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仕事で出したい価値を考え続けた。2度の迷いを経て、Gunosy執行役員 岩瀬 辰幸氏がたどり着いた「本当にやりたかった仕事」とは

HUPRO 編集部
仕事で出したい価値を考え続けた。2度の迷いを経て、Gunosy執行役員 岩瀬 辰幸氏がたどり着いた「本当にやりたかった仕事」とは

慶應義塾大学に在学中、リーマンショックを経験したことから「自立して生きられる力を身につけたい」と公認会計士の資格を取得した岩瀬 辰幸氏。三菱UFJ銀行からデロイトトーマツコンサルティング合同会社、PwCを経て、現在は株式会社Gunosy(以下、Gunosy)で執行役員としてコーポレート部門を統括しながら、組織作りに取り組んでいます。

今回は岩瀬氏が「組織作り」という本当にやりたいと思えた仕事にたどり着くまでの苦悩や思考を中心に、HUPRO編集部がお話を伺いました。

【略歴】

2010年 公認会計士試験合格
2012年 慶應義塾大学商学部卒業
2012年 株式会社三菱東京UFJ銀行(現:株式会社三菱UFJ銀行)入行
2014年 デロイトトーマツコンサルティング合同会社 入社
2016年 PwCあらた有限責任監査法人 入社
2019年 株式会社Gunosy 入社

【キャリアグラフ】

社会で自立して生きる力を得るために、資格取得を目指す

―まず、大学在学中に公認会計士の資格を取った理由を教えてください。

在学中に公認会計士の資格を取得したのは、「自立して生きていく力」を身につけたかったからです。

私は大学に入学した直後にリーマンショックを経験した世代なんですが、景気が悪くなる中で就職活動に苦戦する先輩たちの様子を見て、実力をつけるためにも、しっかり勉強しなければいけないと感じるようになりました。

商学部にいて会計や財務の領域にはもともと興味があったこと、会計の世界自体も自分の性に合っていると思ったことから、公認会計士を取得することに決めました。

―岩瀬さんが資格を取られた2010年は、まだ大学在学中に公認会計士を受験する人が少ない時代でした。大学と資格試験の勉強は、どのように両立されたのでしょうか?

一般的ですが、大学と公認会計士の専門学校に通い、ダブルスクールをしていました。

大学の勉強も非常に役に立ち、経営学のゼミで論文を書いたり、会計・財務分野で興味のある授業を受けることで、専門学校で学ぶ内容とうまく循環していたように思います。興味のある分野の専門資格を選んでいたので、学ぶこと自体は苦痛ではなく、自然と取り組んでいました。

また、モチベーションの維持という意味では、一緒に勉強する仲間がいたことも大きかったです。ゼミの仲間などと一緒に取り組むことで、途中で挫折することなく勉強を進められました。

財務・会計の基礎力をつけるため、大手銀行から始めたキャリア

―大学を卒業後、最初の就職先として三菱UFJ銀行を選ばれたのはなぜですか?

会計監査に携わる前に、財務・会計業務を理解しておきたいと思ったからです。公認会計士試験の合格者のうち、多くの方は監査法人に就職して会計監査業務を行いますが、学生の私には監査業務がピンと来なかったんです。

当時の三菱UFJ銀行はコース別採用を行っており、戦略財務会計コースという銀行の主計業務に特化したコースがありました。金融業界にも興味があったので、ここなら金融と財務・会計の両方に携われると思い、入行を決めました。

三菱UFJ銀行では社会人としての基礎や経理実務の基本的な部分が鍛えられたように思います。特に最初に配属となった支店では、中小企業も含めたさまざまな企業の財務諸表をチェックして格付けを行う業務にも携わりました。監査法人で扱う企業は大企業がほとんどなので、そういった未上場企業の財務諸表に数多く触れられたのは、今振り返るととても貴重な経験でした。

―三菱UFJ銀行に2年勤めた後、デロイトトーマツコンサルティング合同会社に転職した理由を教えてください。

もう少し早く自分の実力を試してみたいと思ったことが、転職理由です。

三菱UFJ銀行はやはり素晴らしい会社で、仕事環境としても非常に恵まれていたと思います。ただ、次第に私自身がキャリア形成で求めるスピード感と、会社のスピードにギャップを感じるようになりました。

また、バックオフィスの業務だったこともあり、1度はフロントでの業務やクライアントワークにも携わってみたいと思ったことも、転職を決めた理由の1つです。

優秀な人が集まる組織で、初めて感じた挫折

―デロイトトーマツコンサルティング合同会社では、どのような仕事をしていましたか?

