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新しい挑戦が自分の価値になる。様々な職歴を経た株式会社カラダノート取締役平岡晃の今後のビジョンとは?

HUPRO 編集部
新しい挑戦が自分の価値になる。様々な職歴を経た株式会社カラダノート取締役平岡晃の今後のビジョンとは?

大学院で会計を学び、その後は大手メーカー、経営コンサル、メガベンチャーを経て、現在は株式会社カラダノートの取締役として活躍されている平岡晃氏。大手からベンチャーまで多様な仕事に挑戦される平岡氏に、IPO準備やM&Aの経験、転職時の考え方、今後のビジョンなどをHUPRO編集部がお話を伺いました。

<平岡氏のご経歴>

2010年 株式会社日立製作所 入社
2013年 BCホールディングス株式会社 入社
2015年 株式会社ミクシィ 入社
2017年 株式会社カラダノート 入社
(現在:取締役 コーポレート本部長)

<平岡氏のキャリアグラフ>

大学院で経営学を学び大手メーカーの日立へ入社

― 大学院ではなぜ経営学を学ばれたのですか?

大学生の頃のゼミの先生がよく「自分に投資しなさい」ということをおっしゃっていて、当時いろいろな会社のセミナーに参加したり、読書をしていました。
その中で京セラの創業者である稲盛和夫さんの著書の中に「今後社会人たるもの会計が分からないとついていけなくなる」と書かれていて、ふと自分を振り返ると一応経営学部で学んでいるけれどまだまだ全然理解できていないなと思ったことがきっかけで大学院に進学し、会計、ファイナンスを中心に学びました。

― 大学院卒業後は、税理士や会計士になる道もあった中で、なぜ日立に就職されたのですか?

そもそも大学院に進学した動機が会計士になるという目的ではなく、興味があった経営の一要素として会計を学びたかったというのが一番強いです。そのため、卒業後は会計士という道ではなく、事業会社に就職するという道を考えていました。
その中で、リアルに「モノ」がある製造業で働く事で、大学院で学んだことを実際に実務として理解できると思い日立に入社しました。

総合職の採用ではあったのですが、自分のバックグランドからしても、経理や財務を担当することになると思っていたので、当然丸の内の本社での勤務だろうと思っていたのですが、3月の中旬に配属先の内示を頂き、茨城県の工場に配属されることを知らされ、大甕工場に行くことになりました。

― 大学院で学んだ理論と、製造業に入って経験した実務のギャップはありましたか?

私の配属は財務経理部の原価課で、担当設計部の原価計算や予算策定、予実管理も含めてやっていました。その中で「使える部分と使えない部分のギャップが思っていたよりも大きい」と感じました。

理論としては各社共通している部分があると思うのですが、細かい原価計算の仕組みや管理会計の方法は個々の会社が独自に積み上げてきているものなので、そういったところはいい意味で理論とのギャップが体験できて良かったと思います。

― 管理部と現場で働く方々が対立する経験はありましたか?

日立のカルチャーでもありますが、双方ディスカッションして進めます。
そのため、基本的には私はよく現場に行き、コミュニケーションをとっていました。

自分の席にいるだけでは分からないことも多く、実際の案件の進捗状況や今後の考え方を現場に行って実際にその人たちとディスカッションしたり、その他調達部門などの関係部署のミーティングにも同席させて頂き、自分が担当した設計部がどういう状況にあるかというのを定量的な数字以外の情報をなるべくインプットするよう意識していました。

― 配属されてから、満足度が徐々に上がっていくのはお仕事の充実度が高まったからでしょうか?

そうですね。最初は自分が思っていた所と違ったのでどうしようかと思ったのですが、徐々に仕事を理解し始め、自分に任せてもらえる領域が増えてきたこともあり、やりがいを感じるようになりました。

特に印象的だったのは、私が入社した直後に東日本大震災が発生し、当時国も新電力を含めて新しい電力などに注力していたこともあり、いくつかの国の補助金等を活用としたプロジェクトに関わることができたことです。

日立ではもともと社会インフラに関わる事業を展開していたこともあり、そういうプロジェクトに積極的に参加し、公的機関等と一緒にプロジェクトを進めていました。その中で、私は国に提出する経費にかかる資料の取りまとめだけでなく、日立で使用する管理マニュアルの作成を経験させて頂きました。
当時作成した自分の管理マニュアルを日立の中の共通的なルールとして当時は活用され、それは一つやりがいになりました。大企業ならではの規模感ですね。

経営コンサルへの転職でIPO上場準備を経験

― 大きな仕事に携わることができたと思うのですが、ここでコンサル業界に転職された背景はどのようなものだったのですか?

