M&Aを検討する企業にとって、その成功へのサポートをしてくれるM&A仲介は強い味方であり、かなりの需要がある職種といえます。本記事ではM&A仲介が具体的にどんな役割を果たしているのか、FA(ファイナンシャルアドバイザリー)との違いは何なのかなど、意外と知られていないM&A仲介について解説します。
M&A仲介は企業の合併や買収のサポートを行い、その対価をもらう職種を指します。M&A仲介はM&Aの売り手企業と買い手企業の間に立ち、双方の希望にマッチした相手企業を選んだ上で、交渉から成約まで導きます。
売り手企業も買い手企業も基本的に同じM&A仲介会社にサポートを依頼してきているので、M&Aが完了した際の報酬は売り手と買い手の双方から受け取ることになります。ですので他のM&Aをサポートする職種と比べて、中立的な立場で交渉を進めることができるのが特徴です。
M&A仲介の仕事内容は、マッチングさせる企業のリストアップからM&A完了、その後のサポートまで多岐にわたります。一例として以下のような業務が挙げられます。
そのうちいくつかを具体的に紹介していきます。
M&Aを実現するにあたって、売り手の企業にマッチした買い手を選定する必要があります。M&A仲介は売り手に対して、ビジョンや方向性がマッチしているなどの軸でピックアップした買い手候補を複数提示し、その中から売り手が選定するという流れが一般的です。そのため、M&A仲介はどのくらいの選択肢を提示できるか、つまりどのくらいの買い手の数を持っていて、売り手企業のビジョンを理解しているかが、重要になってきます。
もちろん、買い手企業がその売り手企業をM&Aするという提案を拒否する可能性もありますので、買い手企業の希望条件についてもしっかり把握しておかなければなりません。
企業価値算定とは売り手企業の経済的な価値を評価するプロセスです。具体的には、財務データの分析、将来のキャッシュフローの評価、市場や業界の動向を分析することなどにより、評価を算定します。企業価値算定は、買収価格の決定や交渉の指標となる重要な数値です。
M&Aにおける企業価値算定では、以下の3つのアプローチが一般的に用いられます。
企業の将来のキャッシュフローを評価し、それを現在価値に割り引いて企業の価値を算定します。このアプローチでは、割引現在価値法(DCF法)が一般的に使用されます。
企業の資産や負債を評価し、企業を再構築するために必要なコストと、企業の残存価値を考慮して企業の価値を算定します。このアプローチでは、調整純資産価値法が一般的に使用されます。
同業他社の売上高や株式市場価格など、市場における類似企業の取引価格を参考にして企業の価値を算定します。代表的な手法には、比較売上高法や比較市場法があります。
デューデリジェンス(Due Diligence)とは、投資を行う際に、投資先の価値やリスクなどを調査することを指します。
一般的にM&Aでは、買収企業(買い手)が譲渡企業(売り手)に対し、財務状況、法律問題、営業状況、IT環境など、様々な角度から調査・評価を行うことで、リスクや将来のビジネスチャンスを分析し、買収して問題ない企業かどうかを検証します。
デューデリジェンスにおける調査では、専門的な知識が必要であり、財務状況であれば税理士や公認会計士、法律問題であれば弁護士など、国家資格を持っている専門家が担当することもあります。
当然のことではありますが、買い手はできるだけ安く買いたいし、売り手は高く売りたいものです。その条件交渉の場で中立な立場で円滑に話が進むよう舵を取るのもM&A仲介が担う役目の一つです。お互いの意見を押し通そうとし過ぎて契約が破綻にならないよう、両者の条件を調整する役割が求められます。
M&Aの取引金額を決めるにあたって、売り手側の譲渡の範囲や従業員の給与など、お金に関わる細かい部分まで決めていきます。案件化するかどうかの一番の局面となるので、M&A仲介の腕の見せ所と言えるでしょう。
M&A仲介として働く人には、もちろん新卒入社や他のM&A仲介会社で経験を積んだ人もいますが、近年は他の職種や業界から転職してくる人も多い傾向にあります。ここではM&A仲介には、どのようなバックグラウンドを持っている人が多いのかを、紹介していきます。
