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M&Aの市場規模とは?2024年最新の動向や今後の展望についても解説!

エグゼクティブキャリアアドバイザー 後藤 大輔|Daisuke Goto
M&Aの市場規模とは?2024年最新の動向や今後の展望についても解説!

M&A市場はコロナ禍で一時的に落ち込みを見せたものの、基本的には拡大傾向にあります。日本国内においては後継者不足による売り手企業の増加と、経済回復による買い手企業の積極的な買収で、より一層M&A市場は活発になっています。今回はそんなM&A市場の規模感から最新動向、今後の見通しまで解説します。

M&Aとは?

M&Aは、「Mergers and Acquisitions」の略称であり、企業の合併や買収を指します。
合併は、通常、2つの企業が合意のもとで統合し、1つの新しい企業を形成するプロセスを指します。この場合、通常、合併元の企業は同等の地位を持ちます。一方、買収は、通常ある企業(買い手企業)が他の企業(売り手企業)の株式の多数または全てを取得することを指します。

買い手企業が売り手企業を買収することで、事業の拡大を図ったり、売り手企業の技術やスキルの活用ができます。一方で売り手企業にとっては後継者不足や経営基盤の不安定さを解消することができるので、双方にメリットを生むことができます。

日本のM&Aの市場規模

日本国内のM&Aの市場規模は拡大傾向にあり、2022年には日本企業のM&A案件数として過去最多の4,304件までに増加しました。2023年は4,015件とやや減少したものの、高水準が続いています。2000年以降の市場規模の変遷にフォーカスを当ててみると、基本的にM&A案件数は伸びているのですが、昨年までの間に2回、その数が大きく落ちかねない経済危機がありました。

リーマンショック

2000年以降、M&A市場の拡大に歯止めをかけた一つ目の出来事はリーマンショックです。リーマンショックとは2008年に当時アメリカの有力な投資銀行であったリーマンブラザーズが経営破綻した影響で世界的な不況に陥ったことを指します。
ご存じの方も多いとは思いますが、日本もリーマンショックの影響を大きく受けたため、M&Aをする余裕のない買い手企業が多くなりました。一方で経営が厳しくなり自社を譲渡したい売り手企業は増えたものの、買い手が現れずそのまま倒産してしまう企業も多く存在しました。この影響は2012年ごろまで続き、その間のM&A案件数は1,600件~1,900件ほどに低迷していました。

コロナウイルスのまん延

2012年ごろから徐々にM&A市場は回復していき、2019年にはM&A件数として過去最高の4,088件となりました。
そんな中、2020年から世界的にコロナウイルスがまん延し経済活動が大きく制限される事態になりました。しかし、M&Aの件数はリーマンショックの時のような大幅な落ち込みは見られず、2021年、2022年は再び拡大傾向に転じました。これはM&Aの認知度の拡大によって売り手や買い手の潜在層の顕在化が進んでいたことや、国の金融緩和などの影響でしょう。

「後継者不在率」からみるM&A市場の動向

下記のグラフは昨年までの10年間の日本企業の後継者不在率を表しています。2020年までは65%~66%を記録していましたが、その後は減少傾向になっており、2023年は53.9%でした。

ここではそんな後継者不在率から見る直近のM&A市場の動向について紹介していきます。

引き続き高水準な状況は変わらない

直近3年で大幅な改善傾向にあるものの、未だに半数以上の企業で後継者がいないというのは日本の抱える大きな問題といえます。M&Aはこのような後継者がいない企業を存続させる切り札的な位置付けになりますので、そのような
企業がある限りM&A市場は成長し続けるでしょう。

M&Aの普及が後継者不在率の減少を後押ししている

一方でこのグラフを素直に見ると、ここ数年で大きく後継者不足問題の解消が進んだと捉えることができます。この要因の一つには「内部昇格」による事業承継の割合が増加したことが挙げられるのですが、M&Aの普及も一役買っていると言われています。
M&Aはエリアだと大都市、規模感だと大企業での認知度が高かったのですが、近年地方に根付いたFAS企業が増えたことなどにより、地方エリアや中小企業も積極的にM&Aを行うようになっています。M&Aの件数はリーマンショック以降、安定的に伸びているので一見、ここ数年の急激な後継者不在率の解消には関わりがないようにも見えるかもしれません。
しかし、より売り手と買い手のニーズがマッチした案件が増えたことや後継者がいない企業のM&Aがより多く成立したからこそ、このような結果になったと推測できるのです。

2024年以降のM&A市場の展望

今後のM&A市場について、まだまだ経済情勢が不安定な中なので未知数な部分も多いです。一方で後継者不在率が今後も直近数年のペースで減少していくとすれば、後継者不在に悩む中小企業のM&A件数は徐々に減っていく可能性があります。
一方で、近年日本に多く存在するスタートアップ企業ベンチャー企業の中で、経営不振に陥ったり倒産寸前になってしまう企業は、今後もM&Aという選択をしていくでしょう。一方で軌道に乗っている若手経営者の企業については、M&Aの買い手企業となって一気に会社を成長させたいという志向が強まっています。
このことから今後もM&A市場は拡大していく見通しとなっています。

【参考】M&A業界の転職市場について

M&A市場の売り手や買い手のサポートを事業とするM&A業界もM&A市場の拡大とともにニーズが高くなっています。M&A業界は転職者にとっては魅力が多く、人気の業界です。ですので、M&A市場だけでなく、M&A業界の転職市場も活発になっているのです。

まとめ

今回はM&A市場の規模や、その動向や展望について解説しました。M&Aは売り手企業にとっても買い手企業にとっても重要な経営戦略であり、今後もその件数は増え続けるでしょう。
経済危機が起こる恐れがあるとはいえ、リーマンショックと同じ轍を踏まないよう、金融政策など国の対策によってその影響は最小限になる可能性が高いので、M&A件数の急激な減少もあまり起こりえないとみられています。

この記事を書いたライター

東証プライム上場の人材会社にて、大手企業の採用支援を行う。ヒュープロに参画後、会計業界キャリア事業部にて税理士・会計士の転職支援を行う。また、転職支援のみならず、支店の立ち上げ、エンタープライズ事業部の立ち上げなど複数の事業部の立ち上げを通して、大手会計ファームから事業会社の組織課題を総合的に解決する。そして、長年の会計業界のキャリア支援の中で、多くの税理士、会計士、異業種の方々のM&A業界へのキャリアチェンジの相談を受けたことで、「M&Aキャリア事業部」を設立。求職者に寄り添ったサポートで事業部No.1の転職成功率を誇る。転職支援実績は900名以上。
カテゴリ:転職・業界動向

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