その理由は大きく2つあります。
一つ目は、もともと経営に興味があったので、入社当時から3年ほどで転職することを考えていたため、それに向けていろいろなものを積極的に経験していました。

もう一つの理由としてはたまに行く東京などで同世代の方々と情報交換をしていると、経験量の多さに驚かされたり、集まる情報の量にも違いがあり、東京に出たいという気持ちがありました。

― もっと自分のキャリアを広げていくためにもコンサル会社に入られたという形なんですね。

当時いろんな人に助言やアドバイスを頂いている中で、後の上司になる方を紹介頂いたのが転職のきっかけです。上場を見据えて動いている話を伺い、その人自身が大手のビッグファームを渡り歩いている人だったので、ビジネスマンとしてのスキルを含めて勉強したいなと思いました。

その時は興味本位で、誰も経験した事が無さそうな海外での上場を目指していて、それが経験できることは面白いことだと思い、ジョインさせて頂きました。

― 勉強会では具体的にどのようなことを学ばれたんですか?

同世代の方々と単に交流するだけでは面白みもないため、知り合いと一緒に若者勉強会というものを企画し、様々な起業家や研究者などその道の第一線で活躍されている方々をお招きし、勉強会を3年ぐらい運営していました。その活動を通して物事を考える上でのエッセンスや尺度となるものを教えていただいたことが多かったです。また、その時に繋がった人たちと今でも繋がっているというのは自分の中でも財産になっています。

それまでは「経営がやりたい」とか、何となく「今のままじゃだめだ」と漠然と思っていましたが、経営者のサポートができるような人材になりたいと明確になったのは、勉強会を通じて様々な方にお会いしたことがきっかけでした。

― この会社でIPO準備の経験をされているんですね。経験がない中で一番大変だったことは何でしたか?

その時は別のコンサルティング会社と一緒に準備をしていたので、その人たちに色々聞きながら「いつまでに何をやる」というのを明確にしてもらい、事務局担当としてプロジェクトの進行管理や社内調整をしていました。

一番難しかった課題は決算の早期化を実現するプロジェクトでした。それ以外では、子会社がいくつもあり、その子会社の事業再生は実際に子会社にハンズオンで入り込みながら実施したので、とても大変でしたが、個人的に密度の濃い経験となりました。

IPO準備自体はほぼ完成形に近づいていたのですが、そこで本業がなかなか描くような数字にならなくなったこともあり、上場準備を取り止めることになりました。

― ここでの経験はカラダノートでの上場で活かされましたか?

何からやらないといけないか、どういった課題が今後起きるかは事前にある程度想定できていたので、事前に自分で準備しながら進められたことは活きた点でした。外部のコンサルを活用せず自分たちで上場できたのは当時の経験があったからだと思います。

ミクシィでM&Aの売却に奔走

― その後メガベンチャーのミクシィに転職されましたが、転職されたきっかけはなんでしょうか?

きっかけは大きくは2つです。
一つは、大きな役割としての上場が延期になった後、入社を誘ってくれた上司もそのタイミングで退職されたこともあり、次を考えたいという気持ちが強くなったからです。

もう一方でインターネットサービス領域のベンチャー企業のスピード感を体感したいという興味もあり、入社を決断しました。

― 平岡さんが入社された時には既にミクシィは上場されていますが、IPOを経験するというのは選択肢としてはなかったんでしょうか?

IPOは、あくまでも企業を成長させる上での一つの手段でしかないので、それほどこだわっていませんでした。それよりも経営としてどう事業を潤していくかという事の方が自分として興味がありました。

当時はモンスターストライクというゲームをはじめ、ゲーム以外の事業領域にも注力する時期で、それを世に広めていきたいと思ったのがきっかけです。

― スピード感の違いを体感されてみてどうでしたか?

アウトプットの速度感がこれまでと全然違ったので、そこに結構悩まされました。あとは業界特有の用語を覚えたりと仕事の速度感に慣れるのに半年くらいかかりました。
ただ、ミクシィのサービスが好きでそれをより良くしたいというのが根本的にあったので苦だと感じることは無かったです。

― ここからM&Aの売却に尽力されますが、ミクシィに入られた時から経営企画に携わっていたのですか?

