別に評価しますが、仮受金等の仮がつく勘定は決算書全体としての信頼性が薄いということで実質的な査定を下げてきます。
というのも、仮受金が1百万円あったとして、最終的にはどの勘定になるかわからないとします。しかし、結果としてこの仮受金よりも1百万円多い2百万円を会社が負担しなければならない負債があったとすると、負債が1百万円計上漏れと判断されてしまうからです。
このように、税務署目線でも銀行目線でも仮受金を計上している会社の印象はとても悪いものとなってきます。
今までは外部の目線から仮受金を用いることのデメリットを話しました。社内としても仮受金科目が横行するのは良くありません。まず、仮受金勘定に一旦計上した場合、再度別の科目に振り替える作業が必要となります。
つまり少なくとも2回は伝票を起こす必要があり二度手間と言えるでしょう。また、仮受金勘定にした後に別勘定に振り替えるのは経理で行うことが多いですが、その間の仕訳を追うのには労力が必要であるため、不正や間違いが起こりやすくなります。これらの観点から、なるべく仮受金勘定は使わずに都度勘定科目や金額を確定する必要があります。
仮受金は不明な入金、使用用途のわからない金銭を処理する際に用いられます。とりあえず仕訳を行うためには便利な科目ですが、決算時に科目残高が残っていると、税務署や銀行決算書を見てマイナスなイメージを持ってしまうので、なるべくその都度使途を明確にするのがよいでしょう。
仮受金の他に「仮払金」という勘定科目も存在します。これらを仮勘定と呼び、どちらも決算時には残高を残さないようにする必要があります。
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