株主総会は、企業の所有者として株主が重要な事項を決定する会議です。毎年決算後に行われるものは定時株主総会と呼ばれ、主に決算の報告等が行われます。これとは別に、それ以外の時期に重要な事項を決める臨時株主総会というものがあります。ここでは、臨時株主総会を開催しなければならない場合や、その際に作成される議事録の作成について現役の公認会計士が解説していきます。
そもそも、定時にしても臨時にしても株主総会とはどのような会になるのでしょうか?これは、会社の株主が会社の基本事項である定款を決めたり、役員の選任をしたり、会社にとって重要な事項を決めたりする最高機関となります。つまり、取締役会よりも上位機関となりますので、取締役会で決められないようなものは株主総会で決めることになります。
この中でも臨時株主総会というのはより重要なことを決議する会となります。例えば、取締役は3名以上いないといけないとしているため、役員が死亡したり何らかの形で退任したりした際には速やかに取締役を補充しなければなりません。このような場合は臨時株主総会が開催されます。また、通常の株式の発行は取締役会で行われるのですが、特定の第三者に有利な金額で株式を発行する場合は、臨時株主総会を開催しなければなりません。これは、通常の価格であれば特に誰も損することはないのですが、有利な発行となると既存の株主に不利益が生じる可能性があるので、慎重な審議が必要となるからです。
臨時株主総会議事録は、定時株主総会議事録の書き方と基本的には同様ですが、要点を解説します。
まず、以下の事項を記載します。
これらの事項を記載することで、臨時株主総会が有効に成立しているかどうかを明らかにしておく必要があります。中でも重要な会社の合併などについては過半数ではなく3分の2以上の特別決議による承認を求められることがあるので、留意が必要となります。
次に、誰が議長となり進行しているかの記載が必要です。基本的には代表取締役が務めることがほとんどですので、その旨を記載します。
また、議案を記載します。例えば株式譲渡承認の件、等議案を簡単に記載し、内容を記載します。この時、あまり長い記載は読みづらい為控えた方が良いですが、肝心な事項の記載を忘れないようにしましょう。例えば、譲渡する株数や合併であればその相手先や条件など、あまりにも長くなるようでしたら別紙参照となりますが、別紙があったとしても要点は議事録に残す必要があります。
臨時株主総会議事録には押印が必要でしょうか?
それは、自社の定款に、株主総会の議事録に誰が押印するか記載されているかどうかによって異なります。
まず、議長及び出席した取締役の押印が必要とされている場合は、その通りそれぞれの押印が必要となります。代表取締役は会社の代表印を、出席取締役は認印を押印することとなります。
一方で、特段誰かの押印について触れていない場合は議長及び出席取締役の押印は不要となります。しかし、押印のない議事録を残すことは何らかのトラブルを招く原因となるため、会社の代表社印を押しておくことをお勧めします。また、急いで決議を行ったために書面決議となってしまった場合においても代表者印を押しておくことが賢明です。
臨時株主総会議事録は、特に株主が一人しかいない場合などは軽視されがちで、登記に必要な時以外はそれほど意識をして作らないかもしれません。ですが、会社の最高意思決定機関が決定した内容を記す重要な書類なのですぐに捨てていいものではありません。会社法では、基本的に10年間は保存しておかねばならず、保管していなかった場合は最高で100万円の罰金命令が下されます。
この据え置き期間が過ぎてしまったら特に保管義務はなくなるので、処分しても法律的には構いません。しかし、10年経過してから当該企業の株式を相続した親族などと何らかの法的な争いをする可能性があるため、永久に保管しておくことをお勧めします。
昨今のIT化が進んだことによって、株主総会議事録は電子媒体での記録が認められるようになっています。専用のソフトを用いなくてはならないわけではなく、あらかじめ紙で作成された書面をスキャンしても良いですし、電子的な記録を用いたものをそのまま保存しても構いません。これにより、何十年もキャビネットで保管しなくともCD-ROM等に保存しておけます。しかし、CD-ROMは磁器による影響を受けやすい為、バックアップを取ったりする対策が必要となります。
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