士業・管理部門のキャリアコラムが集う場所|HUPRO MAGAZINE
士業・管理部門のキャリアコラムが集う場所

カテゴリ

「スタートは人を信じることから。」Repro株式会社 管理部長 高橋聖羅氏のキャリアと管理部門のビジョン

HUPRO 編集部
「スタートは人を信じることから。」Repro株式会社 管理部長 高橋聖羅氏のキャリアと管理部門のビジョン

【略歴】

2007年11月 あずさ監査法人(現有限責任あずさ監査法人) 入所
2015年12月 日本マクドナルド株式会社 入社
2018年6月 株式会社デイトナインターナショナル 入社
2019年7月 Repro株式会社 入社

【キャリアグラフ】

1.公認会計士を目指したきっかけ、あずさ監査法人入所

―では、まず公認会計士を目指されたきっかけを教えてください。

端的に言うと、お金持ちになりたかったからです。私は明治大学の付属高校に通っていて、高校三年生の秋にOBの話を聞くという機会がありました。そのうちの一人が公認会計士の方で、在校生に向かって「公認会計士になればお金持ちになれる」といった内容の話しをしていたんですね。当時僕は公認会計士のことを何も知らなかったので、そのOBの話を真に受けて「お金持ちになれる公認会計士を目指そう!」と思ったことがきっかけになります。

―大学を卒業した年に会計士試験に合格されていますが、当時の勉強するモチベーションは何でしたか。

お金持ちになりたいという気持ちが強かったのですが、一回目に受けた試験は落ちてしまいました。会計士の学校に通うのもお金がかかるし、もう諦めようかなという考えがよぎりましたが、まだやり切っていないという想いもありましたし、当時お付き合いしていた方が公認会計士の短答式試験に合格して悔しかったこともあり、もう1度だけ挑戦させてほしいと家族にお願いをしました。また、難関な会計士試験を僕なんかが合格しないだろうと思っていた人達を見返したいという気持ちも特に強かったです。

―二回目の受験は「見返してやりたい!」という一心で努力されたのですね。

いま振り返ると、見返したいという気持ちが一番大きなモチベーションでしたね。また、二回目はこれでだめなら仕方がないと思うくらい自分を追い込んだので、やり切った感は強かったです。

―そして見事公認会計士試験に合格されて、2007年11月にあずさ監査法人に入所されたのですね。当時、会計士として働く実感はありましたか。

会計士として働く実感はありませんでした。仕事が楽しいというよりは、稼いだお金で好きなものを買ったり、毎晩飲み歩いたりすることが楽しかったです。仕事に対して真剣に向き合う気持ちや、これからどうなりたいかなどの将来は全然考えていませんでした。

2.先輩からの一言で現実に直面、新たな環境で二人の仕事の師との出会い

―監査法人入社時はモチベーションが上昇していたものの、その後に急降下していますね。この「仕事ができない事実を突きつけられる出来事」とはどういったことがあったのでしょうか。

入社して二年目くらいに大きなクライアントを担当するメンバーの一人として監査業務に励んでいた頃でした。仕事に真剣に向き合わず、期待されたアウトプットを出せていない自分に対して、先輩から「君は仕事ができていない、このままだと必要なくなってしまうよ」と現実を叩きつけられたことがありました。

表面上では上手くやっていたし、その先輩からもありがとうとも言われていたのに、実際の気持ちは真逆であったことに動揺し、自分はダメな人間なんだ、仕事ができないやつなんだと負の感情が自分を支配していきました。

―信頼している先輩からの一言が、当時の高橋さんに刺さったのですね。そこから這い上がろうという気持ちは起きましたか。

その出来事があってからはどんどん落ち込んでしまいました。先輩からまさかそんなことを言われるとは思っていませんでしたし、どうしたらいいか分からなかったのだと思います。その先輩を含む監査チーム内でのコミュニケーションやクライアントからの評価が怖くなってしまい、逃げたいと思っていました。もちろん、日に日に先輩との関係も気まずくなっていました。
そんな時、別のクライアントを担当するチームに異動する機会をいただきました。心機一転して自分を取り戻すきっかけだと思い、私はこの機会に飛び込むことを決めました。今では、私のことを思って異動の機会を与えてくれた監査チームの優しさに感謝しかありません。

