経理の資格で、最もプロフェッショナルな資格と言えば、公認会計士を思い浮かべる人は多いでしょう。
しかし、日本で取得できる公認会計士の資格には、日本の公認会計士だけでなく、米国の公認会計士もあります。どちらも同じ公認会計士ですが、試験の難しさや取得した後のキャリアップについて異なります。そこで、日本の公認会計士と米国公認会計士の違いについて、調べてみました。
米国の公認会計士も、日本の公認会計士と同じで、監査業務ができます。しかし、米国公認会計士の試験は、日本の公認会計士と異なり、日本の公認会計士試験に比べて難易度がやさしいと言われています。なぜなら、試験問題は全米で共通ですが、試験に合格しても、実際に公認会計士として登録できるかどうかは、米国の州ごとにある、州政府会計委員会によって判断されるからです。
試験自体は難しくしないで、広く合格者を集め、その中でより優秀な者のみを公認会計士としての登録を州限定で許可することによって、社会的信用を保っているのです。ある州で登録されただけでは、別の州で公認会計士として仕事をすることは認められません。もちろん、日本で、日本の公認会計士として監査をすることもできません。
合格率も、科目によって異なりますが、日本人受験生の合格率は34%位と言われています。(全米州政府会計委員会NASBA公表 2017年受験生)
試験問題にも、客観的な試験が多く、記述問題にも、高度な思考力や文章作成能力は求められていません。また、日本の認会計士の試験は、短答式なら年に2回、論文式なら年に1回だけ、全受験生が一斉に集まって行われます。米国の公認会計士試験は、受験生1人が貸与されたPCに解答を入力する方法なので、受験生が試験を受けたい日を選んで、年に4回まで受験することができます。
もし、公認会計士の資格を取るなら、まず、日本の公認会計士がおすすめだという意見もあります。
1つ目の理由は、試験を受けるなら、年齢が若いほうが有利だからです。日本の公認会計士の試験の年代別合格率は、20代が最高で、年齢が高くなるほど合格率が低くなる傾向にあります。また、日本の公認会計士の資格を取っていれば、米国公認会計士の試験は、英語にアレルギーさえなければ、短期間の勉強で合格する受験生が珍しくないからです。
2つ目の理由は、資格取得後のキャリアの選択肢が、米国公認会計士では限られてしまうからです。日本の公認会計士の専権業務である監査を、米国公認会計士はできません。もっとも、公認会計士の資格を活用して、経営コンサルティングや一般企業での経理・財務の仕事に就くことができます。しかし、こうした仕事には、資格も不要なので競争が厳しく、公認会計士の資格がそのままでは有利になりません。
3つ目の理由は、日本の会計実務には、消費税や事業税、源泉所得税など日本独自の税法の知識が必要なためです。日本で事業を展開する会社なら、外資系企業でも、日本の法人税や消費税を申告し納付する義務があります。このような税務の知識は、米国公認会計士の資格だけでは、身につきません。米国公認会計士の資格は、日本の簿記の知識があり、また、実務経験を積んでからでないと、日本でのキャリアアップには役に立たないのです。
日本で、公認会計士を取得するなら、米国よりも日本の公認会計士がおすすめです。日本の公認会計士の試験のほうが、米国公認会計士試験よりも難しい上に、試験を受ける機会も少なく、若い受験生の合格率が高いからです。
資格取得後も、日本の公認会計士が有利です。日本の公認会計士は、日本の公認会計士でないとできない監査業務ができます。そのため、日本においては日本の公認会計士試験に合格することが有利だと言えます。