
企業ガバナンスの重要性が高まる中、公認内部監査人(CIA)は外資系企業・大手企業を中心に高い評価を受けています。CIAとは、国際的に認められた「内部監査」の資格です。
この記事では、CIA資格の難易度、合格率や勉強時間、他資格との比較を通じて自分に合った勉強方法を見つけるヒントを紹介します。
CIA試験の難易度は比較的高いといわれますが、合格をまったく目指せないわけではありません。
ここでは、CIAの難易度を以下の内容で解説します。
CIA試験の合格率は、世界規模で各パートともに40〜50%前後とされています。
パートごとの詳細は下記のとおりです。(2025年時点)
| パート1【内部監査の基本】 | 合格率44% |
| パート2【個々の内部監査業務】 | 合格率48% |
| パート3【内部監査部門】 | 合格率56% |
出典:Institute of Internal Auditors | Internal audit certification program pass rates
なお、3パートすべての最終的な合格率としては、10〜15%程度とされています。この数字だけを見るとハードルを感じるかもしれません。
ただ、表にある各パートの合格率からすると、資格取得は十分に可能と言えます。各パートはそれぞれ独立しており、1つずつ合格を積み重ねていくことができるため、短期集中型の学習や、仕事と両立しながらの長期的な取り組みも可能です。
一般的な合格者の勉強時間は400時間前後と言われています。
仕事と両立しながらの場合、半年〜1年かけて取り組むケースが多く見られます。学習負荷は一定ありますが、他の難関資格と比べると現実的なボリュームと言えます。
最終的な合格率は10〜15%程度と先述したとおり、CIA試験は決して簡単な難易度ではありません。その背景として、主に3つの要因が挙げられます。
例えば、パート1の問題数125問/試験時間2.5時間でいえば、1問あたり約1分12秒で回答する計算になります。見直しの時間なども想定すると、あまり余裕はありません。限られた時間内で解答するスピードと正確性が求められます。
過去問は公開されていないので、出題傾向の把握が難しく、初学者にとっては対策が立てづらい部分もあります。公式の情報が限られている分、独学では不安を感じる人も少なくありません。
内部監査やリスク管理の実務経験がある人でも、油断すると見落としがちな論点が出題されるため、体系的な学習が欠かせません。
CIAの難易度をよりイメージしやすくするために、ほかの代表的な資格と比べてみましょう。
以下の表は、6つの資格について最終的な合格率や勉強時間などをもとに、難易度を比較したものです。
| 資格 | 合格率 | 勉強時間 | 主な受験資格 | 難易度ランク |
|---|---|---|---|---|
| 簿記2級 | 約30% | 約200〜300時間 | 制限なし | D(易しめ) |
| CISA | 約50% | 約300〜400時間 | 実務経験要件 | C(中堅) |
| CIA | 約10~15% | 約400時間前後 | 大卒以上 ※実務経験で例外あり |
B(中堅) |
| 簿記1級 | 約10% | 約500〜800時間 | 制限なし | A(難関) |
| USCPA | 約20〜30% | 約1,000〜1,500時間 | 大卒+単位要件 | A〜S(難関) |
| 公認会計士 | 約10% | 約3,000時間以上 | 大卒以上 | S(最難関) |
難易度を比較すると、CIAは簿記2級より難しく、簿記1級よりはやや易しいとされることが多いです。
また、CIAやCISAは、公認会計士やUSCPAほどの膨大な勉強時間は必要ありません。
働きながらでも取得を目指せるレベルと言えるでしょう。
なお、CISAはITやセキュリティ分野に特化した資格で、CIAよりやや取り組みやすいと感じる人もいます。特に最近では、DX推進(デジタル変革)やサイバーセキュリティの重要性が増しており、CIAのニーズも高まっています。
CIA試験に合格するためには、効率的な学習戦略が欠かせません。
勉強方法としては「独学」と「スクール」の2つの選択肢があります。
以下では、それぞれのメリットやデメリットを紹介します。
独学はコストを抑えられるのが大きなメリットですが、情報収集やモチベーション維持が課題となることもあります。
