「会計税務は本来、クリエイティビティの高い仕事だと思います」
そう話すのは、税理士法人Brain Trust(以下、ブレイントラスト)の代表社員/税理士の長濱 晋氏。ブレイントラストは、会計業務において、ただ数字を見るのではなく、その先にあるクライアントの現場の姿を大切にしています。課題解決の場面でも、クライアントの未来のためになる方法を選ぶというブレイントラストは、社名の通り、「経営者の諮問機関」として企業に寄り添っています。
今回、長濱氏に税理士を目指したきっかけやブレイントラストの理念、大切にしている価値観、働き方、求める人材像などについて、HUPRO編集部がお話を伺いました。
ー長濱さんが税理士を目指した理由について、教えてください。
私が税理士を目指したのは、父の姿に影響を受けたからです。税理士の父は1967年から、現在のブレイントラストの前身である「長浜会計事務所」を開業していました。仕事とプライベートの境目があまりないような生活を送っていて、私が子どものときも、仕事の話やお付き合いのある経営者の話をよく家でしていました。自宅には来客も多かったので、父がクライアントと話している姿もよく目にしていましたね。
そんな姿を見ているうちに、自分もいつか父の仕事に近いことをやるのだろうと、何となく考えるようになって。税理士になることは、自分にとって当然の流れだったように思います。
ー大学を卒業後、そのまま税理士になられたのですか?
いえ、ある程度経ってから父の事務所で経験を積み、代表を継ぐつもりでいたので、慶應義塾大学を卒業後は三菱重工業株式会社に就職しました。担当していたのは、人事・採用の仕事で経営企画部門に所属していました。
私が社会人6年目のとき、父が2度の大病を経験して、1か月ほど入院する時期がありました。母がとても心配している様子を見て、父の事務所に入る時期を予定よりも早めた方がいいと判断し、1996年9月に長浜会計事務所に入所しました。
ーブレイントラストの理念について教えてください。
経営理念は「企業経営における未来への創造的な解決策を見つけ出すことを通して 『スタッフの幸福』と『クライアントの繫栄』を追求し 社会に貢献する永続的発展企業を実現します」というものです。
私たちが提供する会計・税務サービスは、あくまでも手段だと考えています。税理士の仕事の本質は、会計業務や税務を滞りなくこなすことではなく、経営者が抱えるさまざまな課題の解決をお手伝いすることです。会計業務は「10年後には自動化されて無くなる仕事」だとも言われますが、もし会計業務がなくなったとしても、それは手段が一つ消えるだけで、私たちの仕事の本質は消えないと思っています。
クライアントの課題を解決する際、その解決策は1つではありません。それなりに楽で、短期的に解決できる道もあれば、時間がかかって困難もある程度伴うけれども、クライアントの未来をつくっていけるような道もある。経営理念の中に「創造的な解決策」という言葉を入れましたが、私たちは後者のような、時間や手間がかかってもクライアントの未来に資する解決策の提案を大切にしています。
ーなぜ社名を「Brain Trust(ブレイントラスト)」にされたのですか?
「Brain Trust(ブレイントラスト)」は、造語ではなく、英語で実際に存在する言葉です。政治家や政府が政策の立案や検討を行うための相談役のことを指し、大元はアメリカのルーズベルト大統領がニューディール政策を行った際の諮問機関の呼び名だったそうです。
父はコンサルティング会社も手がけていたのですが、父がその言葉を知ったとき、まさに「経営者の諮問機関」としてコンサルティングを行っていきたいと思ったそうで、もともとはコンサルティング会社のほうに「ブレイントラスト」の名前がついていました。
私が代表を継ぐにあたって、改めて「ブレイントラスト」という言葉が、税理士法人としてやりたいことにふさわしいと感じました。それで、父の考えを受け継ぎ、税理士法人ブレイントラストという社名に決定しました。
ーサービスの特徴や強みについて、教えてください。
私たちの強みは、父の代から大切にしている「クライアントとの距離の近さ」にあると思います。弊所は行動指針もつくっているのですが、その中に「数字を見るな、会社を見ろ」という項目があるんですね。会計士や税理士は企業経営にまつわる数字ばかりに着目しがちなのですが、数字を見ることは当然の仕事であって、それだけではお客様のためにならないと考えています。
クライアントの会社そのものに興味を持ち、資料の中にある数字の背景まで知って、クライアントに今何が起きているのかをきちんと想像できるようになる。これが大切だと思うんです。だから、例えばメーカーを担当することになった場合、私たちは必ず工場や現場の見学をさせてもらいます。現場を知っていれば、数字を見たときに、課題が発生する予兆などにも気づけるようになるからです。
その意味では、弊所での仕事は画一的に行うことができないため、業界の中でも時間や手間のかかるほうかもしれません。しかし大切なのはクライアントの意見を聞き、彼らが望む形を具現化して提案していくこと。社員には、クリエイティビティの高い仕事の仕方を求めています。
ー業務の進め方に特徴はありますか?
