キャッシュレスが進んできているこの時代、一昔前の現金で全てを決済していた頃よりも様々なツールや商品が登場しています。しかし、クレジットカードに代表されるように、キャッシュレスに付きまとうのは、「信用」というワードです。信用がなければカードも使えないし、借金をすることもできません。
これらの信用というのは一般人のみに当てはまるわけではなく、証券会社もその対象となります。いくら証券会社が良い商品と思って売り出している商品があったとしても、元本割れするリスクがあれば購入をためらうことがあります。そこで、信用補完という仕組みを使って投資家を保護する動きが出てきます。ここでは、その信用補完について現役公認会計士が解説していきたいと思います。
先ほどお話したように、証券会社が発行する証券にもリスクはあります。証券会社が発行する証券というのは、会社の発行する社債や株式に対して投資を募り、投資家に代わって運用をし、利益の一部を還元する方式になっています。しかし、投資先が倒産したり、投資先の株価が下がったりした時などは、その還元する利益が無くなり投資家が不利益を被る時があります。このようなリスクが高い場合、投資家が投資を敬遠してしまう可能性があります。
そこで、元本や利払いを保証することで投資家が安心して投資できる仕組みが必要となります。この仕組みの一つとして信用補完が存在します。信用補完というのは、このような破綻するリスクという失った信用に対して、証券会社もしくは第三者が何らかの補完をすることを言います。信用補完には、内部信用補完と外部信用補完の二種類が存在します。
内部信用補完とは、信用補完のうち商品そのものの仕組みで元本保証などのリスクを低減する仕組みをいいます。例えば、複数の投資家が同一商品に投資したとしても、ある投資家の商品だけ元本の返還を優先する契約をすることが挙げられます。また、超過担保という手法で返済原資を担保する手法があります。これは、投資家への返済原資を当初積み立てていた以上に、収益の一部を留保することで将来の危険に備えることを言います。
内部信用補完はあくまでリスクを低減することに役立ちますが、想像以上に投資先の収益力が低下した場合や、そもそも超過する担保を想定以上に獲得できなかった場合には効果が減少してしまうリスクがあります。
外部信用補完とは、信用補完のうち第三者を利用したり、外部機関を用いたりして投資家を保護する方法です。最もわかりやすいのは、証券会社が投資家への返還原資としてあらかじめ外部の金融機関に預金を蓄える方法があります。これにより、投資自体が失敗したとしても、預金によってその損失が補填されることになります。また、保険や信用状(L/C)を付すことで担保する場合があります。これは、万が一投資先が倒産した場合などに保険や信用状発行の銀行が保証することで投資家を保護する方法です。
外部信用補完は内部信用補完と掛け合わされることでより投資家保護に役立ちます。しかし、外部の保険やL/Cを利用する費用や手数料が発生することで、結果としてその費用は投資家に負担が行くこととなります。
先ほどのように投資リスク低減のために信用補完という制度が用いられることがありますが、中小企業でも用いられることがあります。
中小企業は大企業と比べて信用が少ない為、銀行から借入を行うのに担保を求められることがあります。担保があれば良いですが、起業したての会社や既に不動産を担保に差し出している会社は担保提供ができずに借入が行えないことがあります。そこで、信用保証協会が借入に対して保証を行うことで、銀行が中小企業に貸し付けを行いやすくなります。これも信用補完の一つとして挙げられます。
小規模事業者や創業者等に対しての保証であれば、100%信用保証協会が保証し、それ以外では80%を保証協会が保証し、20%は金融機関が保証することになります。よって、保証協会が保証してくれるといったからといって銀行が必ずしも融資をするとは限らないのです。
この他にも、セーフティネット保証というものがあります。これは、自然災害が起きた時や、構造不況業種に対して、通常の保証とは別で融資を保証するものです。これは、特定の事象が起こった時に特定の会社が倒産することによって、関連する企業が連鎖して倒産することを防ぐ目的の保証となります。
現在、この保証協会が行っている信用補完制度は見直しが図られております。まず、災害などの突発的な事象に対して、より積極的に保証を行なっていくという考え方がとられていきます。また、現在信用保証協会ありきで融資を決定している銀行も多いため、企業も保証協会の方を向いた経営が行われることが多くなっています。そこで、もう少し銀行側の審査に委ねようという動きがあります。さらに、銀行と信用保証協会の連携をより密にして両者の良いところを補完しながら融資を進めていくという動きが今後加速していくと考えられます。