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CAATとは?どんな時に有効なの?

公認会計士 大国光大
CAATとは?どんな時に有効なの?

CAATというのは、主に公認会計士が用いる監査ツールです。監査を経験していないとあまりなじみのないツールかもしれません。しかし、上場会社等で内部監査をする際や、経理部員として監査の補助をする場合にも同様に用いられるツールです。今回は、CAATについての説明と、どのような場面での利用が有用かを現役の公認会計士が解説します。

CAATとは?

CAATとは、Computer Assisted Audit Techniquesの略で、コンピューターを用いた監査技法のひとつです。一昔前は監査現場では紙で出てきた帳票に対して、内容を精査することが一般的でした。しかし、IT化が進んできた昨今では、企業のデータを加工せずに入手し、監査人が独自で加工してサンプリングでチェックするということが増えてきました。

CAATが発達する前は、監査人の勘と経験や、ある程度の仮定を置いて項目をチェックして、母集団全体が適正であるかどうかを判断していました。しかし、人間が行うことには限界があり、会社の行った不正や間違いを抽出することが難しくなってきました。

そこで、あらかじめ組まれたプログラムによって、不正と思われる仕訳を抽出したり、母集団全体の特性を判断するためにサンプリングしたりするためのツールが使われるようになりました。これがCAATです。

CAATを利用する局面は?

CAATはまず生データを入手できる局面に限られます。例えば、販売管理システムから全ての販売データを会社から入手して、架空の売上を調査する際や、売上計上のタイミングがおかしくないかを調べる場合に有用です。

CAATを用いずに抽出する場合、例えばエクセルのRAND関数を用いて抽出したり、任意の数を用いて、数行おきに監査したりすることとなります。しかし、CAATで抽出する場合は、どれくらいのリスクを許容できるか、どれくらいの金額の誤差を許容できるかをあらかじめ設定できるため、効率的かつ効果的なサンプル抽出を行うことができます。

これらのサンプル抽出を行うのは、主に内部統制監査と呼ばれる、企業の内部統制が有効かどうかを判断する場合や、相当数の顧客で構成されている売掛金全体の適切性を証明する場合が適しています。

CAATを利用するメリットは?

CAATを利用すると、主に事前に組み込まれたプログラミングに従って、許容リスクを踏まえたうえでサンプリングされます。よって、監査人の主観が混入しないため、サンプルに客観性が担保でき、証拠として強いものとなります。また、サンプリングの為にいちいち独自の抽出方法を考えることがなくなるため、時間の短縮にもつながります。

また、今までの技法では、一部をサンプル抽出して監査を行っていましたが、CAATでは全データのうち、監査すべきデータのみ抽出されるため、この抽出されたデータにエラーがなければ、基本的に全データが有効であったと同一の結論を導くことができます。

これは、1万件のデータがあった時、CAATでは抽出結果が20件で済んだ問題が、同様の結論を出すのに1万件のデータ全てをチェックしなければならない可能性があることを意味しています。

確かに、CAATを導入するには費用がかかりますが、それ以上に時間短縮・質の担保ができるのであればメリットは大きいでしょう。
また、これらは監査人側のメリットとなりますが、CAATを使って監査が適時に行われることによって企業の決算承認が早まった場合は、対外的な発表も早期化ができるため、お互いにとって有用であると言えましょう。

CAATを利用するデメリットは?

CAATは企業から生のデータを入手できた場合には有効ですが、監査の過程では生のデータを入手できないこともあります。例えば、企業のパソコンが古く、いわゆるオフコンと呼ばれるものである場合は、エクセル等に落とすことが困難となります。

また、会社がそもそも紙でしか管理していない資料については、サンプルの抽出もCAATを用いることはできません。また、CAATの意味を理解せずにサンプリング抽出してしまった場合は、想定している意図とは違う結果が出てしまい、結果としてサンプリングの失敗につながる可能性があります。

その他のCAATを用いた管理例

CAATは公認会計士の外部監査のみに有用なだけではありません。
まず、経費精算について、担当者が不正受給をしていないかどうかのチェックにも役立ちます。例えば、交際費や出張旅費についての全データをCAATに取り込み、架空の出張や実際に支払った以上の宿泊費が精算されていないかどうかを検証することもできます。

また、購買部門において、全取引をCAATに取り込み、通常の材料以外の費目が混ざっていないかどうかも検証できます。これによって、例えばPCを使わない部門にも関わらず使用のPCが購入されていないか、当該部門にとって必要以上の消耗品が購入されていないか等が検証できます

さらに、特定の取引先に依存していないか等を検証できます。これは、CAATによりサンプル抽出した結果、主要部品が同一企業ばかりで供給されていた場合、万が一該当する取引が倒産した際に供給がストップしてしまうリスクを事前に把握することができます。

この記事を書いたライター

公認会計士、税理士。監査法人東海会計社代表社員、税理士法人クレサス代表社員。大学時代に公認会計士旧二次試験に合格後大手監査法人に就職し、27歳で独立開業。国際会計と株式公開支援が専門。セミナーや大学で講師を務めたり書籍の出版も行っている。
カテゴリ:コラム・学び
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