公認会計士の登録には、公認会計士試験に合格することもさることながら、実際に公認会計士として仕事をするためには実務経験も必要です。その理由は後述しますが、経理職希望でも初心者にはなかなか実際の業務を始めから任せることができないのと同じです。では、なぜ実務経験が必要なのかについて、公認会計士に求められているものを探る観点から解説していきます。
難関資格と言われる公認会計士試験に合格すれば、勉強で得られる知識は兼ね備えていると言えます。正直、教科書通りの知識であればベテラン勢よりも直近で試験に合格した人の方が良く知っているかもしれません。それくらい、試験に合格すれば公認会計士に必要な知識は問題なく持っていることになります。
しかし、公認会計士は教科書に掲載されている知識だけを知っていたのでは応用がききません。実務で多くの経験をしているからこそ解決できる問題もあります。一人で公認会計士としてすべての業務を行うには、やはりある程度の実務経験を積まなければなりません。実際の業務でわからないところがあっても、それは公認会計士の試験勉強には無かったから、というのは理由にならないのです。
実務経験は、一定期間をかけて実際に行なってみないと身に付けることは出来ません。何か発生するたびに先輩に聞いていたのでは、クライアントから不信感さえ抱かれかねません。一人の公認会計士に抱いた不信感が、他の公認会計士に向けられても大変です。そこで本当の実力を身に付けるために実務経験を積む必要性があります。
実務経験ですから、実際に現場での補助を経験することになります。会計や財務の監査、コンサルタント業務や税理士資格を所持している事務所であれば、税務についても経験を積む必要があります。このどれもが「実際の現場で体験する」ということであり模擬体験やロールプレイングなど勉強用に用意されたものではありません。それだけ実力がある公認会計士になるためには実務経験が必須なのです。
この実務経験は、公認会計士試験を受験する前でも試験合格後でもどちらでも構いません。しっかりと勉強をして足元を固めたい人であれば、まずは試験に合格し落ち着いて実務経験を積む、という方法も一つです。またそうではなく、実践に触れ実務経験を積みながら勉強もするというのも一つです。自分に合った方法を、ブレることなくやり通すことが大切です。
ではこの実務経験、どのくらいの期間が必要なのでしょうか。それは監査法人で2年間勤務をするのが一般的です。多くの経験者に囲まれながら話を聞き、自分の体験に活かすことができるというメリットがあります。もちろん誰でも公認会計士を目指していれば監査法人に就職できるというわけではありません。そういった人は企業の経理部門で公認会計士の知識を活用した仕事を2年間行うことが必要です。
いずれにしても、「2年間」という実務経験期間が必須となっています。どのような職業でも同じですが、まる2年間はその業務に従事しないと職の本質を知ることができません。その観点からみても「2年間」は決して長くはないのです。むしろ先輩たちに何でも聞けるのはこの「2年間だけ」と思っておくほうが自分のためになります。
実際に公認会計士として活躍するには、実務経験を2年間積んだことを証明する証明書を発行してもらい、無事公認会計士として登録できる運びとなります。
実務経験も必要ですが、公認会計士試験に合格した者を対象とした技能研修が開催されます。これも受講する必要がります。具体的には週に1回もしくは2回の講義を受講します。これを実務補修といい3年間行われます。
公認会計士試験に先に合格していれば、実務経験を積みつつ実務補修を受講するといったスケジュールですすめることも可能です。実務補修にはレポート、ディスカッションなどの考査をうけ合格する必要があります。
これらを無事クリアすれば、晴れて公認会計士として活躍する場で独り立ちができます。
公認会計士として活躍するには、実務経験や実務補修を受講しないと実際の登録ができないということがわかりました。考え方によっては実務経験の2年間で、本来自分で何とかしなければいけないような仕事でも、助けを求めることができます。
この期間にできるだけ多くの経験をすることが、将来の自分にとって有益であることは言うまでもありません。「せっかく難関試験に合格したのに、まだ公認会計士として登録ができない」と考えるのではなく、同業者に負けないクライアントから信頼される公認会計士になるための一つの修行と考えて取り組めば、挫折することなくやり遂げることができます。