―新しいチームへ異動したことで、モチベーションが復活していますね。ここで出会った「二人の仕事の師」とはどのような関係性でしたか。

別のチームに異動した最初の四半期決算で私の監査調書を見てもらいました。チーム責任者から「検討も足りていないし、これだと会計処理が適切かの判断がつかない調書になっている。これだとアウトプットとしては全然ダメだよ」と言われました。そのチームには同期が一人いて、その同期の監査調書を見せてもらったのですが、出来が全く違いました。同じスタートラインから走り出したのに、どうしてここまで差がついてしまったのか、初めて自分が仕事をできていなかったことを実感しました。そして、前のチームで先輩に言われたことについても受け入れることができました。
新しいチームの現場責任者とマネージャーは、そんな私に対して、0から仕事の指導をしてくれました。私の監査調書には2人からの無数のレビューポイントが付けられ、そのたびに挫けそうになりそうな私を励ましてくれました。これが1年間以上続きました。私自身も2人にかけていただいた分の恩返しをしなければならない、そのためには成長をしなければならないという思いが芽生え、仕事に真剣に向き合い、徐々に実力も伸びて行くことができたと思います。仕事ができない私を認め、見捨てず、辛抱強く指導してくれた2人は本当に僕にとって、仕事の師です。感謝しかありません。

―お二人の面倒見の良さに応えようとする気持ちが、高橋さんの仕事に対するモチベーションとなったのですね。周りに認められ、少し早い昇進となったのもお二人の存在がありますか。

そうですね、二人の存在によりしっかりと仕事に向き合えたおかげで、周囲にも認められる結果がついてきました。前のクライアントチームの中では私の評価がダントツで最下位だったと思いますが、チームが変わり、適切な指導を受け、自分自身もそれに食らいつけたことで、トップ圏内まで評価を上げることができました。昇進だけでなく、次期現場責任者として推薦もしていただいたことで、自信を取り戻すこともできました。もし、2人の師に出会っていなければ、仕事のできない自分を認めることができず、努力をすることもなく、今の人生も歩むことできていなかったと言い切れます。

―高橋さんにとってお二人の存在は本当に大きいものなのですね。

はい。もう一つ印象的なエピソードがあります。私が監査法人を退所し、事業会社に転職することを報告をするためにマネージャーと食事に行きました。その時に、なぜ仕事のできなかった私を、次期現場責任者として推薦していただけたのかを聞きました。マネージャーは「あの時、監査チームのパートナーや事業部の上層部のほぼ全員が反対しているような状況であったけど、あなたならできると私は思ったから。そして、もし、うまくできなかった時の責任は私がとります、と言って承認してもらった」と答えてくれました。

私はそのようなことがあったとは知らなかったので、感極まったのと同時に、こういうマネージャーになりたいと心から強く思いました。監査法人退所後、事業会社では、マネージャや部長として、メンバーを導いていく立場になりましたが、私のマネジメントスタイルは、2人から受けたマネジメントの影響を色濃く反映していると思います。

―素晴らしいエピソードですね。二人の師匠のおかげで高橋さんは自信を取り戻し、昇進など順調に進んでいたと思うのですが、なぜここで「自分を事業会社で試す機会」が生まれたのでしょうか。

監査法人の職務はスタッフ、シニア、マネージャーと上がっていくのですが、シニアを大体4年ほど経験するとマネージャーになることができます。当時、私はちょうどそのタイミングに差し掛かっていました。ただ、8年間ずっと監査業務に携わってきたので、監査される側の気持ちを知りたいという思いが芽生えていたので、マネージャーに相談しました。すると、半年間程度異動をして監査ではなく、会計のアドバイザリーに携わってみたらどうか、と勧めていただき、その機会を頂くことができました。

それから部署を移って、携わらせていただいた案件の一つがマクドナルドの決算業務支援でした。当時のマクドナルドは、鶏肉偽装問題やプラスチックの異物混入などで客離れが加速し、業績は悪化の一途をたどっていました。また、会社全体が信頼回復のために必要なアクションに奔走しており、また、内部的に様々な取り組みをしている最中であり、なかなか決算に時間が割けないことから支援が必要になったとのことでした。
数か月ほどサポートしているうちに、マクドナルドの経理部長からこのまま一緒に働かないかと誘っていただきました。最初はお断りしていましたが、日が経つに連れて、自分であればマクドナルドのお役に立てるのではないかという思いが強くなっていきました。この思いを監査法人のマネージャーとも相談し、最終的に転職をすることを決めました。

3.マクドナルドへ転職、感じた事業会社と監査法人の違い

―2015年12月に日本マクドナルド株式会社に入社されていますが、監査法人としてサポートしていた時と、転職して会社の中にいる時では、何か見え方は違いましたか。

数字を作る側と見る側という点で、全く違いました。監査法人で働いていた頃は、企業が作成した数値が正しいかどうかを検証するために、資料の依頼や分析結果の質問が中心となっていました。しかし、事業会社では企業の実態を数字として表現することが求められます。そのためには、関係する部署との相互のコミュニケーションが必要でした。マクドナルドの経理部長からも、「あなたは会計士としてではなく、マクドナルドの経理として動きなさい」と言われたことを今でも思い出します。マインドチェンジをすることが最初の壁でした。

