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貨幣の需要・供給が影響する、「市場利子率」の考え方を現役経理担当者が解説!

HUPRO 編集部
市場利子率の考え方を現役経理担当者が解説!

融資や、社債などの負債を活用した資金調達を行う場合、市場利子率の影響を大きく受けます。借入などの利息は、市場利子率に、借入人固有の貸倒れリスクが上乗せされて決定されるからです。その市場利子率の上下の要因について、現役の経理担当者である筆者が解説いたします。

市場利子率とは

様々な商品やサービスの価値・価格が、市場の需要と供給のバランスの変化に伴って変動するように、お金にも需要と供給によって形成される市場価値があり、その価値を表すのが市場利子率と言えます。

市場利子率の決定要因

各国(ユーロのようなEUという地域単位の場合もある)の発行しているお金の利子率はGDP、中央銀行のコントロールしている貨幣供給量、そして物価水準から強い影響を受けると考えられます。今回は、これらの要因が具体的に市場利子率にどのような影響を与えるのかを見ていきたいと思います。

なお、今回、お金は将来的に利子の受け取りを通じて、更なるお金をもたらすものという仮定のもとで話を進めます。お金は、普通預金や定期預金の場合は預金金利を、貸付や社債の購入を行った場合は利子を、株式や投資信託商品を購入した場合は配当や売却益をもたらしますが、実際には現金を自宅に保管していた場合、所謂タンス預金となり、利子を生むことはありません。ただ、話を単純化するため、全てのお金は市場で運用されており、将来収益をもたらすものとします。

貨幣の需要と市場利子率の関係とは

お金(貨幣)の価値を決める要因は一般的な商品やサービスと大きく変わらず、需要と供給のバランスの影響が大きいです。

貨幣の需要の内容としては、まずは実際に決済手段として利用する分が挙げられます。これは大きくは普段変わりませんが、GDPが増大した場合、財・サービスの消費量や企業などをはじめとして設備投資などの資金が増えることから、決済手段としての貨幣の需要が高まるといえます。

他にも物価水準の上下にも影響されます。物価水準が上がっている場合、即ちインフレ局面の場合、資金の需要は高まり、市場利子率も上がります。逆に、デフレ局面の場合は市場利子率も下がる傾向にあります

もう一つの需要は、お金の生む利回りです。お金を元に国債や社債を購入し、その利回りが高い場合、多くの人はお金を保有し、債券を保有します。特に、銀行などのようにお金を貸付などで運用する機関によって、貸付を増やして市場に出回るお金が増えることになります。

このことからも分かる通り、経済の状況が良くなったり、債券などの利回りが上がると、皆お金を持ちたいという需要が生じ、市場金利も高くなるという関係があることがわかります。

貨幣の供給と市場利子率の関係とは

お金(貨幣)の価値を決定するもう一つの大きな要因として、お金の供給と市場利子率の関係も見てみましょう。

お金の供給は中央銀行が握っており、日本の場合は日本銀行となります。日本銀行は、以下のような方法によって、お金の供給量、即ち市場における流通量(通貨供給量のことで、マネーストックと呼ばれます)をコントロールしています。

①公開市場操作

公開市場操作では、日本銀行は買いオペと売りオペを行います。
買いオペとは日銀が市場から債券や手形を買い、売りオペでは日銀が市場で債券や手形を売ります。買いオペでは、日本銀行が市場の債券を買い取ってお金を市場に供給し、市場の通貨量を増加させるので、お金の供給が増えます。逆に、売りオペでは市場から日本銀行がお金を吸い上げるので、金融市場の通貨量が減少します。結果として個人や企業に出回るお金の量が減ります。

②預金準備率操作

金融不安などで金融機関の資金繰りが悪化した場合に備えて、日本銀行は、銀行などの金融機関に対して、日本銀行の当座預金に預かり資産を一定比率(準備率)以上を預け入れることを義務付けています。この預金準備率を引き上げたり引き下げたりすることによって、金融機関を通じて市場に供給されるお金の量を調整しています。

上記のようなオペレーションを通じて日本銀行はお金の供給量を調整しています。お金の供給量が増えた場合、お金を借りたい個人や企業の立場では、お金を借りやすくなり、それに伴って、市場利子率は下がります。供給量が減った場合、お金を借りる立場に立つとお金を借りにくくなり、結果として利子率が上がるので、市場利子率が上がります

まとめ

いかがでしたでしょうか。市場利子率はまさにマクロ経済の世界で決定されるため、お金の需要と供給をその主な決定要因としながらも、その需要と供給には様々な要因が複雑に絡みあっています。

なかなか普段から国の政策や日本銀行の各種オペレーション、景気動向や物価水準の動向までを幅広く追っていくことは難しいですが、一方で資金調達をする立場からすると、市場利子率が低いタイミングに上手く借入の実行タイミングを合致させれば利息の支払額を長期に渡って抑制させることも出来るようになります。

特に市場利子率に利息の支払額が左右される社債を公募する場合などは、証券会社などの専門機関からのアドバイスも受けながら、最適なタイミングを選んでいきたいですね。

この記事を書いたライター

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