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株主総会とは?開催目的や流れをわかりやすく解説します

HUPRO 編集部
株主総会とは?開催目的や流れをわかりやすく解説します

株主総会は、株主によって構成される、会社の意思決定のための機関です。この記事では、株主総会の目的と役割、開催の手順などの入門ガイドとしてわかりやすく解説します。関連記事も多いのでぜひ合わせてチェックしてみてくださいね。

株主総会とは

株主総会は、企業の株主によって構成され、会社の意思決定を行う期間です。

株主総会というと、会社のあらゆる事項を決定できるように思うかもしれません。しかし、厳密にいうと取締役会が設置されているかどうかで、株主総会の権限は異なります

会社に関するあらゆる事項を決定できるのは、取締役会のない会社の株主総会です。取締役会が設置されている会社、取締役会の設置が義務付けられている会社は「会社法に規定される事項」および「定款で定めた事項」にかぎり株主総会で決議できると定められています(会社法295条2項)。

取締役会の設置が義務付けられる会社

取締役会の設置が義務付けられるのは、以下の条件を満たす会社です。大会社(資本金5億円以上または負債200億円以上)では、このいずれかが義務とされています。

・公開会社(全株式譲渡制限会社以外の会社)
・監査役会設置会社
・監査等委員会設置会社
・指名委員会等設置会社

株主総会の決議事項

株主総会の主な決議事項は、大きく分けると3つあります。

(1)会社の根本に関わる事項
(2)会社の役員の人事に関する事項
(3)株主の利害に大きく影響を与える事項

これらの内容を取締役会を構成する役員に任せると、利益相反のおそれがあったり、株主の利益に反することが承認されるおそれがあるため、株主総会にかけて決議するように会社法で定められているのです。

株主総会の決議を要する事項については、「会社法に規定される事項」および「定款で定めた事項」があります。しかし会社法に規程される株主総会の決議事項を、定款にて「取締役会で決める」と定めても無効になりますので注意が必要です。

それぞれについて詳しく見ていきましょう。

(1)会社の根本に関わる事項

会社の根本に関わる事項とは、以下のような内容です。

・定款変更
・事業譲渡
・組織変更
・組織再編(合併、会社分割、株式交換、株式移転、令和元年改正後の株式交付)
・解散

定款に記載する内容とは、例えば事業目的・商号・本店所在地・資本金・出資者・発行可能株式総数などです。

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一度定款に記載した事項は、どの事項であっても変更の際は株主総会の決議が必要です。
事業譲渡や組織再編についても、会社の形態を変更するという重大な事項なので、やはり株主総会の議題となります。
経営陣が自らの意思で会社を解散する場合には、株主総会の決議が必要です。

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(2)会社の役員の人事に関する事項

次に、会社の役員の人事に関する事項です。取締役や監査役の選任・解任は株主総会の決議で決定します。その一方で、代表取締役、執行役、各委員会の委員については、取締役会設置会社によっては、取締役会決議によって選定・解職します。


株主総会と取締役会の決議事項の違いについては、以下の記事にて詳しく解説しています。


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(3)株主の権利や利害に大きく影響を与える事項

最後は、株主の権利・利害に大きく影響を与える事項です。以下のようなものがあります。


・株式の併合
・自己株式取得
・剰余金の配当
・役員等の報酬の決定

株式併合とは、既に発行されている株式数を減らすために、複数の株式を1株に統合することです。株主は株を多く所有していればいるほど、多くの議決権を得ることができます。
しかし、株式を併合すると、場合によっては単元株を割り込む「単元未満株」が発生し、株主の議決権行使の割合に影響が生じることが想定されるため、株主総会の特別決議が必要な事項となっています。


なお、逆パターンの株式分割については、分割の割合の限度で、定款変更に本来必要な株主総会の特別決議を経ずに発行可能株式総数の定款規定が変更可能です。
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市場に出回っている自社の株式や第三者が保有している自社の株式を買い付ける「自己株式取得」も同様です。
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剰余金の配当はいわゆる株主配当です。会社法による配当規制がありますので、その範囲内でおこなわなければなりません。また、会社法第361条において、会社経営に携わる役員報酬の総額は、株主総会や定款変更で策定すると定められています。

株主総会の決議要件

株主総会では、決定事項によって、可決できる決議の内容と要件が異なります。
以下の基準を満たさないと、提案事項は成立させられません。

(1)普通決議:出席株主の議決権の過半数の賛成
(2)特別決議:出席株主の議決権の3分の2以上(※)の賛成
(3)特殊決議-a:①頭数 > 株主総会で議決権を行使できる株主の半数以上(※)の賛成 ②議決権 > 株主総会で議決権を行使できる株主の議決権の3分の2以上(※)の賛成
(4)特殊決議-b:①頭数 > 総株主の半数以上(※)の賛成 ②議決権 > 総株主の議決権の4分の3以上(※)の賛成
※定款に別段の定めがある場合を除く

なお、株主総会を開催する際には、出席株主は「定足数」を満たす必要があります。
株主総会の決議事項や必要な株主総会の種類・決議要件については、こちらの記事で詳しく解説しています。あわせてご一読ください。


株主総会の開催の流れ

株主総会には「定時株主総会」と「臨時株主総会」の2つがあります。
定時株主総会は、事業年度ごとに、決算日を基準にして3ヶ月以内に毎年実施しなければいけません。日本の企業に多い3月決算の会社の場合、6月末日が期限となります。5~6月に株主総会のニュースをよく聞くのはそのためです。


