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事業承継・M&A・資金調達・企業再生を武器に、みそら税理士法人が関西経済を支える一助に

HUPRO 編集部
事業承継・M&A・資金調達・企業再生を武器に、みそら税理士法人が関西経済を支える一助に

みそら税理士法人は、大阪市・神戸市・姫路市に拠点を置き、大阪・兵庫を始め関西地方の中小企業をクライアントとしています。税理士法人としては珍しく、企業再生を含む経営支援や資金調達、M&A、事業承継も得意としています。中小企業はもとより人材・資金が脆弱であることも少なくないため、企業再生は容易ではないものの、地域経済を盛り立てようと事務所を上げて奮闘しています。同法人の公認会計士である廣岡隆成氏に、企業再生などにかける思いについてHUPRO編集部が伺いました。

事業再生は、中小企業の方が難しい

―企業の再生支援を手がけている事務所は、東京以外では少ないのではないでしょうか。具体的にどのような進め方で企業再生を行うのですか。

兵庫県では当法人だけではないかと思いますし、大阪でもそれほど多くはないのではないでしょうか。地域経済に微力ながら貢献しているという自負があります。案件は、銀行さん経由のご紹介が多いです。銀行さんの融資先からの返済が滞りがちで、借入額が1億円以上の企業が主な対象です。

まずやることは、P/Lの改善。基本的に赤字であるか、黒字でもその金額が少ないケースが多いですから、いかに利益を出すかについて、財務分析や競合他社との比較などを行います。企業再生は、大企業を相手にするよりも中小企業を対象とする方が、難しいと感じます。中小企業は、人・モノ・カネのすべてが余裕の無い状態でやっている状態ですので。コストを削減するために総勘定元帳を全部見て、不必要な出費をコツコツ積み上げていく感じです。

それでも不十分だと思われる場合は、B/S面の改善に取り組みます。関係のある金融機関を集めて現状を説明し、各種金融支援(条件変更、劣後化、債権カット)に応じてもらいます。「金融調整」と呼ばれるものです。経営者の方は、目の前のキャッシュが減っていくと会社が潰れてしまうという恐怖心がありますから、「とりあえず借り入れしなければ」と、返済計画を考えずにバンバン借りてしまいがちなのです。それが積み重なって借金が膨れ上がるのは、割とよくあるケースです。

―中小企業の再生は、とても大変そうです。

楽ではありませんが、それでもできることはかなりあります。赤字の中小企業は基本的な、当たり前のことができていないことが多いので、当たり前のことをするだけで普通に黒字化できるようになるのです。勝率でいうと10戦8勝くらいです。ただ、本業が参入している市場自体が急激なスピードで縮小している業種もありますので、その市場で戦い続けるのは難しいです。

「当たり前のこと」とは例えば、原価計算。製造業の場合は原価計算ができておらず、いくらで売っていいかよく分からない、といったケースはよくあります。本来は、製品1個を売るのにいくらコストがかかっていて、それ以上に値付けして売らないといけないのですが、何となくの価格設定になっている場合も多くみられます。今もまさにそうです。原材料費が上がり、円安や労務費も燃料代や電気代も上がっているような状況でも、未だに昔の値段で売っているといったケースです。販売チャネルが少ないとか、人が足りないといったことはむしろ枝葉の議論なのです。

―具体的な支援事例を挙げて頂けますか。

たとえば、当法人の支援事例では、年商2億円のリフォーム業でそれまでの営業損益が100万円だったのを、経営支援を行うことで1,200万円まで伸ばしたことがあります。この会社の場合は、粗利益設定がそもそも低く、値決めのルールがあいまいでした。さらに、計画や目標が社長の頭の中だけにある状態で、全社で十分に共有されていませんでした。その結果、組織として何をすべきなのかが明確にされないまま事業を進めており、受注も伸び悩んでいました。

このため、この会社では社員も含めて具体的なアクションプランを策定し、現場が動きやすい指標を設定するとともに、毎月のモニタリング会議を行うことにしました。会議には幹部が全員出席することとし、各施策の進捗状況や計画策定時に設定した指標を確認し合いました。こうした取り組みで、営業損益を大幅にアップさせたのです。

また、年商6億円の繊維業では営業損益がマイナス8,000万円の赤字に転落しました。自社ブランドの製造・販売は粗利率が高かったため社内リソースを振り向けたのですが、結果としてそれまでOEMを受注していたメーカーの競合となってしまいました。OEMによる利益は薄いものの安定していた受注先だったので、売上が激減しました。

