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予算策定とは?予算策定をするときのポイントは?

公認会計士 大国光大
予算策定とは?予算策定をするときのポイントは?

ニュースや新聞を見ていると、「○○株式会社、通期の決算は××円の見通し」のような文言を見たことがあると思います。まだ終わっていないことをよく発表できるなと思われるかもしれません。しかし、実際に決算になってみると近い数字となっている会社も多くあります。これは、会社が1年間の予算を組んでいるため、ある程度の見通しが立てられるからです。それでは、予算策定とはどんなことか、また、その予算が現実に近くなるようにするためにはどうしたらよいのか等を現役の公認会計士が解説していきます。

予算策定とは

予算とは、会社決算について、目標値を表したものです。この予算を作ることを、一般的に「予算策定」と呼びます。では、この目標値はどれくらいのスパンで設けたらよいのでしょうか。基本的には、1年間の目標を策定します。これは、会社の決算が通常1年間で行われ、税金の申告などが行われるからです。また、あまりに長すぎると目標に届いたかどうかの検証がむずかしくなりますし、短すぎると常に予算策定をし続けなければならず、煩雑になるからです。

どうやって予算策定をするの?

予算を策定するにあたって、まずは予算管理規程を作成します。これは、どの部署が予算を管理し、どのように予算を策定して、どのような会議体で予算を承認するかなどを記した規程です。上場会社レベルになれば必ずある規程ですが、非上場会社ですと、よほど大きい会社でない限り規程まではないことが多いです。
次に、その予算管理規程に従って、予算を統括する部署の指定が必要となります。とりまとめの組織がいないと、部署では好き勝手予算を策定することになり、結果として会社全体の予算としては意味をなさなくなる可能性があるからです。通常は経営企画部等、対外的に広報を担当する部署が請け負うことが多いです。また、経理部等数値を扱う部署が取りまとめることも多くあります。これは、予算が数値で表される為、数字を扱う部門が請け負うのがスムーズと考えられるからです。
その後、策定された予算について、予算委員会や取締役会等の会議体で正式承認されると、次年度よりその予算が用いられることになります。

予算策定にあたっての留意事項は?

予算策定の流れは先ほどの通りですが、目標値をどのように設定するかによって作りやすさや予算の重要性が異なります。
一般的な会社では、社長が決めた売上、経常利益に沿って、各部門に予算を割り当てて最終的に調整を行うことで予算が策定されます。この方法は、トップダウンで行われるため、予算策定のスピードが速くなるメリットがあります。一方で、現場の声が反映されがたく、背伸びをしても届かない目標どころか、現実味のない予算になる可能性も高いです。よって、全て社長が予算策定している会社は、予算未達になることが多くなります。
そのようなデメリットもあり、各部門から予算を出させて、それを取りまとめる方式で予算策定する会社が最も多いです。これは、各現場の経験から予算が策定されるため、より具体化された数値が作られるため、現実的な予算となりやすいです。一方で、現場は予算未達のリスクを恐れて若干低い目標の予算策定をする傾向にあります。中には、赤字の予算を提出することもあります。このデメリットを解消するためには、部門から報告された予算について、予算管理部門や役員が何度も話し合いをすることで、具体的かつ理想的な予算を策定する必要があります。ただし、このように何度も話し合いの場が設けられる為、社長がトップダウンで策定するよりも時間がかかる可能性があるデメリットもあります。

販売予算策定の仕方は?

経費等、会社から支出されるものの予算策定はしやすい傾向にあります。これは、景気が悪くなろうとも、例えば広告宣伝費を抑える、自動車を買い替えるのを控えるということを決めてしまえば、基本的にはその通りにできるからです。一方で、販売予算は外部要因が多分に含まれる為、予算策定が最も難しい分野となります。
小売業では、決まった得意先がいるわけではないため、前年同期比で何パーセント成長させるかによって販売予算を策定することが多いです。日々の売上を集計している場合は、売上の少なかった曜日にどのような対策、商品販売をすればよいかを考え、具体的な戦略に織り込みます。また、新商品の開発をして、特定の月の売上アップを盛り込みます。
製造業など、得意先がある程度限られている場合は、商品別、顧客別、地域別等でカテゴリーを分けます。その上で、今年も必ず売れるカテゴリーをAとし、売れる可能性があるカテゴリーをB、全くの新規開拓をCとして、Aは想定の100%、Bは想定の50%、Cは想定の15%といったように、目標販売数からそれぞれディスカウントして最終的な予算とします。これにより、どこかのカテゴリーが不調になっても、別のカテゴリーで挽回できるようになるため、結果として予算達成可能性が上がるというわけです。
これ以外にも、GDP等景気に左右される数値や、輸出額・輸入額等の統計的な数値を予算策定に盛り込んで、より高い精度を上げる場合もあります。

この記事を書いたライター

公認会計士、税理士。監査法人東海会計社代表社員、税理士法人クレサス代表社員。大学時代に公認会計士旧二次試験に合格後大手監査法人に就職し、27歳で独立開業。国際会計と株式公開支援が専門。セミナーや大学で講師を務めたり書籍の出版も行っている。
カテゴリ:コラム・学び

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