そもそも私が配属されたのが経営企画本部の経営企画室でM&Aも含むので、子会社の管理も含め買収も担当していました。

その部署に配属した時期は、今のゲーム(モンスターストライク)が軌道に乗り始めたタイミングだったこともあり、その一環として子会社の売却活動に携わらせていただきました。

案件は2回ありましたが、1つ目は初回というのもあり耐性ができていなかったので苦労しました。
せっかく一緒に頑張ろうと合併しても、突如本社の意向も含めて売却しないといけなくなってしまい、当然その会社には従業員はいるので、その方々にどう理解して頂いて、どう次に進んで頂けるようにコミュニケーションを取るかは結構神経を使いました。

上司や先輩方はM&Aに精通していたので、そういった方に様々なアドバイスを頂きながら、プロジェクトメンバー達と相談して進めていったので、最終的には人に恵まれたなと思います。

― 子会社の整理という形で売却をする場合でも、適切な売却時期やタイミングはあるんでしょうか?

それでいうとタイムリミットがあります。交渉上それはあまり言わないですが、内部的には資金の貸し付けている現預金の残高が無くなるデッドラインはある程度イメージしながら交渉はしていました。

こちらとしては買ってもらう立場なのでなるべく誠実に、交渉先企業がこういう情報が欲しいって言われたらなるべく要望通り出せるように準備していました。

とはいえ、その全部を出してしまうと交渉材料がなくなってしまうので、その線引きは上司に相談しながら、どこまで交渉材料にするかなどは、バランスを勉強させて頂きました。

現在のカラダノートへ入社し社会問題に日々向き合う

― ここでM&A売却に疲弊し、転職を考えられたんですか?

M&Aの売却に疲れた事と、M&Aを通して子会社と関わる中で、親会社の意向と子会社の本当にやりたいこととのギャップを感じて葛藤した事がきっかけです。

そこでもっと自分で中に入りコミットすることで、社長がやりたい事を一緒に具現化して会社を大きくするという経験を積みたいという思いが強くなり、転職を考えました。

もともと日立の時も含めて、そういうスタンスではいましたが、立場上自分がやりたいことが全てできるわけでもなく、一緒に一つの会社を大きくするということの経験をまずは積みたいという思いが強くなりました。

― カラダノートに入社を決めた大きな理由は何ですか?

一つは、当時一人目の子供が生まれたこともあり、子育て領域に興味があったことです。

もう一つは、ありがたいことに入社前に代表の佐藤と何回か話す機会を頂いて、その時の会社の状況を良い面も悪い面も含めて共有して頂けて、誠実に経営に向き合っている事が分かり、会社を大きくするサポートを一緒にしたいと感じた事です。また、代表の佐藤と年齢も近く同じ子育て中のパパであったということも転職の一つのきっかけになったと感じます。

― IPO準備を進めていく中での一番の課題はどこにありましたか?

一番はリーガルの問題です。

我々のビジネス自体が個人情報を多く取り扱う事業のため個人情報保護法に対する自社の対応状況は、問題はありませんでした。しかし下請法に課題があり、下請けに関連する部分が法令で定められているものとして整備されていませんでした。

そこで急遽法務に精通する役員を採用し法務部を設置しました。この課題は上場目前に発覚したため時間軸的に上場が難しい瀬戸際でしたが、最終的には間に合いました。その辺の関連法令に関しての自分の理解力が足りてなかった部分は事実としてあったと思います。

他の会社も全く同じ課題ではないにしても同じような課題が上場直前になって様々生じるので、それに対してどう柔軟に対応できるかがある意味求められているような気がします。

あとは証券会社との株価の交渉です。相手の土俵のことを理解せず、自分の過去の考え方や思いこみで進めた部分もあったので、事前に色々な方のお話を聞くべきだったと今振り返って思います。

ただ、1度経験し、ある程度準備の過程も分かっていたので、稟議関係や勤怠などの一般的な課題の整理はすんなりできました。メンバーもこちらの意図を汲んで動いてくれたので大変さは無かったですし、入社時のメンバーが20名弱くらいの人数だったので、やりやすかったという面もあります。

― コロナ禍の2020年の10月ごろに上場されましたが、成功された一番の要因はどこにあるとお考えですか?

上場したマザーズ市場はある程度の成長性を提示しないといけなかったのですが、コロナで影響を受けてしまったのでそれをどう証明するかというのが大変でした。

でも影響を受けてしまった事はしょうがないのでなるべくリカバリーできるよう代表が筆頭になって進め、上場直前に全社一丸となってベクトルを上場にフォーカスして集中できたのが良かったです。

とりあえず前月より今月、今月より来月と売上をいかに伸ばすかというのを皆でアイディア出しも含めて毎週PDCAを回していました。

業績影響を受けた中で、皆で“会社を伸ばすことを目指そう”というのを合言葉にしていたのは良かったと感じています。

― 常に全社で意識を高めながら上場を成功されたんですね。現在はどのようなお仕事をされていますか?