そこで当法人による支援においては、工場稼働を優先するよう営業方針を変えました。OEMは利益が少ないとしても売上を確保できます。いっぽう、営業担当者の評価をそれまでの売上額に代えて、粗利額での評価に変更しました。こうすることで安定した売上を確保しつつ、利益を確保しやすい収益構造をつくっていきました。営業損益がマイナス8,000万円の赤字だったこの会社は、2,000万円の黒字を出すに至りました。

粗利率を徹底的に管理して、営業損益をそれまでの4倍近くに上げた事例もあります。別の繊維業の支援先では、中国に保有している2工場で製造・販売していたものの、現地企業との価格競争に苦しんでいました。また、卸売事業では大口の取引先が倒産したことで、貸し倒れも発生してしまいました。

そこで現地に進出している日系企業への営業を始めるよう助言し、実行してもらいました。売上ボリュームは見劣りするのですが、現地企業との価格競争は際限がないので、そこから抜け出すことが必要でした。それから、製品ごとに粗利率を管理しました。粗利率の低い商材があれば、値上げ交渉を徹底的に行いました。こうした地道で、しかし徹底した取り組みが功を奏して、4,000万円だった営業損益が、4年かけて1億5千万円に伸びました。

クライアントの80%が黒字決算を実現。その秘けつとは

―中小企業の再生支援は大変そうなのですが、その一方、語弊を恐れずに言えば、とてもおもしろそうですね

天職だと信じていますが、儲からないです(笑)。支援先は、経営が厳しい会社ばかりですから。報酬は控えめだと思います。でも、関西経済のためにやっています。目の前のお客様が困っているのなら、専門家として粛々と対応に当たるのみです。金融調整などを行えば、資金繰りが一気に楽になります。手元キャッシュが増えてくるので、社長は前向きになれます。

ほとんどの企業の社長さんは、決算書などを見て、自分たちが変わらないといけないということは分かっています。ただ、何をしてよいのか分からないのです。ここであるべき道筋を我々がお示しすることによって、ぱっと前を向き始めるのです。これまでの経験から、自信を持って言えます。普通に、ちゃんとやれば再生の可能性はあるのです。再生するためには色々な条件があるのですが、最低限必要なのは社長の人柄です。「今までのことを素直に反省し、前向きに頑張っていこう」と思えるかどうかですね。

事業承継も、同様です。儲かる会社には、必ず後継者が立つものです。たとえば社長の息子さんも、社長が年収2千万円もらっているとしたら、他で働くよりも給料が高いのでおのずと帰ってくるわけです。社内で後継者を立てようとすれば、社長が羽振りの良い生活をしていれば、従業員もこの後を継ぎたくなるものです。しかし今、後継者不足というのは儲かっていないからなのです。

―採算性の悪い中小企業は昨今、「ゾンビ企業」などとも称されますが、どのようにお考えですか

最近は、「中小企業の数が多すぎる。なので、生産性が上がらず、給与も増えない。潰れる会社はどんどん潰れたらいい。」といった風潮があります。大手企業との合併や大手企業の傘下に入り、雇用が継続されれば良いですが、本当に潰れ始めると、地域に仕事が無くなります。そうなると、地域に人がいなくなってしまいます。仕事がないと、人が定着しません。大阪か、あるいは東京まで行ってしまいます。そうなると、地域空洞化が加速してしまいます。

なので、お客様が1社でも多く儲かるようになってほしいなと思います。儲かれば、みんなの給料が上がって雇用も増えるし、雇用が増えれば人が集まる。子どもを持ちたいという若い世代も増えてくるでしょう。

―地域経済を支えるために、貴法人で大切にしていることがあれば教えてください

当事務所は、スタッフ全員が「お客様のパートナー」としてお客様と共に喜びや悲しみ、悩みも分かち合う存在となることを目指しています。我々が重視するバリューです。当事務所のクライアントは、80%以上が黒字決算を実現しています。このことは、お客様に寄り添って業務を提供していることの現れであると、私どもは自負しております。たとえば経営企画・管理部門の機能を強化するための支援として、市場や競合の分析、会社として今後の展望を形にするアクションプランの作成なども行います。繰り返しになりますが「当たり前のことを当たり前に行う」地道な取り組みを行うことで、着実に結果に結びついていくのです。

「会社は人なり」。関西に魅力ある企業を増やし、支えていくために

―厳しい経営状況にあるお客様も含めて、みそら税理士法人として地域経済を盛り立てていくためには、どんな人材が必要だとお考えでしょうか。

前向きで、素直な人ですね。スキルは二の次です。クライアントの社長さんと一緒に、前向きに頑張ってもらうためにも。当事務所では、スタッフ全員がお客様の「パートナー」です。そして、「会社は人なり」。人に魅力のある会社だけが、生き残っていきます。ここでいう「会社」はお客様の会社も、自分たちも含めて、です。
我々は、お客様の本業のことはよく分かりません。マーケティングや新商品開発の専門家ではありませんから。本業について最もよく分かっているのは社長です。そこを業界の常識にどっぷりつかっていない第三者が数値を根拠にして後押ししてあげる。会計税務の知識はいらないのですよ。会計や税務のスペックが高い会計士・税理士がお客様を後押し出来るかというと、全然そんなことはありません。

