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顧問業務を標榜し、ソリューションプロバイダーを志す第一綜合事務所

HUPRO 編集部
顧問業務を標榜し、ソリューションプロバイダーを志す第一綜合事務所

第一綜合事務所は、“顧問業務”を標榜し、顧客に生じる様々な問題の解決支援を行っています。少数精鋭の事務所ながら、扱う領域は投資ファンドの運営支援や資産税、非営利法人など多種多様です。
今回は、前波代表と、第一綜合事務所で働く3名のスタッフの方にヒュープロ編集部が伺いました。

顧客に直接貢献できる税理士に惹かれて

―前波代表はどのような経緯で税理士になられたのですか?

前波:もともとは公認会計士として2年ほど監査法人に勤務していたのですが、その後、父親の会計事務所を引き継いで税理士業務を始めました。

私の父は公認会計士、税理士、不動産鑑定士、司法書士の資格を持っており、天才的なコンサルタントとして一部で知られる人物でした。その父の事務所の一部だった会計事務所を私が引き継いだ形です。

―税理士の仕事を始められるとき、ご苦労はありましたか?

前波:もちろん大変でした。公認会計士試験のために法人税法を学んでいたのですが、それだけで実務はこなせません。私の知識不足でお客様に大きな損害を与えてはいけませんから、毎晩のように税務の専門誌を読みあさっていましたね。

―公認会計士の試験に合格して監査法人に勤務していたにもかかわらず、税理士業務にシフトされたのはなぜですか?

前波:一言で言えば、税理士の仕事が自分に合っていると思ったからです。

会計監査の仕事は、中立的な立場で財務諸表をチェックし、投資家のニーズに応える意義があります。これは資本主義社会を守る極めて重要な仕事であることは間違いありません。ただ、会計監査業務の報酬は投資家ではなく監査を受ける企業が負担しますよね。会計士として監査の仕事をしていると、依頼してくれた企業にとって不利なことを指摘せざるを得ない場面が出てくるものですが、そこにやや違和感がありました。

私は性格的に、報酬を払ってくださる依頼主の利益にシンプルに貢献したかったのです。その意味では、会計士よりも税理士の仕事のほうが分かりやすく、私の性格に合っています。そのことを認識してからは、私は監査業務を一切行わないことにしました。

顧客に寄り添って問題解決をサポートしたい

―前波代表が税理士として大切にしていることを教えてください。

前波:税理士のビジネスの形はさまざまですが、大きく分けると相談を主とする「顧問業務」と、申告書や決算書作成などの「請負業務」の2つに分けられます。このうち、私たちが標榜しているのは前者です。もちろん、税理士である以上、請負業務もやりますが、あくまでも充実した顧問業務があったうえでの請負業務と考えています。

―それはなぜですか?

前波:まずは「お客様の多種多様なお困りごとを解決できる相談役でありたい」との思いがあります。また、事務所経営の側面からお話すると、やはり請負業務だけでは付加価値を出しづらく事務所の発展につながりません。顧問業務でしっかりとお客様の信頼を得ることができれば、これが付加価値になり請負業務の価値も高まりますから、事務所の経営が安定するのです。

私たちはこれまで30年近く営業を一切してこなかったのですが、それでも十分な顧客を獲得できているのは、顧問業務でお客様に価値を感じていただいているからだと自負しています。お客様が次のお客様を紹介してくれるので、営業をする必要がないのです。

―営業なしで30年とは、すごいですね。

前波:うちはスタッフ9人という小さな事務所ですから、お客様の数をむやみに増やすわけにはいきません。それよりも、“いいお客様”と長く付き合っていくことが大切です。そのためには、ホームページを整えたり、むやみに営業をしたりするよりも、お客様からご紹介をいただくのが一番だと思っています。

このように第一綜合事務所には「お客を増やさないと」というプレッシャーがないので、とにかく目の前のお客様に対して力を注ぎ、クオリティの高いサービスを提供することができるのです。

―いいお客様とは、何か基準があるのですか?

