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「振替」と「振込」の違いって?

公認会計士 大国光大
「振替」と「振込」の違いって?

資金を移動させようと思った時によく使われる用語として振替振込とがあります。口座から口座に振り替えるのと口座に振り込むのって同じでしょ、と思う人もいるかもしれません。しかし、これらは異なっているのです。そこで今回は、振替と振込の違いについて現役公認会計士が解説します。

送金とは?

送金とは、お金を直接相手に手渡しするのではなく、他の手段を用いて送ることをさします。ここでは、銀行振込や、現金を専用の封筒に入れて送付する現金書留や、現金を普通為替証書に換えて送付する郵便為替という手段を用いることができます。つまり、振込や振替は、送金を行うための一手段という位置付けになります。

振込とは?

まずは皆さんになじみの深い振込から説明します。
振込というのは、他行や同じ銀行の別支店口座に資金を移動することを言います。他人の口座に資金を移動させることが一般的ですが、同じ人や企業の名義であっても他行や別支店口座に資金を移動する場合は振込となります。
振込の方法としては、現金を窓口に持参するかATMに入れて行います。または、キャッシュカードや通帳・印鑑を用いて行うことになり、手数料がかかることが一般的となります。

振替とは?

一方で振替というのは同じ銀行の同じ支店内の口座で資金を移動することを言います。一般的に、本人名義で別口座にお金を移動させる際に使われる場合が多いです。振込と同じようにATMまたは銀行窓口で行うことができますが、手数料がかからないことが一般的です。

振込と振替で時間差はあるの?

現在、大手金融機関であれば振込も振替も24時間受け付けているところがほとんどです。よって、振込と振替には差が無く、手数料の有無のみ差があるように見えます。

しかし、先ほどお話した通り振替は同じ銀行の同じ支店間での移動となりますのでシステム上すぐに反映されます。
一方で振込は他行に行うこともありますので、金融機関間のシステムが適宜連携していないと振込元の金融機関はすぐに認識していても振込先の金融機関では翌日以降の受付になってしまう可能性があります。

すぐに資金移動をしたいということであれば、手数料の意味も含めて振替をすることになります。一方で、相手先都合で同一の金融機関を選択できない場合は振込となり、万が一送金が遅くなっても良いように大事な資金決済は先方に確認を取ることもあります。

口座振替とは?

振替という言葉の中に、口座振替というものがあります。よく住宅ローンや光熱費の支払の為に勝手に銀行から引き落とされるので皆さんもなじみが深いでしょう。

口座振替はこのように公共料金などにも使われますが、一般企業でも口座振替を用いることがあります。
例えば、介護事業を行っていて住宅の貸し付けを行っている場合、いちいち入居者が振り込みを行うのが面倒であったり、現金で持ってこられると紛失リスクを伴ったりと考えられた際に使われます。また、口座振替を使えば資金不足でなければ毎月引き落としが行われるため不払いのリスクや請求漏れのリスクが軽減されます。

企業側として口座振替を行いたい場合は、入金先の口座を作った後に、その銀行で口座振替サービスを行っている場合は申し込みを行うことで利用できますし、口座振替サービスの提供会社に申し込めばどの銀行口座でも対応してくれます。どちらにするかは基本使用料や1件当たりの口座振替料を聞いて、最も手数料が安くなる会社を選ぶと良いでしょう。また、引き落とし日や振り込み日も業者によって異なるので、自社の資金繰り等に合わせて選ぶことをお勧めします。

口座振替を行った時の会計処理

口座振替を行った場合、手数料を差し引かれて入金されます。単純に手数料を差し引かれた部分を売上高として入力すれば簡単なのですが、原則としてその処理は認められません。

なぜならば、実際の売上高は手数料が差し引かれる前の部分であり、手数料部分を差し引いて売上計上してしまうと売上が過少となってしまうからです。手数料差引後の損益は確かに同じになりますが、消費税について簡易課税を採用している会社になると消費税の計算が異なってしまいます。また、本則課税を選択している会社でも課税売上割合が変わってしまうため注意が必要です。
口座振替手数料は販売費及び一般管理費の支払手数料や雑費として処理する会社が多いでしょう

振替・振込の手数料を節約するためには?

先にお話した通り、振替には基本的に手数料がかからないため、どちらにするか迷った場合は可能な限り振替で対応するほうが手数料は節約できるでしょう
ではその他に振替・振込の手数料を節約する方法はあるのでしょうか。

まず基本的には同じ金融機関同士での振込は手数料が若干安いことが多いです。よって、仕入先が複数口座を持っている場合はできるだけ自社が取引している金融機関から振り込むと良いでしょう。また、仕入先が固定されていているにも関わらず同じ金融機関の口座がない場合はこれを機に口座を作成することも手でしょう。

また、従業員の給与口座等も原則統一できるように入社時に説明すると良いでしょう。強制は難しくとも2行くらいの選択肢があればある程度は合わせてくれることでしょう。

インターネットバンキングの活用というのもあります。銀行によっては窓口やATMで振込を行うよりもインターネットバンキングのほうが手数料が安い場合がありますし、便利です。1件当たりの振り込みは僅少でも、毎月何十件もまとまれば結構な金額となるため、一度見直しをすることをお勧めします。

ゆうちょ銀行を利用するときに気をつけるべきポイント

ここまで、手渡し以外の送金手段である振込と振替について解説してきましたが、ゆうちょ銀行を利用する際に気をつけて欲しいポイントがあります。
ゆうちょ銀行はその他の銀行とは振込をさす言葉が異なるのです。詳しくは、以下の図のようになります。

ゆうちょ銀行を利用するときに気をつけるべきポイント

他行からゆうちょ銀行を利用する際や、普段ゆうちょ銀行を利用する方が他行を利用する際は、一度確認しておくのがおすすめです。

まとめ

振込と振替は、名前が似ていてややこしいですが、日常的に使う手段だからこそそれぞれの違いを抑えておきたいところです。確認して、頭に入れておきましょう。
こちらでは、振込や振替をインターネットで完結させられるインターネットバンキングを含む「ファームバンキング」について解説しています。合わせてお読みください。

この記事を書いたライター

公認会計士、税理士。監査法人東海会計社代表社員、税理士法人クレサス代表社員。大学時代に公認会計士旧二次試験に合格後大手監査法人に就職し、27歳で独立開業。国際会計と株式公開支援が専門。セミナーや大学で講師を務めたり書籍の出版も行っている。
カテゴリ:コラム・学び

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