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大手企業からベンチャー上場まで経験のラクスル株式会社Chief Administrative Officer西田真之介が語る「存在価値を高めていくキャリアチェンジの考え方」

HUPRO 編集部
大手企業からベンチャー上場まで経験のラクスル株式会社Chief Administrative Officer西田真之介が語る「存在価値を高めていくキャリアチェンジの考え方」

“インパクトの大きさ”を求め、森ビル株式会社・財務経理本部経理部へ。株式会社DeNAには経理にとどまらず仕事の幅を広げるために飛び込みました。これまでの経験と知識をダイレクトに活かすためにラクスル株式会社へ入社し、組織をイチから作りあげたのち、IPOプロジェクトを成功させた西田真之介氏。経理の仕事の魅力や、上場のプロセス、そして西田氏の今後のビジョンについてHUPRO編集部がお話を伺いました。

【略歴】

2008年 森ビル株式会社入社 財務経理本部経理部
2012年 株式会社ディー・エヌ・エー入社 経営企画本部経理部
2014年 ラクスル株式会社入社
2022年 ラクスル株式会社 執行役員Chief Administrative Officer

世の中に与えるインパクトの大きさにやりがいを感じた森ビル時代

―将来経理の仕事に就きたいと考え始めたのはいつ頃ですか?
高校三年生の夏に野球部を引退するまでは野球三昧で野球に没頭しており、部活引退後から勉強を始めて大学に進学し、大学時代は財務ファイナンス系の勉強をしていました。

就職活動では「物を売る」という営業よりも、何か大きく物事を動かしたいという想いがあったので、財務やコーポレート系の仕事の方がフィットすると思い、活動をしていました。

―森ビル入社当時は、どんな仕事がしたかったですか?
“インパクトの大きさ”を会社に入る時に大事にしていて、例えば六本木ヒルズの企画、開発などは世の中に対するインパクトが大きいなと思っていましたし、会社のアクションが世の中にアピールする、その何かに携われればいいなと考えていました。

経理では、ボールペンを100円で買う処理から、六本木の土地を100億で買う仕事まで何でもやっていたのですが、その中で「東京の地図が変わっていく」というのを間近で感じられたことはとても楽しかったです。

森ビルで一番最後に携わった虎ノ門ヒルズを作るプロジェクトは、森ビル単独ではなく東京都と一緒に進めたプロジェクトで、進行もかなり早く、開発に関わる土地を買って何十年で回収していくのかなど、財務と経理が連動する森ビルならではの大きい仕事を経験できたと思います。完成前に退社してしまったのですが、その発射台を作ってスタートを切り、プロジェクトが完全に軌道に乗ったことへの満足度はかなり高いものがありました。

経理にとどまらず、仕事の幅を広げたDeNA時代

―DeNAへの転職の経緯を教えてください。
森ビルの仕事はとても楽しく勉強にもなっていました。一方で将来、金融に近い仕事のプロになっていくかどうかを迷っている時期でもありました。次のキャリアを考えるにあたり、森ビルの仕事から一番遠そうな領域で、且つ、成長率が高く面白そうな会社へ移ろうと思い、DeNAへの転職を決めました。

DeNAでは狙い撃ちで何かをやりたいというよりは、会計という経験を中心にしてそれをどう広げていくか、どのような世界観があるのか、チャレンジしてみたいという思いを胸に入社しました。

実際には、森ビルにいた時のように、会計に関する専門知識を使う仕事も多かったのですが、プラスアルファの仕事として、新しい会社の設立/買収プロジェクトも結構多く、コーポレート全般の仕事をする機会も増えてきました。全社の経営企画として、コーポレートアクションに入っていくような関わり方もできたので、仕事の幅は確実に広がりました。

当時の仕事の専門性を含めて、会社の対応や判断に対する自分の提案が、本部長や社長の間で議論され、それがそのまま会社のアクションに繋がったり、IRやPR等で社外に情報として出ていくことで、自分自身が影響を与えている仕事が増えたという実感がありました。

これまでの知識や経験がダイレクトに活かせる場所へ…ベンチャー企業ラクスルでの大きなチャレンジ

―ラクスルへの転職を意識し始めた要因は何ですか?
DeNA時代に数か月一緒に仕事をしていた永見(現ラクスルCFO)が、先にラクスルに移ったことが一つの要因です。永見が退社した翌週に「久しぶりに会おう」と言われ、全然久しぶりではないのですが(笑) 、当時ラクスルの全く体制が整っていなくて、誰か連れて来なければという永見自身の危機感から声をかけたのだと思います。

また、DeNAでは楽しくかつ重要な役割を任せていただいていたのですが、かなり大きな会社だったこともあり、自分が経験した仕事や知識をダイレクトに使っていける、もう一段サイズの小さい会社で挑戦してみたいという気持ちもありました。

―森ビルやDeNAでの経験が、現在のラクスルでの仕事に活かされていると感じる部分はどんなところですか?
ある特定の産業やフェーズにいた経験よりも、全くフェーズが違う森ビルとDeNAで仕事をしたことは、非常に良かったと思います。

森ビルの時に使っていた財務側に近い知識経験が活用できることもありますし、DeNAで経験したIFRS初度適用や複数サービスの提供者としての検討事項等が活用できることもあり、2社での経験で引き出しが沢山できたことはラクスルに入ってからとても役立ちました。具体的には、ラクスルで印刷機械を買って設置する場合に、どのような会計処理や税金の認識の仕方をするのがベストかを考える上では森ビルの経験が活きましたし、ラクスルの販売サイドは、DeNAでやっていたEコマースの経験、会計処理や規約の考え方、契約の仕方などが使えました。2社での経験の組み合わせが上手く今の仕事に活用できていると思います。