―8年間勤められていた監査法人から転職し、初めての事業会社へ入社した時に「自分はこうなりたい」といったビジョンはありましたか。

自分はこうなりたいという思いとは異なるかもしれませんが、事業会社側の気持ちを知りたいという思いはありました。監査法人の仕事を大まかに言えば、クライアントが作成した財務諸表を批判的な観点から監査し、適正な財務諸表であることを意見表明することで、市場自体の信頼性を担保し、また投資家が安心して投資意思決定できるようにすることです。ただ、クライアントからすれば、自分たちが作成した財務諸表が批判的に監査されるわけですから、なかなか受け入れられない部分もあったと思いますし、感謝される機会は多くはありませんでした。
自分のビジネスマンとしてのキャリアを考えたときに、監査する側だけの気持ちだけでは不十分であろうとは思っていたので、監査される側の事業会社に行く機会は自分の中では必要だと感じていました。マクドナルドへの転職はその思いが叶えられるとともに、もともと決算支援業務を通じて自分が力になれることが分かっていたので、最初の事業会社としては最適だったと思います。

―マクドナルドに転職されて感じた事業会社ならではのやりがいを教えてください。

事業会社で行われる施策には、必ず会計や税務の処理が関係していることもあり、そこで力になることで、他部署から感謝される機会も多くなりました。マクドナルドのために自分の力が役に立っていることは、大きなモチベーションになっていたと思います。

また、当時のマクドナルドは直営やフランチャイズ含めて約3000店舗の改装を積極的に行い、デジタル化を積極的に推進している時期であり、その施策に会計・税務の面から携われたことは非常にいい経験をさせていただきました。

―グラフを見ると、マクドナルドで貴重な体験を得て、そこから新たな目標を目指し転職されたとありますが、これにはどういったきっかけがありましたか。

先ほどもお話した通り、当時のマクドナルドの業績は悪く、私の入社した年の決算は上場以来最大の赤字額でした。三年程度かけてV字回復し、底辺から再びトップまで登っていく姿を内部から経験できたことはとても刺激的でした。会計は業績が厳しい状況にある時ほど様々な課題や会計上の論点があり、ある意味でやりがいがあります。業績が安定したことでそうした課題や論点が減ってしまい、刺激的な日々から徐々に安定的な日々に変わっていくことで、なんだか物足りなさを感じました。
自分はこのままマクドナルドで続けるべきなのか、それとも何か新しい挑戦をするべきなのか考えました。自分がビジネスマンとしてのキャリアで成し遂げていないことは何かを真剣に考えたときに、株式の上場サポートというのが脳裏をよぎりました。次の目標に設定し、転職を決意しました。

4.デイトナインターナショナルへ転職、自分の目標の実現のためにReproへ

―上場サポートという目標を掲げて2018年6月に株式会社デイトナインターナショナルに入社されていますが、ここで上場達成は出来ましたか。

結論からいうと、デイトナでは上場を経験することはできませんでした。
前提として、上場は会社がより資金を調達し、ブランド力を向上させ、成長していくための一つの手段でしかありません。
一方でひとたび上場準備プロセスが始まれば、今までの会社全体の業務フローが変わり、多かれ少なかれ通常業務に影響が出ます。また、上場後は外部から株主が入ってくるため、迅速な意思決定を阻害するような要因にもなりえます。
当時、さまざまな施策を行い、大きな成長が実現できていたデイトナにとって、上場プロセスよりも優先順位が高いことが多くありましたし、今ならその時の経営者の判断が正しかったことが分かります。

しかし、当時の私は上場サポートを実現するという強い思いをもって入社していたので、会社が取り組んでいることと私が実現したい目標との間に徐々に差が出来てしまい、同時にモチベーションを維持することが難しくなってしまいました。

―自分の目標と会社のズレを感じ、自分を見失い始めたことでモチベーションも低下していますね。この時でもIPOのサポートをしたいという目標はぶれませんでしたか。

はい、ぶれませんでした。自分のビジネスマンのキャリアを考えたときにどうしても上場のサポートをすることが必要だと思っていたからです。デイトナでその機会をうかがうか、再度転職をするかどうかの選択に悩まされることとなりました。

―ここで、現在高橋さんが勤められているRepro株式会社代表平田さんとの出会いがあったのですね。このきっかけはどういったものでしたか。

現職継続か転職するかを悩んでいた時に、たまたま友人と食事をする機会がありました。私の話を聞いたその友人は、Repro代表の平田を紹介してくれました。さっそく平田に連絡をとり、面談することが決まりました。平田は、Reproの事業や将来について熱く語ってくれました。今まで会ったことがないぐらい熱意に溢れた人で、この人と働きたいと思わせてくれました。そして最後に「君が今まで培ってきた知識や経験はReproにとって役に立つと思う。それに、君が実現したいことは、Reproにとっても実現したいことで、お互いにWINWINの関係になれると思う。Reproで一緒に働くことを考えてほしい」ということを言っていただき、Reproへの転職を決心しました。