業務の進め方については、情報共有を密に行うことに気をつけていますね。税理士法人や会計事務所では、席が隣の人の業務内容を知らないということも多いのですが、弊所ではそのような状況は避けたいと考えています。
チームで生産性を上げるためにも、クライアントで発生した事例や各社員の悩みなどをミーティングで取り上げて、知識共有の機会を積極的に設けるようにしています。
ー働き方については、いかがでしょうか。
働き方については、事務所全体で新しい挑戦をしているところです。実はコロナ以前から、時間と場所を選ばない働き方をしたいと思い、紙ベースでの業務が多い中でもなるべくDXを進めて、在宅勤務ができるよう体制を整えていました。今は交代で出社する形をとっており、在宅勤務をする日は自宅で集中して仕事を進めてもらっています。
残業という意味では、税理士の仕事は知識習得や事例の調査なども含めると、明確に仕事とプライベートの線引きができません。だからこそ、各社員の意思を大切にしたいと考えており、高い目標に向かって頑張りたいという人は残業することも止めませんし、子育てなど家庭の事情で仕事のペースを落としたい人はそれでいいと思っています。ずっと同じ働き方はできません。各社員のライフイベントにあわせて、働き方を柔軟に変えられるようにしています。
ー長濱さんから社員に、いつも伝えていることはありますか?
「感性を磨いてほしい」ということと、「人生における価値の優先順位」についてはよく社員に話していますね。
経営者には、右脳で感覚・直感的に考えた後に、左脳で論理的に考える方が多いように感じています。最近は「アート思考」が重宝されていたり、アートの分野に明るい経営者も多いです。経営者の課題解決に寄り添う私たちは、やはり感性を磨いておく必要があると思います。
そして、仕事と人生は表裏一体だからこそ、「人生における価値の優先順位」も大切だと考えています。体を壊してまで働くのは無意味ですから、「健康に生きる」ことは何より大切にしてほしいですし、仕事に忙殺されて季節を感じられないことも、人間として不自然な生活だと思いますから、「豊かに生きる」ことも大切にしてほしいと思っています。
社員には自分の中できちんと軸を持って、その時々で適切な判断をすることで、人生も仕事も楽しんでもらいたいのです。このような考え方に共感できる方と、ぜひ一緒に働きたいなと思いますね。
ーなるほど。入社してほしい方について、ほかにイメージはありますか?
今、弊所内でも働き方を試行錯誤していたりと、変化することが必要なフェーズだと考えているので、これまでの常識にとらわれずに「積極的にチャレンジできる方」にぜひ来ていただきたいです。働き方も、業務の進め方も、正解はないので一緒になって考えていただける方だとありがたいなと思います。
それこそ、私自身が仕事だけではない生き方に魅力を感じているので、1か月ほど海外に滞在するといった新しい働き方も良いと考えています。ご自身の最大のパフォーマンスは出していただきたいですが、あくまでも人生を楽しむことがベースにあったうえで、仕事も頑張ろうと思える方と一緒に働けたらうれしいです。
その意味では、働き方もクライアントへの提案も、正解の全くない部分に挑戦していくことになりますから、お膳立てがないと動けない方は弊所とミスマッチになる可能性が高いかもしれません。
ー今後の展望について、お聞かせください。
所内では、改めて人生と仕事のバランスを大切に、自由度の高い働き方を今後さらに実現できたらと考えています。クライアントも、前向きに楽しく生きている人と一緒に仕事をしたいと思うでしょう。私たちの取り組みは小さな動きかもしれませんが、社会全体で働き方が変わるきっかけのひとつになればと思います。
自動化で会計業務が無くなるという話もありますが、会計税務は本来、非常にクリエイティブなものだと私たちは考えています。お客様との関係性を深め、その課題を吸い上げて、未来を広げられるような解決策を提案する。そのようなクリエイティビティの高い仕事に挑戦したい方がいらっしゃったら、ぜひ一度お話ししましょう。