臨時株主総会は、必要に応じて開催が決定されますので、定時株主総会とは異なり、開催時期があらかじめ決まっているわけではありません。


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ここでは、株主総会実施に向けて、広報や総務、IR担当者が関連する仕事内容について、流れを追って解説します。

(1)会場の確保

株主総会がどのくらいの規模になるかは、会社の規模や株主の人数によって変わりますが、大手企業になると数百人〜数千人の株主が参加することになります。株主の人数や当日の議題・イベントを踏まえ、必要な設備とキャパシティを備えた会議場を押さえておく


株主総会に参加します。そのため、会場の選定や準備が非常に重要です。


参加予定の株主の人数や当日の議題やコンテンツをもとに、必要なキャパシティや設備のある会場をリストアップしておき、早めに整備する必要があります。場所は特に制限がありませんが、本店所在地もしくは多くの株主が出席しやすい便利の良い会議場やホテルなどが適しています。


ここ数年は、新型コロナの影響でバーチャル株主総会、もしくはリアルとバーチャルを同時に並行するハイブリッド株主総会も開催されるようになりました。オンラインとオフライン実施について、どのように行うかもあらかじめ考えておく必要があります。

(2)株主への召集通知作成・発送

株主総会を開催するにあたって、株主総会の「招集通知」を株主に送る必要があります。
送付期限は「取締役会が設置あるいは非設置」か、そして「書面投票・電子投票が採用ありなし」によって以下のように変わります。

・公開会社→株主総会の開催日時の2週間前
・非公開会社で取締役会を設置&書面投票・電子投票が採用あり→2週間前まで
・非公開会社で取締役会を設置&書面投票・電子投票が採用なし→1週間前まで
・非公開会社で取締役会を設置なし&書面投票・電子投票が採用あり→2週間前まで
・非公開会社で取締役会を設置なし&書面投票・電子投票が採用なし→1週間前まで



招集通知は、文書を作成して書面を郵送するかメールで送付しますが、電子通知には、事前に承諾を得ておかなくてはなりません。


なお、株主が全員同意しているのであれば、招集通知そのものを用意する必要がなく、すぐにその場で開催することもできます。


招集通知には、株主総会が開催される日時や場所、議題、提出議案を記載し、必要書類を同封します。定時株主総会であれば、監査済みの計算書類(決算書)と事業報告も必要です。
経理や総務・財務、経営層など、株主総会にかかわる部署と連携し、必要な書類を速やかに準備して滞りなく送付しましょう。

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(3)株主総会の準備

株主総会本番に向けて、資料やオペレーションの準備を行います。


近年は投資家から厳しい質問や要求が出ることも予想されます。
株主からの生じうる質問を想定したうえで、適切な回答ができるように「想定問答集」を作っておきましょう。


当日のオペレーションがスムーズにできるように、あらかじめ会場内の案内や受付など、株主の方を案内するための人員配置、司会進行役を決定してリハーサルを行います。
会場の設営準備や進行に必要な人数を確認したうえで、関連部署に協力を仰ぎましょう。
会場に到着してから帰路につくまでの、株主・参加者の導線も確認しておく必要があります。

(4)株主総会当日の運営

次に、株主総会当日について説明します。

1, 議長の就任
 議長は主に会社の社長が就任します。
2, 開会宣言
3, 監査報告
4, 事業内容の報告
 事業内容について取締役が報告を行い、株主に対して事業の現状を伝える義務があります。ここでは事業に対して良い面・悪い面両方の視点を含め伝えられます。
5, 議案上程
 議案上程とは、本会議において話すべき内容を取り扱うことを言います。主に会社から議案上程を行いますが、もちろん株主からも行うことができます。
6, 審議方法の確定と審議
 ここでは、議案についてよく検討・可否しお互いに質疑応答した後、決議を行います。ここでは全ての報告事項についてまとめて採択を行う一括審議方法が一般的ですが、その他執り行われる方法として、一つずつ審議・質疑応答を行い採択する個別審議方法があります。
7, 質疑応答
 議案はなく、ここでは会社全体に対して株主から質問を行います。
「想定問答集」を作成しておけば、スムーズに進みやすいでしょう
8, 議事録の作成と保存
 会社法の規定より株主総会では議事録を作成・保存しなければなりません。総会議事録と呼び、株主総会の日から10年間本店に、そのコピーを5年間支店に保存する義務があり、株主や債権者の要望があれば閲覧することが可能です。
9, 閉会宣言

株主総会の開催の原則

株主総会では、一定の例外を除き、書面で行うことはできず、株主を招集して開催する必要があります。株主総会の招集通知に委任状を添付して発送するので、株主は委任状を提出することで出席に代えることが可能です。


しかし、新会社法では、この原則を緩め、書面決議ができる場合を定めました。
株主の全員が書面又は電磁的記録(電子メール等)により同意の意思表示をしたときは、株主総会の決議があったものとみなすことができるようにしたものです。


なお、書面決議を行った場合においても、株主総会議事録の作成は必要となります。
詳しくは以下の記事をご確認ください。

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まとめ

株主総会は、議決権を有する株主によって構成される意思決定機関です。常にある機関ではなく、決算期ごとに招集される定時総会と、随時に招集される臨時総会とがあります。株主総会の決議事項は、会社にとって重要なことばかりです。投資などで株式の所有者は増えていますが、株式を保有するということは、少なからずその会社の経営に影響を与えることになります。参加者・開催者どちらにしても知識を身に着けておくことが、これからのビジネスパーソンにとっては必要です。

この記事を書いたライター

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