―体制があまり整っていない中で、イチから基盤を作り上げていくのは大変だったのではないですか?
DeNAの時は経理だけでも30人程いたので、当時のラクスルの全社員と同じ規模でした(笑)
DeNA自体は大きい会社でしたが、会社(拠点)の立ち上げや小さい会社の買収等の経験を通して、全く整っていない状態への耐性はありました。森ビルやDeNAで、出来上がった仕組みやあるべき姿も見てきましたので、そこへ向かってやっていけばいいと思っていました。「ここは優先度を下げ、反対にこっちは最初からやり切ろう」というように、出来上がりのイメージを持ちながら濃淡をつけてやっていくことができて、ストレスや不安はそこまで大きくなかったです。

ラクスルにはIPOのプロジェクトリーダーとして入社し、森ビルとDeNAで得た知識や経験を使って、IPOの為に必要なことを何でもやり、会社をガイドしていきたいという思いでした。スタートアップの会社の初期段階には、難しくはないものの、多様な問題がゴロゴロと転がっていて、それをどう解決していくか道筋をつける楽しさがあります。一方でより高度な仕事をしたいとなると、その問題が負担になってしまうところもあって、楽しさと負担の両面性があると思います。

―上場に向けて、色々なことを整えていくモチベーションはどこにありましたか?
ラクスルの「仕組みを変えれば世界はもっと良くなる」このビジョンが面白いと思って入社したという経緯もあり、事業で売上を作ることはできませんが、会社の基盤を作ることで成長に繋げることをやり切る、そのためにできることは何かという考え方でやっていました。

事業としての将来像をかなり早い段階で議論しながら、会計的にこうであればこれが実現できる、法律的にこう対応すれば上手くいくというように、事業と連動して動けた事で成長スピードを加速させられたのかなと思います。

森ビルもDeNAもある程度仕組みが出来上がっていて、それを改善していく役割だったので、逆にゼロの状態からチャレンジできる機会をいただけたこと自体が面白いと、前向きな気持ちでした。ゼロから仕組み作りをする中で、自分で判断して進めていく要素が沢山あり、それが面白さやモチベーションに繋がっていたと思います。

―西田さんが変えられた”ラクスルの仕組み”について、具体的に教えてください。
会計、経費精算、稟議/ワークフロー、勤怠、給与計算のシステム総入れ替えです。2017年当時はまだ選択肢も多くなかった中で、freee(クラウド会計ソフト)を中心に業務プロセス自体の全見直しを行い、業務の効率化とコストの最適化を実施しました。上場後に変えようとすると更に負荷がかかりますし、当然上場審査の期間には行えないので、タイミングを見てここでやり切ったことで、コストを圧縮することができました。

この判断ができたのは、これまでの積み重ねと、最後は胆力です。100点満点のプランを作って、結局70点の仕上がりにするより、80点のプランで80点の成果になった方がいいという考えを持ってやっています。目標に対して高い成果に繋げるための実行力や、リスクを飲み込む事も含めて、決めたら愚直にやり切る姿勢が大切だと思います。また、「頑張って」いても、結果として何も変わっていなければ、自分がいる意味がありません。存在意義を示すためには「やり切った成果を出すしかない」そういう考え方で仕事をしていました。

―上場を目指す過程で、つらかったことはありますか?
積み上げてやり切ったものをゼロの状態に戻さなくてはならないという経験は、非常につらかったです。海外進出の話が急に上がり対応していたものの、結果として数年後損失処理しなければならなくなったり、また、上場に向けて監査法人と合意して進めていたが、独立性の問題が生じて監査法人の変更(もしくは監査役の交代)が必要になったり…そういったものが重なったことがありました。

入社してから上場までの4年間こういった過程を乗り越えて、入社前に定めた目標がしっかりと上場という形で成果に繋がった事は、感慨深いものがありました。また、上場までの過程で事業が確実に伸びている中、その事業をサポートする形で管理部門も強くなっているという実感が確かにあり、そういう部分でも非常に達成感を感じることができました。

―上場という目標を実現された今、次の目標はありますか?
逆に言うと上場はゴールではなくむしろスタート地点だと思っています。今は産業の柱をたくさん立てている途中で、いろいろな仲間を見つけてくる、取引先を作る、顧客を作るなどまだまだやる事はたくさんあります。会社のアクションの中の一歩として、マザーズの上場なり東証一部への鞍替えがあったと考えています。

よく「戦略と実行」と言ったりしますが、私はその間に「実現させる人」というのがいると思っていて、経営管理や経営企画も「物事を実現させる組織」でありたいと思っています。

経営陣の「こうなりたい」という思いに、こういう道なら実現できる、過去の実例としてはないけれど、これだったら道を作れるかもしれないという提案をして一緒に実現させていくことが一番大きな役割でもあり魅力でもあります。

―最後に転職を考えている方にメッセージやアドバイスをお願いします。
いろいろな会社や事業での経験は、たとえ全く違う業界に行っても必ず活きてくると思っています。何かにチャレンジしたい気持ちがあれば、ぜひチャレンジしてみることをおすすめします。

自分自身が会計に軸足を置きながら他の領域でもチャレンジして会社の成長に貢献したいと常に思っているので、会社の成長と共に自分自身も成長していくというスタンスを持つ人と一緒に働きたいと思っています。
ラクスルには、色々な産業・事業があるので、様々なチャレンジをしていく楽しみがあります。転職活動の際には、ラクスルもぜひ見ていただけるとありがたいです!

―今回は貴重なお話をありがとうございました。
今回お話を伺った西田氏がCAOを務める株式会社ラクスルのHPはこちら

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この記事を書いたライター

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