みそら税理士法人のルールは、二つだけです。「主体的に行動をしてください」「困っている人がいたら手を差し伸べてください」。当法人は、特に仕事や役割を細分化していません。細かいルールも設けておりません。

―貴法人は、スタッフの数が近年で大幅に増えていますね。

2014年は8人でしたが、この数年で案件が急激に増えたこともあり、現在は66人まで増えました。数年で人員が増えたこともあり、当法人の仕組みを作るのが、僕の役割だと捉えています。まだまだその途上ですので、スタッフの方には主体的に動いてもらいたいと思っています。自分で手を挙げて、行動に移していくことに対して、制限するようなことはまずありません。実際に、スタッフの中には「失敗してもいいからまずは動こうという風土がある」と言ってくれる人もいて、挑戦する気持ちが皆の間に浸透しているのかなと感じています。

主体的に行動する上では、チームとして手薄な部分を察知する能力も必要です。その時は手を差し伸べてあげてほしいのです。その過程で、困っている人にも気づけるようになっていくでしょう。当社の企業文化の大切な部分であると考えています。

スタッフの「働き方」と「働きがい」を両輪に、お客様と共に成長したい

―廣岡さんが地元・姫路に戻られる前は、東京で有限責任監査法人トーマツ、アクセンチュア株式会社と株式会社企業再生支援機構に勤務されていました。どのような業務を経験されたのでしょうか。

トーマツではIPO支援、アクセンチュアでは戦略コンサルティングを担当しました。当時は本当にたくさん働きましたね…(笑)。企業再生支援機構では、超大手企業の再生に関わりました。
M&A、事業承継、資金調達、企業再生といったこれまでの経験・知識を地域の次世代会計人に伝えていくのが、私の今の大きな課題です。

―地元に戻ってくることは、上京した当時から考えていたことなのですか。

みそら税理士法人の代表(廣岡純一氏)は、私の父です。当初は一生東京で働いて帰るつもりはなかったのですが、父が引退したときのことをふと考えました。父が引退する時期に、スタッフの方たちは30~40代です。父が廃業した後、このスタッフは再度仕事を探すのだろうか。ならば、「ちょっと帰って、いっぺんやってみよう」と思い、2014年7月に姫路に戻りました。

ありがたいことに、古参の社員は僕に実務をやらせなかった。「違う仕事をしておいてくださいね」と、温かい目で見守ってくれたので、仕組みづくりに専念できています。これはありがたかった。スタッフの数が近年で急激に増えていることもあり、自分も既に古参の部類に入っていますが、そもそも古参であることが大きく影響する環境ではありません。このことは前述の通り、私が参画した時に古参の方がバックアップしてくれた時からすでに受け継がれている、「自主性を重んじる」という当事務所のカルチャーなのかなと思います。

―今後の展望をお聞かせください。

お客様の抱える課題は、どんどん複雑になっています。この状況での業務をたとえるなら、総合格闘技のイメージでしょうか。会計税務の他の知識も含め、トータルで会社を支援して行く必要があります。会計士・税理士のほかにもさまざまなスキルを持った者が集まって、サポートする必要があると思っています。お客様をサポートしようと思ったら、チームで動いていくことになります。税理士、社会保険労務士、SE。タッグを組んで動いていきます。

そのためには当事務所も含め、企業は「働きやすさ」も「働きがい」も、追求していく必要があると考えています。働きやすさについては、会社が儲かるようにして給料を増やし、有給休暇もたくさんとってもらい、育児休暇も取れるように。P/Lにもリンクするのだろうと思います。ちなみに当事務所は今、ちょっとした「ベビーブーム」です。昨年(2021年)に3人が、今年も1人が出産して育休中です。

「働きがい」は個人の考え方によっても違うので、最適解があるのかどうかも分からないのですが、「働きやすさ」と連動するのかもしれないと思っています。儲けていたら、既存事業だけでなく、新しいことにチャレンジしようぜ、という文化が出てくるかもしれないからです。みそら税理士法人も含め、課題の部分です。

みんなに利益を還元して、たくさん休んでもらいたい。働きやすさと働きがいの両輪で、組織を回していく必要があります。真っ先に私たちが少しでも実現して、地域のお客さまのお手本になりたいですよね。

―本日はお話を伺い、ありがとうございました。

今回お話を伺ったみそら税理士法人のHPはこちら

この記事を書いたライター

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