前波:年商などの具体的な基準を設けているわけではありませんが、「私たちがどれくらい問題解決のお役に立てるか」という観点で考えています。私たちはサービスプロバイダーではなく、ソリューションプロバイダーでありたいのです。

極端な話、創業したばかりで売上が小さな会社の場合、私たちが貢献できることは多くありません。決算書や申告書の作成はお手伝いできても、その会社の成長に直接貢献できる余地は少ないでしょう。

でも、ある程度の事業規模をもつ企業の場合、ひとつの意思決定がその後の事業成長を大きく左右します。そうした企業が抱える課題は税務や会計だけでなく、経営や相続、事業承継など幅広くなるものです。そのような多様な課題を抱えるお客様が、私たちにとっていいお客様ということになります。

日本でいちはやく投資ファンドの運営支援に注力

―現在はどのような業務分野に力を入れられているのでしょうか?

前波:第一綜合事務所でお受けする案件は、おおむね3つの分野に分かれています。まずは投資ファンドの運営支援を行う「ニュービジネス」、企業税務顧問の「トラディショナル」、最後に非営利法人や医療法人などを扱う「ノンプロフィット」です。

―投資ファンドの運営支援とは具体的にどのようなものか教えてください。
前波:私たちが扱っている主なものは「投資事業有限責任組合」(LPS)というものです。業務執行を担う無限責任組合員と、投資家の有限責任組合員により組合を組成し、事業投資を行うというものなのですが、第一綜合事務所が税務や会計などをサポートする形で関与しています。日本では1990年代の後半から投資ファンドの組成が増えていったのですが、その頃から私たちはさまざまな投資ファンドの案件に関与してきました。

―いちはやく新分野に目をつけられたのですね。

前波:これは偶然のご縁によるものです。私が所属していたテニスクラブで知り合った方から相談を受けて税金の問題を解決してさしあげたのですが、その方が投資ファンドの立ち上げに動かれていたので私にお声がかかりました。

以来、これまで30年近くさまざまな投資ファンドの支援を行ってきましたが、本当にいいビジネスと出会えたと感じています。投資ファンドのビジネスモデルは、銀行や保険会社、証券会社などから資金を集め、非上場企業に投資し、その成長に応じたリターンを得るというものです。投資を受けた企業にとっても、投資家にとってもウインウインな結果になりますから、社会的意義はとても大きい。

―なるほど。ただ、投資である以上は不確実性もあると思いますがいかがでしょう。

前波:私たちが扱うのは、成長が確信できる会社に投資をする案件に限っています。深くデューデリジェンスを行い、成功を確信できるところにしか投資しないので、20社検討して、そのうちの1社を選び抜いて投資するというイメージです。

投資ファンドはただ資金を提供するだけでなく、株主となりコンサルティングも行います。そのことで投資先企業の価値が高まり、最終的にはふさわしい買い手を見つけて株式を売却することでリターンを得ます。このようなゴールを描いたうえで私たちは支援を行っているのです。専門性の高い仕事ですが、社会的意義はとても大きく、とても面白いですよ。

いい仕事は「スタッフの幸福」があってこそ

―前波代表のビジョンをお聞かせください。

前波:事務所としては「お客様に価値を提供し、お客様の問題解決のお役にたち、お客様から必要とされる存在となること」を目指しています。

さらに私個人の思いとしては、スタッフの幸福追求を理念としています。もしも「なんのために前波さんは事務所を経営しているの?」と聞かれれば、「スタッフの幸福のため」と答えます。私は、まずスタッフの幸福があってこそ、お客様にいいサービスを提供できると思っているのです。

―その思いは、所内にどのような形で反映されているのでしょうか?

前波:分かりやすいところで言えば、事務所の利益を直接スタッフに分配するしくみを設けています。詳しくはお話できないのですが、貢献度に応じて必ず見返りが出るようになっています。

また、スタッフが働きやすいように、できる限り環境を整えています。事務所をアクセスの良い駅前に置いていますし、仕事の生産性を高める設備投資は惜しみません。たとえば全スタッフのデスクを電動で昇降するものにしたり、デスクの上に27インチのモニターを2つ設置したりしています。

―かなり充実した仕事環境ですね。事務所内の雰囲気はいかがでしょう?

