税理士資格を取得するなら、避けて通れないのは簿記論と財務諸表論の必須2科目の合格です。必須科目な上に、とても難関な2科目の中で、今回は財務諸表論について、出題形式と過去の合格率、そして効率的な勉強方法などを徹底検証していきます。
まず、財務諸表とは、帳簿に記録している経営状況、財産状況を外部へ報告するために作成する書類です。その財務諸表の作り方を理論的に学び、もう一つの税理士試験必須科目「簿記論」で学ぶ「会計」について具体的な処理方法を理論的に説明しているのが財務諸表論ということになります。そのため、必須科目2科目は連動して勉強すると両科目の理解度が上がります。
財務諸表論には、理論問題と計算問題があります。
まず理論問題ですが、とにかく勉強しなければいけない範囲が広い、そしてやたら会計用語が出てきます。
これは単なる丸暗記で対策をしても、きちんと内容を理解していないと試験合格は難しいでしょう。もし運よく合格しても、いざ実務となると丸覚えしたものって忘れやすいです。
また、仕事の時にどういう理論だっけ?となってテキストを引っ張り出すことになりかねないし、何処に書いてあった?ということすら忘れてしまう、本当に合格している?!という不必要な疑惑まで招いてしまうかもしれません。
財務諸表論に合格するには、単なる丸暗記では無理です。ではどうすればいいのでしょうか。まず、テキストをじっくり読み込むことです。理論にはキーワードが隠されています、そのキーワードを理解して、ピンポイントで覚えてほしいのです。
そして、財務諸表論は他の科目と比べても範囲が広く、だからこそ、最初から最後まですべての項目について目を通す必要があります。最初はとにかくコツコツと読み込むのです。
範囲が広いので、本当に理解できるのか?試験なんて大丈夫なの?と不安になるかもしれません。その不安を払しょくするには、テキストの読み込みしかありません。税理士試験を受けるすべての人がこの不安を感じています。その中には合格する人もいます。自分一人が不安なわけではありません。とにかくキーワードを頭に入れていくことです。そしてそのキーワードをつなぎ合わせて作文する。につきます。
例えば、「偶発債務」について説明すると、まずキーワードは、
・債務
・現在は発生していない
・将来負担する可能性
・リスク管理の必要がある
この4つくらいは覚えておく必要があります。
これら4つのキーワードをつないで作文してみると下記のようになります。
偶発債務とは、現在は発生していない債務だが、将来負担する可能性が高い債務である。
偶発債務は潜在的なリスクなので、いつ起こってもいいようにリスク管理する必要がある。
キーワードさえ覚えておき、わかりやすく作文すれば模範解答になります。
この偶発債務は、昨今中小企業経営者の間で話題の「M&A」においてもよくつかわれる用語です。会計用語についても使用頻度が高いと思われるものは優先的に理解して、キーワードは覚えておくようにしてください。
次に計算問題です。
財務諸表論での計算問題は、基本的な内容の出題が多く、集計方法を自分なりに確立して、正確にミスを極力少なくすれば大丈夫です。高度な知識よりも正確さを求められます。集計で回答用紙がちょっと見栄えが悪くなっても大丈夫です。計算式と答えがあっていればいいのです。
財務諸表論はかなり問題量がありますから、一問でも多く解いて、一点でも多く稼ぐという気持ちで取り組んでください。
先に理論問題の勉強の仕方からご説明したのですが、まず計算問題を勉強して、具体的な事例を学んで、「この処理はこういう理論で計算する」ということを理解します。「なぜ計算するのかを学習して、それに対応できる理論を理解する」ということです。理論を理解するためには、毎日コツコツと少しずつでもいいので繰り返し読み込むことが重要なのです。
・まず計算問題から学習して、この処理はこういう理論で計算するということを理解
・上記のことを理解したうえで、理論についてテキストを暗記ではなく読み込んで理解する
この2点を挙げておきます。
まずお聞きしますが、「貸倒引当金」はいつ計上しますか。
決算整理事項の問題では、この貸倒引当金はよく出てきます。
実務をやっている方なら、お分かりだと思います。まず、貸倒引当金は、会社の債権が返済されないという貸し倒れのリスクのために計上するものです。ですから、決算整理時、最後に債権がどのくらいあるか把握しないことには、貸倒引当金は計上できません。となると計算するタイミングは最後ということです。
税理士試験のほかの選択科目などは、税法ですから、条文を覚える必要があります。しかし、必須科目の財務諸表論は会計理論の試験です。
法でなく、論です。内容を丸暗記ではなく、理解する必要があるのです。
キーワードをまずピックアップして、それは暗記しましょう。
そして理論全体を理解していくのです。
「動態論」、「時価主義」、「割引現在価値」などこれらのキーワードも試験によく出ます。キーワードについては暗記しておきましょう。
【平成24年~平成30年の合格率】
平成30年 13.4%
平成29年 29.6%
平成28年 15.3%
平成27年 15.6%
平成26年 18.4%
平成25年 22.4%
平成24年 20.7%
税理士予備校などでも言われているのですが、受験者数全体の10%以内に入るつもりで学習しておくことが必要です。
簿記論、財務諸表論といった必須科目は、かなり勉強している受験生の割合が高いです。
それでも1割から高くて3割弱の合格率だということを認識して、受験勉強に取り組んでください。