「社労士に実務経験は必要?」実は、試験の受験時にも登録時にも必須ではありません。受験資格は学歴などでも満たせ、登録も講習受講で代替可能です。
つまり未経験者でも社労士を目指せます。とはいえ実務経験はキャリア形成で強みになります。本記事では、実務経験の有無でどう変わるのかをわかりやすく解説します。
社会保険労務士(社労士)になるには、
という2つのステップがあります。
それぞれの段階で、実務経験が必要かどうかを整理しておきましょう。
社労士試験の受験に実務経験は不要です。
社労士試験の受験資格は、以下のとおり、「学歴」「実務経験」「国家資格」のいずれかで満たすことができます。
区分 | 内容 | 該当者の例 |
---|---|---|
学歴 | 大学・短大・専門学校などを卒業している(学部・専攻不問) | 大学卒業者、専門学校修了者など |
実務経験 | 労働社会保険諸法令に関する業務に通算3年以上従事している | 総務・人事担当、公務員など |
国家資格 | 厚生労働大臣が認めた国家資格を有している | 行政書士、税理士、司法書士など |
つまり、学歴や資格の要件を満たしている人は、実務経験がなくても受験可能です。
試験に合格しても、登録を行わなければ社労士として業務はできません。
では、登録の際に実務経験は必要になるでしょうか?
登録には以下のいずれかの要件を満たす必要があります。
つまり、登録時も「実務経験が必須」というよりは、「講習受講で代替可能」という柔軟な仕組みになっています。
社労士の実務経験は、単なる事務作業ではなく、労働社会保険諸法令に関する業務に携わった経験のことを指します。
ここでは以下の3つの観点から詳しく解説します。
社労士の実務経験とは、社会保険労務士法施行規則第1条の11に掲げる事務であり、雇用保険や社会保険、労災、年金などの制度に関する手続きや運用に関わる仕事の経験をいいます。
主な業務例は次のとおりです。
これらの業務に日常的に関わっていれば、「実務経験あり」として認められる可能性があります。
では、実務経験でどれくらいの期間が必要かというと2年以上になります。
なお、従事した期間は満たしていても、業務内容が所定の範囲に該当しない場合は、実務経験として認められないため注意が必要です。
最終的な認定は、全国社会保険労務士会連合会(社労士会連合会)が行います。
さらに、詳しい情報を確認したい方は下記を参考にしてください。
出典:全国社会保険労務士会連合会|社労士の登録申請について
社労士登録に必要な「実務経験」は、以下のような職種で該当する可能性があります。
特定の職種や雇用形態に限定されているわけではありません。
また、雇用形態についても、正社員に限らず、パート・アルバイト・派遣社員・契約社員などでも認められるケースがあります。
重要なのは、労働社会保険諸法令に関する業務に実際に従事していたかどうかです。
社労士の実務経験が不足している場合、事務指定講習の受講を経て登録することが可能です。
ここでは、講習の内容や流れについて詳しく解説します。
事務指定講習は、厚生労働大臣が指定する「社労士会連合会」が実施しており、実務経験の代替手段として認められています。
「通信指導課程」と「面接指導課程」の2部構成で、働きながらでも受講できる設計です。
詳細は以下のとおりです。
通信指導課程は教材を使った自学自習形式で、雇用保険や労災給付などの手続き方法を学びます。複数企業の事例をもとに、数十件の課題を提出し、添削指導を受けながら進めます。提出期限を守らないと修了が認められないため、計画的な学習が必要です。
面接指導課程は年金法などを中心に講義形式で学習します。オンデマンド配信によるeラーニング(4か月以内)または、東京都内の研修センターでの映像視聴(1回3時間×4日間)で受講可能です。現在は対面授業は行われていません。
両課程は同じ年度内に修了する必要があるため、受講スケジュールには注意が必要です。
受講料は77,000円(税込)で、教材費や添削指導、eラーニングの運営費などが含まれています。申込み方法としては、例年11月上旬〜下旬にかけて、社労士会連合会の公式サイトからWeb申込み(イベントペイ)で行います。郵送対応はなく、申込み期間を過ぎると翌年まで受講できないため、早めの準備が重要です。
出典:全国社会保険労務士会連合会「事務指定講習」
講習を修了すると、「修了証明書」がダウンロード形式で交付されます。この「修了証明書」を添えて、都道府県社会保険労務士会に登録申請を行います。
約1〜2か月の審査期間を経て登録が認められると、晴れて「社会保険労務士」として活動できます。
社労士試験に合格し、すでに2年以上の実務経験がある場合、登録時には「実務経験証明書」を提出する必要があります。以下の3つの観点を押さえておきましょう。
証明書は勤務先の上司または人事担当者に依頼して作成してもらいます。
勤務期間・担当業務・業務内容が明確に記載されていることが重要です。
虚偽の申請は厳重に取り扱われるため、誠実な内容で提出しましょう。
ここからは、登録要件としての実務経験ではなく、キャリア形成という視点で実務経験の価値を見ていきましょう。
実務経験は、登録要件を満たすだけでなく、社労士としてのキャリアを築く上で大きな強みとなります。
未経験者でも、段階的に実務に触れることでこれらの力を育てていくことが可能です。
未経験者が社労士実務を積むには、主に以下の4パターンが考えられます。
こうした経験を通じて、登録前に実務の基礎を理解しておくことで、登録後もスムーズに業務に適応できます。
社会保険労務士(社労士)を目指すうえで、実務経験は必須ではありません。未経験者でも社労士になる道は十分に開かれています。
とはいえ、実務経験があることで得られるメリットは大きく、転職や独立開業、専門性の深化など、キャリア形成において強力な武器となります。
たとえば、給与計算や社会保険手続きなどの業務は、実務経験として認められるだけでなく、現場での対応力や制度理解にも直結します。
未経験の方でも、社労士事務所での補助業務や企業の人事部門での勤務、実務講座の受講などを通じて、段階的に経験を積むことが可能です。こうした取り組みは、登録後のスムーズな業務遂行にもつながります。
社労士資格取得後の転職には、士業特化エージェント「ヒュープロ」の活用がおすすめです。社労士求人を多数扱っており、非公開求人の提案や専門アドバイザーによる丁寧なサポートで、あなたの可能性を広げてくれます。