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大切なのは「会社のために自分が何をできるか考えること」BASE株式会社 上級執行役員CFO原田健氏のキャリアチェンジにおける考え方

HUPRO 編集部
大切なのは「会社のために自分が何をできるか考えること」BASE株式会社 上級執行役員CFO原田健氏のキャリアチェンジにおける考え方

新卒でゼネコンに入社し、その後IT業界への転身を果たし、現在はBASE株式会社で取締役及び上級執行役員CFOとして活躍されている原田健氏。今まで三度の転職を経験された原田氏が大事にしているキャリアチェンジにおける軸や、CFOという役職に対する考え方などについて、HUPRO編集部がお話を伺いました。

【原田氏のご経歴】

2000年 早稲田大学商学部卒業
2000年 安藤建設(株)(現(株)安藤・間)入社
2007年 (株)ミクシィ入社
2011年 中央大学専門職大学院 ファイナンス修士(MBA in Finance)
2013年 (株)フリークアウト入社
2015年 BASE(株)入社

【原田氏のキャリアグラフ】

ゼネコンでの経理経験、一度目の転職 ミクシィへ

―まず、大学卒業後に安藤建設株式会社(現 株式会社安藤・間)へ入社されたきっかけを教えてください。

ゼネコンで働きたかったというよりも、一番タフな業界で働きたいという思いがきっかけでした。大学ではずっと音楽をやっており、就活でやりたいことが見つかった訳ではなく将来に悩んでいました。そこで、初めに一番タフな業界で働くことができれば後は何とかなると考え、バブル崩壊後に業界全体が低迷していた建設業に興味を持ち、安藤建設に入社しました。

―本社の経理に配属されたことで満足度が上がっていますね。本社の経理への配属にはどのような経緯があったのでしょうか。

まず大学で会計学の勉強をしていたので、近い領域である経理に関心を抱いていました。また、最初に配属された部署が建設現場の管理部門全般に携わるところで、建物を自分の目で見て建設に関わるお金の計算をしているうちに、その先にお金がどう繋がっているのだろうと興味を持ち、経理への異動を希望しました。異動を叶えるために資格を取得し、本社の経理へと配属していただきました。

―ゼネコンで経理の経験を積まれ、2007年に株式会社ミクシィへ入社されていますが、転職を決意された背景を教えてください。

本社で経理として働いていく中、当時私は30歳で、この会社で活躍できるようになるのは40歳にならなきゃ無理だと考えていました。そのような中で、2000年前半からインターネット業界が伸びてきていて、若い起業家たちが自立していく姿を見て自分もこういうところで頑張りたいと思いました。IT業界が楽しそうだなと考え、2006年に上場したミクシィへ転職することを決めました。

―建設業から情報・通信業へという全く異なる業種間での転職でしたが、この時に感じた前職との大きな違いはありましたか。

安藤建設とミクシィの違いとして、責任の大きさが挙げられます。ミクシィには経理マネージャーとして入社し、チームメンバーは数人いたのですが、なんでも自分でやらなければいけない環境でした。会計や経理周りは全て任されていたため、背負う責任は非常に重かったです。ただ、責任が大きい代わりに裁量が与えられるので、自分が携わることの出来る業務の幅が広がりましたね。

キャリアや働き方に対する考え方の変化

―2011年には中央大学専門職大学院のファイナンス修士(MBA in Finance)を取得されたのですね。これには何かきっかけがあったのでしょうか。

キャリアアップに繋げたいと考えたことが理由になります。20代前半では会計や税務の資格を取り、専門性を高めることに力を入れていました。今後キャリアアップしていく上で自分のスキルをどのように高めていこうかと考えたときに、領域を会計以外に広げていかなければと考えました。そこで、会計に近いファイナンスを勉強しようと思い、中央大学専門職大学院へ入学し、ファイナンス修士を取得しました。

―社長室へ異動されたことで満足度が変化していますが、当時を振り返ってみてどのようにお考えですか。

改めて今後のキャリアや働き方をじっくりと考える良い機会だったと思います。ミクシィの組織体制が大きく変化するタイミングで私は社長室に異動し、社長や上司も変わり周りの環境が大きく変化しました。それまでは会計や税理など経理の仕事中心だったので、社長室に異動してからは投資や経営企画の業務に携わり、自分の視野を広げることができたので良かったと考えています。

―今まで携わっていた経理の仕事から投資や経営企画の業務へと変わり、新しいことに挑戦する上での苦労はありましたか。

仕事に対する考え方を変えることが大変でした。経理の仕事は一定のルールに従って正しく処理することが原則であるので、ルールや処理方法をどれだけ知っているかという専門性が重要視されていました。しかし、投資や経営企画の領域は正解がないので、いかに経営の視点からベストを求められるかが中心になります。もちろん投資や経営企画の領域にも理論はあって大学院で学びましたが、なかなか理論通りにはいかないので初めは苦戦しましたね。

