販売した商品が返品されるということは、ビジネス上よくあることですが、この場合商品を販売する際に受け取った消費税については会計上どのような処理になるのでしょうか。また、値引きを行った場合や割戻しを行った場合のように、一部返品ともいうべき場合にはどうなるのか、消費税の処理について解説します。
売上戻り(うりあげもどり)とは、販売した商品や製品に品違い・品質不良などがあったため、後日、商品が返却された場合の返品額を処理する勘定科目のことをいい、売上から控除される返品の額を帳簿上で明らかにするために用いられるものです。
こうした売上戻りは売上高の控除項目となるため損益計算書上では売上高の控除科目として売上高から控除して表示します。
では、消費税についてはどのような処理になるのでしょうか?
国税庁によると、商品販売をした事業者がその取引を行った後に、売上値引きをしたり、売上割戻金や販売奨励金を支払ったり、売り上げた商品について返品を受けたこと等により売掛金の減額等を行う場合には、商品を販売した事業者は、これらの金額に対応する消費税額について調整する必要があるとしています。
そして、売上に係る対価の返還を行った場合には、課税標準額に対する消費税額から売上に係る対価の返還等に係る消費税額を控除します。
したがって、返還や売上の減額を行った部分については減額を行った分の消費税額を控除することができるのです。
では、控除の対象となる売上に係る対価の返還を行った場合とは具体的にどのような取引のことを言うのでしょうか。対象になる主な取引は以下のものです。
割戻し、いわゆるリベートは直接の販売先だけでなく、間接的な取引先に支払ったもの(飛越リベート)についても売上に係る対価の返還に該当し、控除の対象になります。
その他には、適用されるのは限られた事業者となるでしょうが、
といった取引も売上に係る対価の返還に該当します。
他方で、以下のものについてはもともと課税取引ではないため、販売時に消費税を納税していない取引に当たることから控除の対象にはなりません。
対象の取引であるか否かは、消費税額の計算に関わってきますので、間違えないように確認しておきましょう。
消費税率が仮に販売時期と返品された時期で消費税率が異なっている場合にはどちらの消費税率が適用されるのでしょうか?
まず、消費税額の控除が行われる時期については返品等をした日の属する課税期間において控除されることになっています。
したがって、前年度に販売した商品について、次の事業年度に返品が行われた場合には次の事業年度において返品相当額の消費税額が控除されることになります。販売を行った年度ではありませんので、注意が必要です。
次に適用される消費税率ですが、例えば消費税率が8%の時に販売した商品について、消費税率が10%になった場合に返品された場合を例にします。この場合、売上に係る対価の返還の控除は、売上発生時の8%の税率が適用されます。対価の返還を行った時点での消費税率ではないので注意しましょう。
売上に係る対価の返還等の金額に係る消費税額は、次のような計算で算出されます。
なお、消費税の増税後である令和元年10月1日以降の売上に係る対価の返還等を行った場合には、以下の式によって算出される金額が控除税額となりますので、注意が必要です。
売上に係る対価の返還の控除の適用を受ける場合、その事実を記載した帳簿を保存する義務があります。保存期間は原則として7年間です。なお、帳簿に記載すべき事項は次のとおりです。