営業職の中でも、法人営業において顕著な成績を上げた営業マンが、M&A仲介に転職するケースがよくあります。
M&A仲介会社は、成果主義でインセンティブ制度を取り入れている企業が多いです。もちろん他の営業職でもインセンティブを取り入れていることはよくあります。ただ、M&Aは1件当たりでクライアントから受け取る報酬がとても大きく、基本給の何倍もの給料を稼ぐことも可能であるため、そこに魅力を感じて入社する人も多くいらっしゃいます。
銀行や証券会社などの金融業界も、M&A仲介では多いバックグラウンドの一つです。金融業界での経験や得た知識は、お金周りの手続きや調査をする機会が多いM&A業務において、活かせる場面が多くあります。
銀行などではM&A業務を行う部門があるケースもあり、その部門にいた経験がある場合は、よりM&A仲介において活かせることになります。
上述の二つに比べると少ない属性ではありますが、税理士や公認会計士、弁護士の有資格者も多く所属しています。
M&A仲介ではこのような資格を持っているニーズが非常に高いです。これは先ほど仕事内容の部分でご紹介した、デューデリジェンスや企業価値算定だけでなく、例えば税理士であれば節税や納税についてのアドバイスなどといった税務コンサルティングをクライアントに提供できるスキルを持った存在であるからです。
M&A仲介業は業界の成長に合わせて、企業数が増加しています。その中でも代表的な5社についてご紹介します。
会社名 | 株式会社日本M&Aセンター (Nihon M&A Center Inc.) |
設立 | 2021年4月1日(1991年4月25日 創業) |
上場区分 | 東証プライム上場 |
代表 | 代表取締役会長/三宅 卓 代表取締役社長/竹内 直樹 |
従業員数(連結) | 1,116人 |
平均年齢 | 33.8歳 |
所在地(国内) | 東京、大阪、名古屋、福岡、広島、札幌、那覇 |
所在地(国外) | シンガポール、インドネシア、ベトナム、 マレーシア、タイ |
資本金 | 40億円 |
<詳しくはコチラ>
会社名 | M&Aキャピタルパートナーズ株式会社 |
設立 | 2005年10月12日 |
上場区分 | 東証プライム上場 |
代表 | 代表取締役社長/中村 悟 |
従業員数(連結) | 269人 |
平均年齢 | 32.4 歳 |
所在地(国内) | 東京、大阪、名古屋 |
資本金 | 29億円 |
<詳しくはコチラ>
会社名 | 株式会社ストライク |
設立 | 1997年7月11日 |
上場区分 | 東証プライム上場 |
代表 | 代表取締役社長/荒井 邦彦 |
従業員数 | 289人 |
平均年齢 | 35.8歳 |
所在地 | 東京、大阪、名古屋、福岡 札幌、広島、仙台、高松 |
資本金 | 8億円 |
<詳しくはコチラ>
会社名 | 株式会社M&A総合研究所 |
設立 | 2018年10月12日 |
上場区分 | 東証プライム上場 |
代表 | 代表取締役社長/佐上 峻作 |
従業員数 | 344人 |
平均年齢 | 30.2歳 |
所在地 | 東京、大阪、名古屋、福岡 |
資本金 | 6.3億円 |
<詳しくはコチラ>
会社名 | 株式会社fundbook |
設立 | 2017年8月7日 |
上場区分 | 非上場 |
代表 | 代表取締役/ 森山 智樹、渡邊 和久 |
従業員数 | 200人 |
平均年齢 | 29.5歳 |
所在地 | 東京、大阪 |
資本金 | 20億円 |
M&A仲介とFA(M&Aアドバイザリー)との大きな違いはそのクライアントに対する位置づけです。
クライアントからみると契約の違いとも言えます。
M&A仲介が売り手と買い手の両者と契約を行うのに対し、M&Aアドバイザリーは売り手と買い手いずれか一方の企業の担当になります。
M&A仲介は両者から報酬を受け取るのが一般的ですが、M&Aアドバイザリーは契約した一方のみから報酬を得ることが多いです。
M&A仲介がどういった役割が果たせるのか分かったところで、M&A仲介にクライアントがサポートを依頼することでどういったメリットがあるのか、紹介していきます。