採用された当時は第2新卒の扱いだったため、どこのファンクションにも所属せずにプロジェクトベースでアサインされるような「Pool Unit」の中にいました。

そこからPre M&A Unitという、M&Aの上流の戦略策定から実際のディール開始までをサポートするファンクションにアサインされ、伝統ある企業の事業戦略の立案支援を行っていました。

―転職直後、仕事への満足度が下がっているのはなぜですか?

私が配属されたチームには私より優秀な方しかおらず、自分がどのように価値を出してチームに貢献すればいいのか分からなくなってしまったからです。

当時は若かったこととかなり勉強してきた自負もあったので、自分の実力を発揮していろいろな仕事を成し遂げたいと思っていました。

しかし、社内でも特に優秀な人が集まるチームに所属していたこともあり、何をやっても先輩や上司に勝てるポイントが見つからなかったんです。お客様に提出する資料を作成しても、先輩や上司が全く別の形に直して、お客様に提出していました。お客様が私たちのどういう部分に期待をかけてくれているのか、理解ができませんでした。

そのような経験を重ねる中で、入社して3か月後には自分の仕事のできなさに落ち込み、何をしてチームに貢献すべきなのかが分からなくなっていました。

―なるほど。そのような状態から、どのように価値の出し方を見つけ、仕事への満足度を回復させていったのでしょうか?

直属の上司であるシニアマネージャーに正直に相談しました。

その時に教えていただいたことは今でも覚えているのですが、「価値の出し方のパターンを覚えて身につけなさい」と言われたんです。価値にはいろいろな出し方があるから、その引き出しを身につけていくのが大切だということを学びました。

最終的な成果を見たら、やはり経験・知識の差で先輩や上司にかないません。でも、仕事の価値はさまざまな工程を経てできあがっているものですから、自分が比較的価値を出しやすいポイントもあるはずです。価値を出せそうな場所を探して、まずはそこに大きくコミットしていく。そうすることで、自分自身もより良いアウトプットが出せますし、それが先輩や上司の負担を減らすことにもつながり、結果としてチーム全体のパフォーマンスが向上していきます。

仕事の全体像を徹底的に観察して、何が価値なのかを見極め、自分が貢献できそうなポイントに最大限コミットしていく。この方法を覚えてから飛躍的に成長できるようになり、次第に任される仕事が増えたり、先輩のチェックがなくても進められる仕事が増えたりして、かなり良い循環をつくれるようになりました。

その結果、プロジェクトのリードまで任せてもらえるようになり、より上流の部分に携われるようになっていました。

―より良い仕事の取り組み方を身につけられたのですね。

そうですね。あとは経理という仕事をやっていたことから最初は「ミスをしない、間違ったこと言わない」ということに意識を強く向けていたことが、うまく価値を発揮できない原因のひとつでもありました。あるとき、それを上司に相談したときに、「この仕事は最初は間違っても良いから仮説検証を積み上げて解の質を上げていくことが重要」と言われ、自分の中で発想の転換ができました。仮説を検証して、最終的に質の高い答えにたどり着ければ良いということが理解できた時、仕事への姿勢も大きく変わったように思います。

2度の迷いから見えてきた「本当にやりたい仕事」とは

―デロイトトーマツからさらにPwCへと転職されていますが、きっかけはありますか?

いろいろと任せてもらえる仕事が増える中で、コンサルタントの仕事は生半可な姿勢ではできないと実感したことが、転職のきっかけです。

やはり、その領域での経験豊富なクライアントに求められる成果を出すには、プライベートの時間も自己研鑽が必要です。すべてのリソースを仕事に割いていく覚悟がなければ、自分のパフォーマンスはクライアントの期待値に到底届きません。

コンサルタントとしてこのまま仕事を続けて、マネージャーやパートナーとしてキャリアを築いていくことが自分の中で正解なのかというと、その判断にはあまり自信が持てませんでした。

仕事自体はとても面白く、充実感があって、学ぶことも多かったのですが、この迷いを持ったまま仕事を続けていくと、いずれパフォーマンスが落ちる時期が来ると思いました。それで、一度これからの方向性を考え直して「本当にやりたいこと」を探すために、転職することにしました。

―転職先にPwCを選んだ理由を教えてください。

当時はものすごくやりたいことがあるわけではなかったので、公認会計士の資格を活かして、監査法人に転職する道を選びました。

デロイトトーマツでの経験から、深い専門性を身につける必要性を感じていたのもPwCへの転職を決めた大きな理由です。このタイミングで1度しっかりと「会計監査」という専門性を身につけておけば、この先どのようなキャリアを描くにしても、間違いがないはずだと考えていました。

―PwCでも満足度が落ち込む時期がありますが、これはどのような理由があったのでしょうか?