―高橋さんはキャリアを築く上で仕事の幅がどんどん広がっていますが、その中で過去の経験が活きることはありますか。

まず、監査法人の最初のチームで、仕事ができないことを伝えてくれた先輩に感謝しています。当時は辛かったですが、あの時伝えていただいたことの意味を異動先のチームで実感できましたし、あの一言が無ければ今の自分はいなかったと思います。

また、仕事ができない自分を見捨てずに、指導し自分を変えてくれた存在である二人の仕事の師には感謝しています。二人から得た経験があるからこそ、今自分は充実した仕事ができていると思っており、その感謝は1日たりとも忘れたことがありません。二人から学んだことを、他の人にも伝えていけたらなと思います。

―最初に仰っていた「公認会計士になればお金持ちになれる」というOBの先輩の言葉は実現できましたか。

それは実現できませんでした(笑)。でも諦めたわけではありません。まだまだ人生は長いので、チャンスが来た時に掴めるように自分を磨き続けたいと思います。

5.管理部門の魅力、今後のビジョン
―高橋さんが様々な会社を経験されてきた中で、共通して管理部門として大切にしていることはありますか。

管理部門として一番大切にしていることは、一人称の視点にならないようにすることです。
Reproの行動指針にClient firstがありますが、管理部門にとってのClientは、会社と従業員であると捉えています。そのため、会社・従業員視点で行動を行い、会社の成長に貢献することが管理部門に求められていることだと私は考えます。
例えば、自分の目の前にAというタスクがある場合、Aをやれば終了と考えるのか、会社・従業員視点で考えると、Aだけではなく、BやCもやっておくことで、結果的によりよくなるな、ということを意識として持ち、仕事をしていくことが大事だと思っています。
また、管理部門は基本的にはやるべきことをやればいいと思われがちで、減点方式になりがちだと思います。そうではなく、管理部門の成果をマネジメントに対して適切に伝え、管理部門も賞賛されていく対象にしていくことは、個人的に大切にしていることになります。

―高橋さんの視点から、管理部門の魅力を教えてください。

管理部門は業務の範囲が非常に広いので、新たに触れられる知識が多いことが魅力です。私はずっと会計畑を歩いてきましたが、Reproに入って労務や総務、法務などいろいろなことに携わらせてもらっています。自分の知らないことを知り、会社のためにできることを考え実行していく。結果、会社・従業員がよりよい方向に向かうことのサポートを実現できることがモチベーションにもなっています。

また、多様なバックグラウンドを持つメンバーとの相乗効果により、自分一人で考えるよりよい施策や結果が出たときは、管理部門全体として、会社・従業員に貢献できていることを実感して、嬉しさを感じます。

―では、高橋さんのこれからの夢をお聞かせください。

短期的な夢は、この会社で上場サポートをすることです。中長期的には、管理部門の組織作りのプロフェショナルになりたいです。例えば、管理部門は減点方式になりがちという話をしましたが、そうではなく適切に評価される組織作りや会社全体への浸透など実現していけるようにしたいです。そして最終的には、誰かの役に立ちながら、お金持ちになりたいですね(笑)

―高橋さんが管理部門で働くにあたって、こういう人と一緒に働きたいという考えはありますか。

私のマネジメントスタイルとして、人を信じることがスタートになります。その人自身が実現をしたいこと、やりたいと思うこと、それを一緒に実現していくことで、共に成長していきたいです。チャレンジ精神が高い方と一緒に働きたいですね。

―最後に、士業・管理部門で働かれている方へのメッセージをお願いします。

私が良く言っている言葉なのですが、管理部門はCostCenterになるのではなく、Contribution Centerになろう、ということをお伝えしたいです。
確かに管理部門は売上を生まない部署で、Cost Centerという言葉は的を得ています。しかし、同じ頭文字であればCostではなく、Contributionの方が素敵ではないでしょうか。
会社・従業員からも「コストのかかる部門」ではなく、「会社・従業員のために様々な貢献をしてくれる部門」と認識されるバックオフィスを作り上げられるように尽力します。管理部門でお仕事をされている皆様、是非一緒に管理部門のイメージを変えていきましょう。

―本日は貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。

今回お話を伺った高橋様が管理部長を務めるRepro株式会社のHPはこちら

この記事を書いたライター

HUPRO MAGAZINEを運営している株式会社ヒュープロ編集部です!士業や管理部門に携わる方向けの仕事やキャリアに関するコラムや、日常業務で使える知識から、士業事務所・管理部門で働く方へのインタビューまで、ここでしか読めない記事を配信。
カテゴリ:キャリア

おすすめの記事