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株式交換の法務手続はどのように?公認会計士が解説!

公認会計士 大国光大
株式交換の法務手続はどのように?公認会計士が解説!

企業が組織再編をするための手法として、株式交換というものがあります。株式交換は様々なメリットがありますが、法務手続についてはよくわからないといった感想を持つかもしれません。
そこで、今回は株式交換の法務手続について現役公認会計士が解説します。

株式交換とは?

株式交換の法務手続に移る前に、まず株式交換について解説します。
株式交換とは、簡単に言えばA社とB社があった場合、A社がB社を子会社化する時にB社の株主にA社の株式を渡すことを言います。つまり、B社の株主はB社株式とA社株式を交換してもらうこととなります。

このようにある会社を完全な子会社としたい時に株式交換が利用されます。株式交換は手元にキャッシュが足りない時に自社株を代わりに交付することによって子会社化できるメリットがあります。

株式交換の親会社での法務手続

株式交換の際の親会社での法務手続について解説します。
親会社となる会社では、まず株式交換契約書を作成します。この契約書は自社で作成しますが、弁護士を通じてリーガルチェックを行ってもらう必要があります。また、交換先の子会社にも事前に見てもらい、すり合わせが必要となってきます。

また、取締役会で株式交換契約書の承認を取る必要があります。ここで承認を受けると株式交換契約を子会社となる会社と締結されます。この時に同時に事前開示書類を本店に置いておいて、閲覧請求があった時に見せる必要があります。
この後株主総会の招集通知発送や、債権者保護手続きとして通知や公告を行うこととなります。

株主総会の特別決議で株式交換が承認されると、契約書に記載された日付にて株式交換の効力が発生することとなります。株式交換の効力が発生した後に完全子会社株主へ株式を交付することとなります。
これらが済むと各種登記の申請を行い、事後開示書類を置いておくことに加えて債権者や株主から株式交換の無効の訴えが来るかもしれないことに注意しておくことが必要です。

株式交換の子会社での法務手続

株式交換で子会社となる会社の法務手続については、基本的に親会社と同様の手続となります。

よって、株式交換契約書の検討、取締役会での契約書の承認及び契約の締結、事前開示書類を置くということが事前に必要となります。
また、債権者への通知や公告等も同様に行われ、株主総会後に株式交換の効力が発生することや登記申請等は変わりません。

よって、親子間で株式交換を行う場合は漏れがないようにどちらも同時に進めていくことが考えられるでしょう。また、実質グループ内での株式交換である場合は債権者保護手続きが不要となることがあるため、無駄に保護手続きをすることの無いようにする必要があります。

株式交換の法務手続上の注意点

株式交換では色々な法務手続が存在しますが、そのうち間違えたり忘れたりしやすい手続について紹介します。

①株主総会決議について

株式交換は株主にとって重要なことと考えられるため、株主総会では特別決議が必要となります。特別決議では議決権を持つ株主の過半数以上が出席し、そのうち3分の2以上の株主から承認を得なければなりません。通常の株主総会よりも要件が少し厳しいことになるので注意が必要です。

ただし、完全親会社が完全子会社に渡す対価が純資産の5分の1であるような重要性のない株式交換の時は、簡易株式交換と言って簡単に株式交換ができるようになります。

簡易株式交換では株主総会決議が不要となります。株主がたくさんいる会社で株主総会決議を開こうとするとその準備が大変であることや、出席者も過半数を確保できない可能性があります。株主の議決権が集まらなければいつまで経っても株式交換できずに組織再編の機会を失ってしまう可能性があるため、簡易株式交換は非常にメリットがあると言えます。

②債権者保護について

株式交換によって一定の債権者に不利益が生じるため債権者保護手続きが必要となります。ただし、全債権者に不利益があるわけではなく、完全子会社への対価として株式以外のもの(現金など)を交付する場合や新株予約権付社債を完全親会社が引き継ぐ場合に不利益が生じます。

そのような場合には官報公告と個別通知を行う必要がありますが、十分な審議時間が持てるように株式交換の効力発生日1か月前までに行うこととされています。これを怠ると債権者が聞いていないということで後に株式交換無効の訴えまで起こせるため十分に注意が必要です。

③公正取引委員会への手続

株式交換によって一定規模以上のグループ会社となると、いわゆる独占禁止法に抵触する可能性があります。よって、次のような会社は公正取引委員会に届出をしなければなりません。

・完全親会社企業やグループの国内売上合計額が200億円以上
・株式会社発行会社とその子会社の国内売上合計額が50億円以上
・完全親会社となる企業のグループ企業が持つ議決権保有割合が20%または50%以上となる場合

これらの場合には公正取引委員会に届出をして審査を待たねば株式交換ができません。1か月の審査機関となりますが、審査の進捗によってはもう少し長くなる可能性があるため注意が必要となります。

この記事を書いたライター

公認会計士、税理士。監査法人東海会計社代表社員、税理士法人クレサス代表社員。大学時代に公認会計士旧二次試験に合格後大手監査法人に就職し、27歳で独立開業。国際会計と株式公開支援が専門。セミナーや大学で講師を務めたり書籍の出版も行っている。
カテゴリ:コラム・学び

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