FASは、業務の専門性の高さや高年収が実現できることなどから、近年人気が集まっている職種です。その一方で、「FASに就職や転職をするのはやめとけ」という言葉を聞くこともあると思います。魅力の多い職種なのに、なぜそのように言われるのでしょうか?今回はその理由や実際どんな職種なのかについて、解説します。
FASとは「ファイナンシャル・アドバイザリー・サービス」の略称で、企業の経営や会計・財務、法務に関するサポートをする会社を指します。
主に企業のM&Aに関するサービスを行いますが、必要に応じて事業再生や不正リスクを評価するフォレンジックサービスの業務を行う会社もあります。
特にM&Aは段階ごとに業務が分かれており、PMI・財務デューデリジェンス・買収スキームの検討・戦略立案などが挙げられます。詳しい業務内容などについては以下の記事で詳しく紹介しておりますので、併せてご覧ください。
新卒でも中途でもFASで働くのはやめとけという意見は一定数あるので、求職活動の際に聞く機会があるかも知れません。まずは、そのような意見が出てくる理由を解説します。
まずFASという職種に最もつきまとうイメージが激務であるということでしょう。特に働き方改革が進んできている昨今において激務のイメージは、より一層際立ってしまっているようです。実際どのような働き方なのかについては後述します。
FASのメイン業務の一つとして、M&A業務が挙げられますが、M&A業務は専門性や難易度が高いため、その業務の経験者の採用がほとんどであるというイメージが強く持たれています。そのため未経験から内定を勝ち取るのはかなり難易度が高く、入社できたとしても未経験からでは活躍しづらい職種であると認識している人もいらっしゃいます。こちらについても、その実情は後述します。
先ほどご紹介したM&A業務は、クライアント企業の経営にとって大きな決断であるM&Aを成功に導く業務ですので、それを請け負うFASの役割はとても重く、責任やプレッシャーが大きいのは事実でしょう。もともと業務経験がある方にとってはそこに対するギャップはないですが、未経験の場合は耐えられないと考える方もいらっしゃるようです。
「FASはやめとけ」と言われる理由となるイメージについて解説しましたが、それらのイメージは実情と一致しているのでしょうか?
激務について明確な定義は無いので、この質問に関して明確な答えを出せるわけではありません。ただしその指標の一つとしてよく使われる残業時間を確認すると、月平均で40時間程度、M&A案件の進捗状況次第では80~90時間になる月もあります。日本の労働者の月平均残業時間は13.8時間でしたので、それに比べるとかなり激務であるといえます。ただ、休日が削られるほどの業務が課されているわけではないので、絶対に働くべきではないというほどのハードワークではないとも考えらえます。M&A業務が激務なのかについてより詳しく知りたい方は、以下の記事もご参考ください。
イメージと異なり、FAS業界の未経験者の採用については積極的に行われているのが実情です。
それでいながら未経験者の採用枠がないイメージがあるのは、
以前は実際に経験者採用がほとんどだったことが理由と考えられます。イメージの通り専門性や難易度が高いことにより、経験者採用を主としていたFAS業界ですが、業界の成長が著しい影響でより多くの人材が必要になり、未経験者の採用も積極的に行うようになりました。FASも含めたM&A業界への未経験からの転職事情については以下の記事に詳しく解説しております。
ということでFASはある程度ハードワークではありつつも、未経験からでも働ける職種ということになります。また、ただハードワークであるだけではなく、働くメリットも多い職種なので、仕事内容やそのメリットに魅力を感じる方はチャレンジしてみるのがオススメです!次の章で、FASで働くメリットも解説しますので、参考にしてみてください!
FASで働くメリットとして挙げられるのは主に次の3点です。
それぞれ見ていきましょう。
FAS業界は一般的には年収が高水準です。その理由は、メインとなるM&A業務が無形商材のため費用が少なくて済むのと併せて、1件単位の売上金額が高いことにあります。最低でも500万円程度の年収は確保できる可能性が高いので、年収をアップさせたい転職希望者にとってはかなり魅力的に映るとは思いますが、その分それなりのポテンシャルやスキルが必要になってきます。
また、インセンティブが組み込まれている企業がほとんどなので、うまく売り上げを上げていければ、基本給の何倍も稼ぐことも可能になります。
M&A業界は成果主義、つまり成果を上げれば上げるほど給料が上がるシステムを取り入れている企業が多いです。そのため、結果を出すだけ評価される環境でバリバリ働きたいという方からも人気を集めています。
M&A業務には多岐にわたる業務があり、M&Aの相手を見つけるところから完了させるまでの過程で多くの知識を身に着けることができます。企業の管理部と深く関わって業務を行うため、M&Aの知識だけでなく、財務や法務といった管理部門の知識も必要です。結果的に、将来的にも汎用性の高いスキルや経験を得ることができるのは、大きなメリットになります。
FAS業界の特徴については分かってきたかと思いますので、ここではどのような人に向いている職種なのかについて紹介していきます。
FAS業界は固定給に加えてインセンティブを導入している企業が多く、所属年数や年齢にかかわらず、成果を上げた人が稼げる成果主義 であることが一般的です。年収アップをモチベーションに成果をどんどん上げていきたいという人は、業界にマッチしている判断されやすいです。
特にM&Aでは、短期的な成約はほどんどなく、初回訪問から成約まで平均して約8か月程度かかる長期的なビジネスになります。