M&A業務には税務、法務などの専門的な知識が必要なタイミングが多く、企業がそれらを全て把握した上でM&Aを行うのは難易度が高いです。かといって、各方面の専門家によって逐一問い合わせるのも大変でしょう。M&A仲介会社にはM&A仲介はもちろん、税理士や公認会計士、弁護士といった専門家が在籍しているためそれらの知識を一手に提供することが可能です。
またM&Aは完了まで1年かかるケースもあるほど長きにわたって多岐の業務をすることになるのですが、その代行をすることで時間的な負担をかなり減らすことができます。
企業が相手先企業を探せるマッチングサイトもありますが、中々M&Aの相手という大事なパートナーを決めるには情報が不足していることが多いです。
M&A仲介は売り手・買い手ともに直接担当をしているからこそ、企業の事業内容や規模感といった一般的な情報だけでなく、M&Aを行うことで達成したいビジョンなど、関係構築ができているからこその情報をキャッチアップすることができています。また、多くの企業の中からマッチしている企業を探す手間もM&A仲介が請け負うことができます。
M&A仲介は交渉の場において中立的であり、両当事者の利益をうまい具合に調整してくれます。これにより、一方が不当に不利益を被ることがなくなり、M&A完了やその後に至るまで両者の関係を保つことにも繋がります。
M&Aアドバイザリーの手数料は、M&Aを進めていく段階ごとで設定していくこともありますが、成功報酬の最も金額が大きいことがほとんどです。成功報酬はレーマン方式という取引金額に基づいた算出方法が使用されています。
取引価格 | 料率 |
---|---|
基準額5億円までの部分 | 5% |
基準額5億円超~10億円の部分 | 4% |
基準額10億円超~50億円の部分 | 3% |
基準額50億円超~100億円の部分 | 2% |
基準額100億円超の部分 | 1% |
単純計算ではありますが、取引価格が5億円だとしてもM&A仲介会社には2500万円入る計算になりますので、1件あたりのM&A仲介個人の売上はとても大きな金額であるといえます。
就職や転職を考える方にとってM&A仲介会社のイメージは、「年収は高いが、かなり激務である」というものではないでしょうか?
実際はどうなのか、それぞれ見ていきましょう。
ご紹介したように、1件あたりの個人の売上がとても大きな額であるだけでなく、無形商材であることから費用があまりかからないために、M&A仲介の基本給はかなり高くなっています。それに加えて、こちらもご紹介したインセンティブ制度による上乗せが入ることを踏まえると、日本でもトップクラスの年収が稼げることになります。
実際の金額を見てみると、M&A業界全体の平均年収は1,243万円程度で、2,500万円を超す企業もあります。日本の給与平均は2022年時点で458万円ですので、格段に多くの年収を稼ぐことができるといえるでしょう。
各企業の残業時間を参照してみると、月に40~50時間程度の残業は当たり前のようです。また複数の案件を同時に受け持っている場合は、その進捗次第では80時間以上の残業をする月などもあるようです。
このように残業時間では激務というイメージと相違ないものの、休日については一般企業と同程度かそれ以上に取得が可能です。
M&A仲介は激務ではあるものの、高年収や成長環境を求める方に人気の職種となっているため、特に未経験からの転職難易度は高いと言われています。しかし、きちんと対策したり、転職エージェントを活用すれば未経験からの転職成功は全くの夢物語ではありません。
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もちろん、日程調整もエージェントが実施してくれます。内定を複数社もらった際に断りをいれてくれるなど、心理的負担のある対応もする必要がありません。そういったサービスを無料で受けられますので、是非ご相談していただければと存じます。
今回はM&A仲介の役割などについてまとめてました。M&A市場には売り手も買い手も多くの企業がいるものの、実際にM&A完了まで至るのはそのほんの一部に過ぎません。少しでも良いマッチングが生まれるように活躍するM&A仲介は社会貢献性が高く、注目されている職種ですので、もしご興味があるようでしたら、是非挑戦してみてはいかがでしょうか?