前波:かなり良いと思います。少人数なので全員でコミュニケーションを取れますからね。たとえば月に2回、事務所内で全員が集まって昼食会をしています。そのうち1回は軽井沢発祥の有名なパン屋さんで、もう1回はスタッフが選んだお店で、ランチを買って食べます。そのほかに忘年会や納涼会などもあり、すべて事務所負担です。

―それでは、第一綜合事務所で働くスタッフの方にもお話を伺いたいと思います。渡邉さんは勤続20年目のシニアマネージャーとのことですがどのような経緯で入所されたのでしょうか

渡邉:大学時代に「税理士なら食いっぱぐれることがないだろう」と思い勉強を始めたのですが、在学中の全科目合格は叶わず、卒業後は食品会社で経理をやっていました。その後、一念発起して退職し、税理士試験の勉強をしながら仕事を探したときに第一綜合事務所と出会いました。

入所当時はまだ税理士資格がなかったのですが、やる気を買われたのか採用してもらい、黎明期だった投資ファンドの顧問チームに参加することになりました。以来、20年間充実した仕事をさせてもらっています。

―川﨑さんも現在はシニアマネージャーでいらっしゃいますが、以前は消防士だったのですか?

川﨑:はい。大学を卒業してから地域の安全を守る仕事をしたくて、東京消防庁で女性消防官として勤務していました。3年半ほど勤めたのですが、だんだんと、組織に頼らず自分の力を発揮できる仕事をしたいと思うようになり……。私の父は小さな会社を経営していまして、母が経理を任されていたので、税理士の仕事に興味をもち、3カ所ほど会計事務所に勤めた後、第一綜合事務所の代表から誘われて入所しました。

―宇野さんは、未経験からアシスタントとして入所されたのですね。

宇野:そうです。私の前職は九州の大手総合スーパーのお惣菜コーナーで、主任として勤務していました。夫の転勤をきっかけに上京することになったのですが、自分の人生を考えたときに「専門知識が求められる仕事に就きたい」と思うようになりました。

そこで簿記の資格を取って転職活動を始め、ある外資系税理士法人から内定をいただいたのですが、第一綜合事務所の明るさや所内の雰囲気が気に入りこちらに入所することを決めました。

―ありがとうございます。次に、第一綜合事務所の仕事のやりがいについて教えてください。

渡邉:弊所は顧問業務をメインにしており、お客様の意思決定に直接関わる場面が少なくありません。いくつかの選択肢があるなか、「こっちに行きたいけれど不安がある」とお客様が悩まれている状況で、私たちが吟味したうえで背中を押すことがあるのです。そのことで会社の成長に貢献でき、感謝していただけるのは最高ですね。私がお手伝いした会社を新聞で見つけることも多く、意義のある仕事をできている実感があります。

川﨑:私は相続税などの資産税を多く扱っているので、社会的な成功を収められたお客様と接する機会が多くあります。そのようなお客様が抱えている難しい課題に対して、私の知識でお役に立てるのはとても嬉しいです。また、投資ファンドの運営支援のように通常の会計事務所では経験できない分野に携わることができるので、税理士としての仕事の幅を広げることができます。

宇野:私は本当に右も左も分からない状態で入社したのですが、周りの人たちが支えてくれ、分かりやすく指導してくれるので、成長できている実感をもてています。税理士ではないので税務顧問にはなれないのですが、お客様から給与計算などのお困りごとをご相談いただくことはあり、解決のお役に立てたときはやりがいを感じます。

楽しい税理士人生を歩んでほしい

―再び前波代表にお話を伺います。第一綜合事務所のスタッフに求める資質や人物像を教えてください。

前波:やはり優秀な方、税理士事務所での勤務経験がある方が望ましいのは確かですが、何よりも仕事に対するやる気とコミュニケーション力を重視しています。たとえば投資ファンドの案件をもったとき、「難しいからやりたくない」ではなく、「わからないけれどやってみよう」というマインドがあれば、周りはいくらでもサポートしますし、本人も必ず成長できます。

―最後に、読者へのメッセージをお願いします。

前波:私がスタッフによく言っているのは、「楽しい税理士になってください」ということです。ここで仕事をすればきっと楽しい税理士になれます。私自身、ここまで約30年にわたり税理士として働いてきましたが、とても楽しい税理士生活を送れましたから。

なぜ楽しいのか。それは、自分の力を精一杯発揮して、お客様に貢献し、お客様から評価していただけるからです。もちろん努力は必要ですが、その努力は必ず結果となり報われますから、これほど楽しい仕事はないのではないでしょうか。

最近はChatGPTをはじめとするAIに税理士業が脅かされるという悲観論がありますが、私はまったく心配していません。ソリューションプロバイダーとして顧問業務を行うのは人間でなくては不可能です。その意義を見失わなければ、税理士の未来はバラ色です。

―本日は貴重なお話をいただきました、誠にありがとうございました。

この記事を書いたライター

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