全般的に広報、管理、採用まで幅広く任せて頂いています。上場前と基本的にはあまりやっている事は変わりませんが、唯一変わるのは上場準備がなくなり、それに代わってIRが増えたという具合です。

― 管理部の人員の採用に際して、活躍できる人材の共通点はありますか?

スキルよりも「素直かどうか」というところは私の中ではかなり重要です。

特に我々みたいな会社は管理部といっても経理だけ、採用だけということではなく一人が多岐にわたって色んな職種をやります。

そういった意味でスキルが高い人が欲しいというより、考え方を柔軟に変えられる人のほうがキャリアとしてその人も成長し、ひいては会社の成長にもつながると思うので、特にその点を面談や面接で聞くようにしています。

特にベンチャー界隈では、やっていない事も含めて自分のキャリア、新しい挑戦としてとらえられる方の方が、重宝される気がしますね。

5年後、10年後のカラダノート、また個人としてのビジョンとは?

― 5年後10年後のビジョンを聞かせてください

当社が中期で掲げている「2027年にプライム市場に入っていく」というところを一つのマイルストーンとして通過していくことです。

それもある意味ゴールと言うよりは、当社が掲げているビジョンを実現するという意味での通過点だと思っているので、今は全社一丸となって事業成長も含めて行動しています。

― 今後の事業に関して具体的にお伺いしてもよろしいでしょうか?

皆さんの印象としてママ向けのイメージがかなり強いと思うのですが、当社は「家族の健康を支え 笑顔をふやす」というのがビジョンで、あくまでも日本の家族というものに対して様々な角度から課題を解決していくというのが我々の目指している世界観です。

社会課題で言うと、少子高齢化を解決したいと思っています。
そのため自社単独ではなくパートナーを探しながら一緒にそれを課題解決していく事が中長期的な我々の目指す課題です。

当社としては、今後、医療にあたるシックケアの手前にあたる予防分野のヘルスケアを注力することは明確化しており、ヘルスケアと幸福度を高めるウェルネス領域をカバーすることで、心身ともに健康に健康寿命を伸ばすことを目指したいと思っています。

― 平岡さん自身のCFOとしてのビジョンはありますか?

そもそもCFOという肩書には根本的にあまりこだわりがありません。
あくまで経営陣の一人として何か価値提供できるかという視点があるので、そういう意味ではもっと自分のできる領域を広げたいです。

また自分のライフミッションとしてあるのは、生まれた広島に対して何かできることはないかということで、これは今後やっていきたい事のひとつではあります。

老後は地元の広島に帰りたいと思っていますが、どうするかはまだ明確化されていないです。

自分ができる引き出しもまだまだ少なく、一つの企業を支援するといっても会社ごとに課題があるので、それに対して何ができるかという引き出しを増やし、経営者の一人としてできる領域を広げたいと思っています。

とりあえずはインプットをひたすらして40代50代へ迎えたいというのが自分の理想ですね。

今後管理部門で活躍したい人へ向けて

― 平岡さんは大手企業とスタートアップどちらも経験されていますが、将来的にCFOとしてキャリアを積んでいきたい方々にとってはどちらが効果的だと思いますか?

自分自身のキャリアアップの考え方によるかと思います。

おそらく上場会社でCFOになろうと思うより、ベンチャーに飛び込んだほうがそういった立場に若い頃からチャレンジできると思います。

一方で大企業も大企業でしかできない規模の事業に携わることができるので、そういう経験を積みたい方にとってはそういうフィールドのほうがいいと思います。

規模感よりもいろいろな経験をして、引き出しを増やしたいという人にとってはおそらくベンチャーに身を置いたほうがゼロイチで制度や仕組みを構築できるので、そういう世界に飛び込んで自分を成長させるというのも一つだと思います。

― 最後に今後CFOという立場で活躍されていきたい方々にアドバイスやメッセージを頂けますか?

昨今のベンチャーのCFOをされている方々は、会計士の方や投資銀行の出身の方などエッヂの立った人が多いと思います。

その中でその人たちが出来ない事を幅広くして差別化していくことができればいいと思います。

やらずに後悔するよりかはやって後悔した方が自分の経験値にもなります。
キャリアを積みたいのであれば、食わず嫌いせずにいろいろチャレンジしてみてください。

― 本日はお話を聞かせて頂きありがとうございました。
本日お話を聞かせていただいた平岡氏が取締役CFOを務める株式会社カラダノートのHPはこちら!

この記事を書いたライター

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