また、1案件当たりに動く金額は数億円~数十億円とかなり大きな金額になるため、若手のうちから一人の裁量権が大きく、億単位の案件に携わることができます。それだけに達成感も非常に大きい仕事です。このような仕事をやってみたいと考えている方もマッチしていると言えるでしょう。
FASでの経験を積むことにより、財務やM&Aに関わる専門的かつ幅広いスキルを習得することができます。このスキルはFAS以外でも広く活かせるため、以下のような転職先で需要が高いです。
そのため、FASで働くのはこのような職場で働きたいという方のキャリアステップにもなり得るのです。
FASの仕事はある程度ハードワークではあるものの、働くメリットも多いことがお分かりいただけたかと思いますが、FASで働く全ての人が「やめとけ」ばよかったと思っていないわけではありません。
ここでは、そんなFASに転職して後悔した人の主な理由を見ていきます。
FASへの転職の後悔で一番多いのが、希望する業務・案件ができないという理由です。
FASへの転職を目指す人の中には、希望業務が固まっている人も少なくありません。
しかし、M&Aアドバイザリーや不正調査、トランザクションなど、FASの業務は多岐にわたるため、希望通りの部署に配属されない可能性もあります。
その結果、自分の希望していたキャリア上は意味のない業務に従事してしまい、無駄な時間を過ごしたと感じることも少なくありません。
またFASへの転職で後悔としてよく挙げられるのが、業務内容が単調に感じられることです。
FASは専門性を究める働き方に適しており、入社してから同じ業務をずっと担当することも珍しくありません。また細かい財務分析やデータ処理の繰り返しなどを伴う作業も多いです。
そのため、様々な業務を経験できると思っていた方や、クリエイティブな仕事を期待していた方は、途中で嫌気がさすこともあるかもしれません。
英語力を発揮するためにFASに転職したものの、クロスボーダー案件にアサインされずに後悔するというケースも少なくありません。
多岐にわたるFASの業務の中で、クロスボーダー案件にアサインされるのは財務デューデリジェンスなどの一部の業務のみです。そのため、それ以外の英語の活かしづらい業務の担当になった場合は、後悔の一員になってしまうようです。
他にも「スキルが偏ってしまう」、「ローテーション制度で専門性が身につかなった」などの理由で後悔する方が、一定いらっしゃるようです。
FASへの転職における後悔については、以下の記事で詳しく解説しておりますので、併せてご覧ください。
ご紹介した「FASへの転職で後悔した理由」について、そのいずれもが仕事内容やそのギャップによるものだということがお分かりいただけるのではないでしょうか?
逆に、「やめとけ」と言われるような「激務」・「採用枠の狭さ」・「責任やプレッシャー」で後悔しているという人は、実際そこまでいないということです。
そんな中で仕事内容による後悔をしない職場に転職するためには、FASの仕事をよく理解してギャップがないようにしておくこと、そして自身のやりたいことができる職場を選んで応募することが大切です。
ただ、FAS業界は人気が高いため、決して応募した企業から内定を得やすい業界であるとは言えません。行きたい職場から内定を確実にもらえるよう、次の章でご紹介する転職成功のポイントを押さえておきましょう。
経験者以外にも採用対象を拡げているとはいえ、FAS業界はそのメリットに惹かれる方が多い関係で、人気が非常に高い業界となっています。
ですので、実務経験なしからの就職・転職を成功させるためにはいくつかのポイントがあります。
なぜFAS業界を希望しているのか、その中でもなぜその企業に応募したいのか、という志望動機は選考における非常に重要な合否の判断材料になります。オススメの志望動機の書き方については以下の記事で詳しく解説していますので、書き方や面接での伝え方に悩まれている方は是非ご覧ください。
FASの業務に直接かかわっていなくてもファイナンス関連の仕事をしていた経験がある人は転職活動で有利です。具体的には銀行や証券会社などの金融機関、会計事務所、企業の財務職などが当てはまります。特に金融機関での法人営業をしたことがある人については市場価値が高くなります。また、ファイナンス領域ではなくてもメーカーや商社、保険やコンサルティングといった業種での営業経験がある方も採用されることがあります。これらの経験がある方は転職活動においてアピールするようにしましょう。
また、M&A業務に必須の資格はありませんが、公認会計士や税理士など、活かせる資格は多く存在します。以下の記事でそれらの資格について解説しておりますので、ぜひご参照いただき、もし持っている場合はアピールしましょう。
就職・転職活動にあたって、自分で応募する求人を探したり面接の日程調整をするのは骨が折れるものです。そこで活用すべきなのが人材エージェントです。希望の条件やご自身の経歴などを伝えることで効率的に求人を提供され、日程調整もエージェントが実施してくれます。内定を複数社もらった際に断りをいれてくれるなど、心理的負担のある対応もする必要がありません。そういったサービスを無料で受けられるエージェントが多いのも特徴です。
今回はFASへの就職や転職をやめとけと言われている理由や、FASのリアルについて解説しました。向き不向きはあるものの、ひとえに「やめとけ」と言うべきではない業界ではないということがお分かりいただけたのではないでしょうか。
興味はあるけど「やめとけ」と言われているから応募を躊躇しているという方もいらっしゃるかも知れませんが、魅力も多く人気の業界なので、一方を踏み出してみることをオススメします。当社は転職や就職のご支援をしている「ヒュープロ」というエージェントを運営してますので、ご活用いただければ後押しさせて頂きます!