たとえば、日本内部監査協会の図書・資料一覧では、CIA試験に対応したテキストが紹介されています。ただ、上記テキストはすでに販売終了しており、増刷の予定もないため、市販のテキストや問題集を使っての学習が必要です。
この情報収集という点において、独学は難しいと言えます。
また、独学の場合、モチベーションを維持することも課題となります。
しかし、計画的に勉強スケジュールを立てることで継続的に学習できるようになります。試験までの学習計画にあたり、例えば下記のように想定してみましょう。
このような場合は、平日は1〜1.5時間、週末に3〜4時間程度の学習を続けるスタイルが現実的です。
さらに、通勤時間や昼休みなどのスキマ時間を活用することで、無理なく継続しやすくなります。
試験は3パートに分かれているため、パートごとに目標を設定することで、モチベーション維持にも効果的です。各パートは、出題項目が細かく分かれているため、学習計画を立てて段階的に進めることが合格への近道になります。
スクールや通信講座を活用すれば、費用がかかるデメリットがありますが、出題傾向の把握がスムーズになり、模擬試験による時間配分の練習などしやすい環境になります。効率的に合格を目指したい方はスクール等の活用が有効です。
CIA(公認内部監査人)資格は、内部監査・リスク管理・ガバナンスといった分野での専門性を証明する国際資格です。取得することで、企業内での信頼性が高まり、キャリアアップや年収向上につながる多くのメリットがあります。
CIA取得者は、内部監査における専門性の高さから、管理職候補として採用されるケースも多く、企業の経営層からの信頼も厚い資格です。特に以下のようなキャリアパスが期待されます。
CIA取得者を優遇する求人も増えており、キャリアの選択肢が広がるのが大きな魅力です。
CIA資格は、以下のような業界で特に高いニーズがあります。
| 業界 | 活用領域 |
|---|---|
| 金融機関(銀行・証券・保険) |
リスク管理 コンプライアンス対応 |
| 製造業・IT・ヘルスケアなどの上場企業 |
グローバル監査体制の整備 内部監査の実務運用 |
| コンサルティングファーム・監査法人 |
クライアント企業への監査支援 改善提案 |
CIA資格を活かすことで、企業の信頼性向上や経営層への働きかけなど、実務の中で課題を見つけて改善へ導く提案型の監査を担うポジションにもつながります。
CIA資格を持つ人の年収は、一般的に以下のような水準になります。
特に外資系企業では、昇進スピードが速く、年収レンジも高めの傾向にあります。
資格取得によって、年収が大きく向上するケースも多く、努力に見合ったリターンが十分に期待できる資格です。
公認内部監査人(CIA:Certified Internal Auditor)は、国際内部監査人協会(IIA)が認定する、内部監査の国際資格です。
世界190以上の国と地域で認知されており、企業のガバナンスやリスク管理、コンプライアンス強化に貢献する専門人材として高く評価されています。
内部監査とは、企業の業務や内部統制が適切に機能しているかを、独立した立場から評価・提言する業務です。
CIA資格を取得することで、グローバル企業でも通用するガバナンスや内部統制に関する専門性を証明することができます。
ESG(Environment:環境、Social:社会、Governance:企業統治)やJ-SOX対応(内部統制報告書)など、企業の持続可能性や透明性が問われる今、CIA資格のニーズはますます高まっています。
なお、CIAの試験内容や、取得までの流れなどを知りたい方は以下の記事でご覧いただけます。
公認内部監査人(CIA)は難易度こそ高めですが、国際的に通用する専門性とキャリアの広がりを得られる資格です。内部監査・リスク管理・ガバナンスといった分野での活躍が期待され、企業の中核を担うポジションへのステップアップにもつながります。
キャリアの可能性を最大限に活かすためには、転職活動において専門的なサポートを受けることも有効です。
たとえば、士業や管理部門に特化した転職支援を行うヒュープロでは、多数の求人情報を取り扱っており、あなたの強みや希望に合わせて最適なキャリアプランを提案します。資格取得をきっかけに、あなたの可能性を広げてみませんか?