自分のやりたいことが見えてきたために、PwCでの仕事内容とミスマッチが起きてしまったのが、この時期の満足度低下の理由です。

デロイト・PwCと経験を積む中で、自分がやりたいことがプロジェクト型の仕事ではないなということに気づいてきました。プロジェクト型の仕事はその場限りのメンバーでチームを組むことがほとんどですが、私の場合はパフォーマンスが向上するようにルールや仕組みを作っていくような組織作りの方が面白いと感じるようになったんです。

監査法人のフロントでは監査意見の形成に取り組むことがどうしても重要になるので、組織作りに割ける時間は全体の中でも少なくならざるを得ません。やりたいことに時間を割きたいのなら、コンサルティング会社も監査法人もキャリア形成の場として異なるのかもしれないと思い、転職することに決めました。

Gunosyで念願の組織作りに携わる。会社のチャレンジを支える仕事がやりがいに

―現在のGunosyに入社した理由を教えてください。

スピード感のある組織の中で、裁量を持ちながら組織作りに携わりたいと思い、Gunosyに入社しました。

過去2回の転職でようやく見えてきた「事業会社の組織作りに携わりたい」という想いを持ちながら転職活動をしていました。いくつかの企業に応募しましたが、最終的にGunosyに決めたのは、会社にいるメンバーとカルチャーが自分にフィットしていると感じたからです。

Gunosyには誠実で優秀なメンバーがたくさんいます。Gunosyのファクトとロジックを重視する文化は特に気に入っており、若手であってもファクトとロジックに基づいた発言や提案をすれば、それが採用されて評価されます。私自身が若手の時から、自分なりにファクトとロジックを大切にしてきたので、価値観がとてもフィットしていると思いました。

―Gunosyでは、どのような仕事に携わられているのですか?

コーポレート本部の執行役員として、コーポレート目線での経営に関する意思決定や財務会計業務の統括、IRの実務を担っています。また、総務や情報システムの部門長も兼任しているため、もともとやりたいと思っていた組織全体をどう作り上げていくかという点にもコミットしていますね。

―現在の仕事のおもしろさは、どういった部分にありますか?

やはり会社がどんどん新しいことにチャレンジするフェーズにいるので、そのチャレンジを支える仕事ができるのは、おもしろさとやりがいにつながっていると思います。

Gunosyは「グノシー」アプリに代表されるメディア事業含め、今後はさらに攻めの投資も強く意識して事業を展開していきます。また、直近だと投資事業の投資先からユニコーン企業が1社生まれました。今後、会社としてより一層大きなステージでのチャレンジができるようになっていくと思いますが、そこでしっかりとリスクをとっていくには、やはりバックオフィスが整っていることが必要不可欠です。

Gunosyでは経営層も含めて、社内全体でのバックオフィス部門へのリスペクトが強くあります。また、会社のカルチャーとして非常にフラットな組織ですから、自由に意見することもできます。バックオフィスだから蚊帳の外ということはなく、会社で行うチャレンジのメンバーとして積極的に関わっていけるのは、Gunosyならではのやりがいではないかと思います。

―最後に、読者へのメッセージをお願いいたします。

この数年でバックオフィス部門も専門性が重視され始めており、深い専門性を持つ方はやはり貴重な存在で、価値が高いと感じています。

IT技術が日々進歩し、世の中の動きがどんどん加速していく中で、会社としてリスクを取って挑戦すべきかどうかを判断できるのは技術に対する理解の深さだけでなく、バックオフィス領域の専門性の深さもとても大切です。

バックオフィス部門にいるとどうしても環境を変えることに及び腰になってしまいやすいのですが、深い専門性を持つ人材はスタートアップから大企業までどこでも重宝される存在ですので、キャリア形成においても、積極的にリスクを取っていっても、それに見合うリターンが得られる環境になってきていると思っています。

もし興味のある分野やサービス、何かやりたいことがあるのなら、ぜひ積極的にチャレンジしていただきたいです。それがご自身のキャリアのためになりますし、ひいては日本の未来のためにもつながると考えています。

―本日はお話を聞かせていただき、ありがとうございました。

今回お話を伺った岩瀬 辰幸氏が執行役員を務める株式会社Gunosyのホームページはこちら

この記事を書いたライター

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