―ミクシィで得られた様々な経験の中で、印象に残っていることを教えてください。

まず、上海での子会社設立に携わることができたことですね。ミクシィにとって初めての海外での子会社設立で、実際に上海を訪問したので強く印象に残っています。また、サービスとしてのミクシィのユーザーが減少し業績が徐々に下がっていく時期も印象に残っています。会社の業績が下がっていく中で、自分が本来やるべきことが他にもあったのではないか、もっと会社に貢献できることがあったのではと思い悩むこともありました。

二度目の転職 フリークアウトへ、初めてのIPO経験

―2013年に株式会社フリークアウトへ入社されていますが、この転職の理由を教えてください。

自分の携わる領域を広げていきたいと考えたためです。ミクシィにこのまま残るか、それとも転職するかを考えたときに、もっと規模が小さい会社で未上場の状態から経験してみたいと思いました。当時、フリークアウトはIPOをする前で準備がなかなか上手くいってない状態にあり、私はIPOの業務経験も積みたいと考えていたので、フリークアウトへ転職しました。

―既に上場していたミクシィと、当時未上場であったフリークアウトの間にギャップはありましたか。

そこまで大きなギャップはなかったのですが、内部体制の整備は大変でした。ミクシィは私が入社した時には上場一年後で、サービスとして伸びているタイミングであり、体制は最低限整っている状態でした。フリークアウトには2013年に転職し、2014年の6月にIPOしたのですが、入社時は整備できていない部分がたくさんあったので、組織内を整えていくことが大変でしたね。

―そして、フリークアウトのIPO達成のタイミングで満足度が高まっていますね。原田さんが考える上場成功の要因を教えてください。

これは事業が伸びていたことが全てだと考えています。前提として、事業が伸びていないとIPOできないことがあります。そして、会社は事業だけでなくコーポレート側の体制もしっかりと作られていないと強い会社になりません。フリークアウトはIPOのタイミングで最低限の内部統制を管理していて、その上で事業もしっかりと伸びていたことがIPO成功の要因だと思います。

―フリークアウトでのIPO達成後から少し満足度が降下していきますが、これにはどのような理由がありましたか。

IPOを終えていったんやり切った感があって、少しモチベーションが下がりましたね。上場してから一連のやるべきことをやり切って、次の会社の成長に向けてどう伸ばしていくか考えるタイミングにありました。

三度目の転職 BASEへ、取締役CFOに就任

―そして、2015年に現在原田さんが取締役CFOとして活躍されているBASE株式会社に入社されたのですね。BASEに入社された経緯を教えてください。

知り合いからBASEを紹介してもらったことがきっかけになります。当時、私は転職活動をしていた訳ではなく、自分を必要としてくれる会社にはどういったニーズがあるんだろうとBASEに話を伺いに行きました。フリークアウトでは経営管理のマネージャーに携わり、次に転職するなら経営者サイドで働いてみたいと考えていたので、BASEにCFOとして入社しました。

―BASEでは管理部門を立ち上げたという経験をされていますが、この時に苦労したことはありましたか。

当時BASEは管理部門に関する人がおらず、全てアウトソーシングしていたので、管理部門を内製化するために採用することが大変でした。上場を目指す前提で管理体制を作っていくという目標を置いたときに、管理部門の経験がある方を採用しなければなりませんでした。しかし、管理部門に属する人たちはリスクを取らない傾向にあるため、当時のBASEに転職してくる人は非常に少なかったです。

また、スキルが高く専門性を持っていることだけでなく、未整備の状態に飛び込んで自分で組織を整えていこうという気持ちを持っている人じゃないと続かないと考えていたので、採用には非常に苦労しました。現在のBASEのコーポレート部門は2、30人くらいの規模で、今後も事業拡大にあたって大きくしていく考えです。

―現在は、具体的にどのような仕事をされていますか。

現在は取締役及び上級執行役員として、会社の内部の強化から外部に向けた情報発信まで幅広い仕事をしています。取締役としては主に経営の監督で、月に一、二回の取締役会や毎週開かれる経営会議に参加しています。

コーポレート側の上級執行役員としては、現在はIR中心の業務になります。特に海外の投資家を中心にBASEの成長性に魅力を感じて投資をしていただいている方がたくさんいるので、そういう方々とのミーティングに時間を使っています。それ以外には採用に時間を費やしてますね。BASEはまだまだ体制を強化していかなければならないフェーズにあるので、やはり面接には時間がかかります。

―BASEでのIPO達成によって原田さんの満足度も増加していますね。BASEの上場に関して苦労されたことを教えてください。

赤字での上場だったので、審査の厳しさや投資家の信頼に関して苦労しました。赤字上場となると審査のハードルがかなり高く、いかに事業として安定していて収益性が高いかを審査でチェックされるので、その部分の説明にはかなり時間を費やしました。

投資家からの信頼に関しては、我々が信じる事業の将来性と投資家からの評価が合わなかったことが大変でした。当時、ECの領域で言うとAmazonや楽天、メルカリなどが評価されていて、ネットショップ作成サービス「BASE」(以下、サービスの表記は「BASE」)のようなターゲットを個人事業者やスモールなチームに絞ってショップ開設を運営する事業に対し、国内投資家の理解がなかなか進みませんでした。そこで、海外の方がそういった事業が先進的にあるので、国内だけでなく海外の投資家にも「BASE」というサービスの魅力を伝え、徐々に信頼を得て上場を達成しました。

