当座比率を用いることで、企業の財務状況を把握することができます。ここでは、そもそも当座比率とは何なのかという基本的なことから、当座比率の計算式について当座比率の安全とされる値の目安や流動比率との違いなどを解説していきます。
当座比率とは、企業の支払い能力を判断するために用いる経営指標のひとつです。当座比率は、当座資産というものと流動負債というものを使って計算式により割り出します。そして、この値により、1年以内に対応しなければいけない支払いに問題なく対応できるかどうかが分かります。
つまり、当座比率は、企業がどれだけ現金やすぐに現金に交換できる資産を保有しているのかを示す指数なのです。当座比率が100%を超えているようであれば、充分に支払い能力があり、債務不払いまたは資金ショートなどの危険性は低いといえます。
当座比率は、厳しい視点によって、企業の支払い能力を判断するものです。企業というものは、たとえ黒字が続いていたとしても、手元の資産がすべてなくなれば倒産してしまいます。
この状況は黒字倒産と呼ばれていますが、当座比率が100%以上を示していれば、たとえ明日すべての負債の支払期日が来ても、倒産になることはありません。
実際には、1日のうちにすべての負債の支払期日が来るなどということは可能性として低いですが、当座比率とは、このような最悪の状況も考慮して安全性を判断するための指標なのです。
ただ、当座比率は業種によってその値が異なるため、異業種で比較をすることは、あまり意味がないことだといえます。同じ業種同士、または同一企業内で過去実績などを比較する方が、より正確に判断できるでしょう。
では、当座比率の求め方について解説します。当座比率は、以下の計算式で求めることができます。
当座比率(%)=当座資産÷流動負債×100
当座資産と流動負債については、後ほど解説します。
例えば、
当座資産が120万円
流動負債が100万円
のような場合は
当座比率の計算は「120万円÷100万円×100=120%」と求めることができます。この状況の場合、1年以内に支払いの期限が来る流動負債があったとしても、120%の当座資金が手元にはあるので、充分に支払い能力があると分かります。
仮に、当座資産が100万円あり、流動負債が120万円であったとするならば、当座比率は同じ計算式により「100万円÷120万円×100=83.33%」であると分かります。
そして、これでは1年以内に支払いの期限が来る流動負債に対応することができないことも判断できるのです。このように、当座比率は計算式を用いて割り出します。
また、流動資産を流動負債で割った流動比率という指標もあります。流動比率についてはこちらのコラムを参考にしてみてください。
次に、当座資産と流動負債とは何なのかについてお話しましょう。
【当座資産】とは、現金、売掛金、受取手形、売却が可能である有価証券などの、現金や現金に換金しやすい資産のことをいいます。
【流動負債】とは、1年以内に支払または返済をする必要のある負債のことです。
流動負債に含まれるものとしては、支払手形(代金を後で支払うという約束を証明するために支払先に渡す手形)、短期借入金(銀行から借りているお金で、1年以内に返済する必要があるもの)、買掛金(購入はしたものの、まだ代金の支払いができていないもの)などがあります。
つまり、当座比率とは、資産の中でもすぐに現金に換えられるものと、1年以内に支払いや返済をしないといけない負債のバランスを表している指標なのです。
当座比率は業界によっても異なるので、あくまでも目安にはなりますが、以下のように判断することができます。
当座水準が69%以下にもなれば、資金繰りが難しくなってきているはずです。また、企業の印象も悪くなり、銀行からの融資も受けにくくなるなどの影響が出ることが予想されます。
当座比率が低いことは、それだけ財政状況が厳しいことを表しています。そのため、少しでもこの比率を正常値にまで上げることが重要です。そこで、当座比率を上げるためにできることを3つご紹介しましょう。
どれも、経営者が危機を感じ、意識を変えていくことで改善できることです。できることから見直していきましょう。
当座比率の目安は業界によっても異なるのですが、100%以上であれば、緊急の支払いにも対応ができるため、安全であるといわれています。
一方で、69%を下回るようであれば、これは財政状況が悪化していると言わざるを得ません。そのような場合はご紹介したような改善方法で、今すぐ企業方針を見直し、当座比率を高めていけるように努力する必要があります。