―IPO達成に続いて資金調達もされていますね。現在、コロナによる影響もあって「守りの経営」をする企業が多いと思うのですが、先行投資に向けた資金調達のようにBASEが「攻めの経営」をされている理由を教えてください。

それは、BASEが目指す個人や規模が小さいチームが活躍する世界はまだまだ過渡期にあり、その世界を実現するためにはこの市場をどんどん成長させていく必要があるからです。「BASE」を伸ばしていくには、ターゲットが使いやすいプロダクトの開発だったり、世の中にサービスを認知してもらうことが必須となります。先行投資ということは、将来的にはそれが利益として返ってくるので、今投資した方が将来のリターンが大きくなると考えたうえで資金調達を行いました。

また、資金調達を実施した理由の一つとして、新型コロナウイルスの影響があります。コロナ感染症拡大を機にEコマースの需要が高まり「BASE」のユーザーが増加したので、事業体制とプロダクトの強化が必要となり、大型の資金調達となりました。今現在、まだコロナで困っている事業者の方がたくさんいるので、そういう方々に我々のサービスを使ってもらいたいです。

キャリア形成における軸と今後のビジョン

―原田さんは三度転職を経験されていますが、転職する上で大事にしていることがあれば教えてください。

私は転職をするうえで、仕事軸と会社軸の二つを中心に進めていました。仕事軸は、転職して次の会社で何ができるかと考えるようにしています。今までと全く同じ経験だと意味がないので、自分が積み重ねてきた経験を活かしつつ、どれだけ次の転職先で経験を積めるかを重要視しています。会社軸は、自分が活躍できるような組織規模や環境が大事だと考えていて、また自分が魅力を感じる事業を行っている会社に転職を決めていましたね。

―BASEで取締役CFOとして働かれている中で、原田さんが大切にしていることを教えてください。

自分が携わる業務のうち、CFOの業務は一部でしかないので、どんな役職であれ会社が今後成長していくために自分が何をできるか考えることを大切にしています。CFOとしての業務は投資家と面談したり、会社における将来のお金の計画を立てたりと、全体からすると一部でしかありません。私自身はCFOという肩書にこだわりを持っている訳ではないので、会社の成長に向けて働くことを一番としています。今後、BASEが成長していくためには強い組織体制が必要だと考えていて、より良いプロダクトを作るための組織を強化することに、自分は時間を費やしていきたいと考えています。

―今後、BASEの成長に向けた強い組織を作っていく上で、原田さんはどのような人を求めていますか。

コーポレート部門で言うと、より専門性が高いプロフェッショナルな人が求められると考えています。スタートアップや小規模な会社だと数人でコーポレート部門を立ち上げるので、もちろん専門性も大事ですが幅広さがより必要となります。しかし、会社が大きくなるにつれて社会から求められることは高度化していくので、専門領域で高い専門性をアウトプットできる人の需要が高まると考えています。

また、会社のミッションやビジョンに共感してもらい、そのために自分も働こうと思える方じゃないとコーポレート部門として活躍できないのではないかと考えています。

―5年後10年後、原田さんご自身やBASEがどのように成長していきたいか、今後のビジョンについて教えてください。

私自身としてはキャリア的にどうなりたいとかは持っておらず、会社や事業の成長のために組織体制をしっかりと作っていかなければならないと考えています。ただただ自分のやるべきことをきちんとやっていくように今後もしていきたいです。

会社としては、業績はまだまだ成長発展にあるので、しっかりと伸ばして投資家の期待に応えていけるようにしたいです。「BASE」はサービスとしてまだ足りない部分がたくさんあるので、しっかりと強いプロダクトを作って、より多くの個人やスモールなチームを支持していきたいと考えています。ロングテール市場で確固たる地位を築き、さらに事業を伸ばして成長していきたいです。

―最後に、今後管理部門へキャリアチェンジを希望する方や、コーポレート部門でキャリアを築いていきたい方に向けて一言お願いします。

キャリアチェンジする上で、自分がこれから何をしたいかだけでなく、会社に対して自分は何が貢献できるか、この両方をしっかりと考えた方が良いと思います。転職者と面接をしていて、転職理由として「キャリアアップをしたいから」「新しく経験を積みたいから」というようなものが多く挙げられます。もちろんそれは転職する上で非常に大事なことで、それがなければ転職の意味がないのですが、会社からしたら今までの経験をどう活かしてもらうかという観点で採用するので、そういったところをよく考えて転職されるのが良いんだろうなと思っています。

コーポレート部門に関して言うと、先ほども話した通り専門性が大事になるので、それを高めることが大事だと考えています。また、ベンチャーやスタートアップのコーポレート部門に来る方は増えてきてはいるのですがまだまだ少ないので、どんどん飛び込んできた方が結果的に成長できると思います。なので、勇気を出して是非飛び込んできてください。

―本日はお話を聞かせていただき、ありがとうございました。
本日お話を聞かせていただいた原田氏がCFOを務める
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