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会計事務所同士のM&Aが進行中?なぜ今会計事務所はM&Aを行なうのか。

HUPRO 編集部
会計事務所同士のM&Aが進行中?なぜ今会計事務所はM&Aを行なうのか。

2つの企業が一つになるM&A。M&Aには多くのメリットがあります。一般にM&Aは会社同士で行われるものでした。しかし、従来は行われてこなかった会計事務所同士のM&Aが、近年進行しています。なぜ今会計事務所同士のM&Aが進んでいるのでしょうか?この記事ではその理由をわかりやすく端的に解説します。

会計事務所のM&A

M&Aとは、「Mergers(合併) & Acquisitions(買収)」の略称で、一般に、2つ以上の企業を1つの企業に統合することを言います。大きく分けてM&Aには、「資本業務提携」「合併」「買収」の3つのタイプがあります

M&Aを行なうことで、市場の変化や技術の進歩に迅速に対応することができます。自社だけのリソースでは不足している場合、市場の変化に対応するだけの力をつけるまで待っていては、時流に乗り遅れてしまうリスクがあります。そこで、すでに対応力を持った会社を統合することで、市場の変化へ迅速に対応できるようになります。また、後継者の不在、後継者の能力不足、経営状態の悪化などに対してもM&Aは有効です。

従来、M&Aは一般企業同士が合併したり、買収されたり、資本業務提携をしたりといったことが一般的でした。しかし、このM&Aの波は、今や会計業界にも押し寄せていて、会計事務所同士が合併したり、税理士事務所と会計事務所が合併したり、会計事務所同士が提携したりすることも珍しくなくなっています。

会計事務所がM&Aをする理由

会計事務所がM&Aをするには様々な理由があります。

ポジティブな理由の一つは、会計事務所としてより専門的なサービスを提供するためです。従来、会計事務所の主要なサービスは、記帳代行サービスでした。資源の限られる中小企業では、経理業務を任せられるだけの専門的な知識を持つ人材を確保することは難しく、また、たとえ人材が見つかってもその人材を雇うだけの資金を確保できないこともあります。そこで、会計事務所はその専門性を活かして、記帳代行業務を中心としながらも、それに付随する税務申告や税務コンサル、経営コンサルなどのサービスを展開していました。

現在でも、この傾向は続いているものの、会計事務所には、記帳代行サービスよりも、税務コンサルや経営コンサルといったより専門性が求められるサービスの提供が求められることが多くなっています。しかし、現在の会計事務所には、そのような専門的なサービスを提供するだけの資源がなかったり、不足しているケースも多々あります。そこで、会計事務所同士が合併したり、統合したりすることによって、人材を確保することで、より専門的なサービスを効率的に提供できるようにしています。これが、会計事務所同士でM&Aが行われる主な理由です。

もちろん、会計事務所同士のM&Aが進んでいる背景にはネガティブな理由もあります。ネガティブな理由とは、会計事務所の後継者問題です。多くの会計事務所で記帳代行サービスが行われている昨今、サービスの提供が過剰となっており、会計事務所同士の競争も激化しています。

そのため、記帳代行サービスだけでは、十分な売上を確保できなくなった会計事務所は、税務申告代行サービスなどを行なうようになりました。税務申告代行業務を効率的に行なうためには、会計事務所で税理士を雇うなど、税務の専門家が必要となります。しかし、税務の専門家である税理士のなかで、若く優秀な人材を確保することは難しいのが現状です。

その理由は、税理士として登録することができるまでにかなりの年月が必要であること、そのうえで、実務に対応するための経験を積むことが必要であるからです。その結果、会計事務所は比較的高齢な従業員を多く抱えなければならなくなっています。

地方で生き残っている会計事務所は、その地域の中小企業にサービスを提供することで売上を獲得しています。ほとんどの会計事務所がこのような状況となっているので、会計事務所の所長や従業員の高齢化が進むとその後継者が問題となります

すぐに若い人材を確保すれば良いというわけにはいきません。
なぜなら、同程度の質でサービスを提供するためには、それなりの経験が必要であるからです。このような問題を解決するために、後継者のいない会計事務所が後継者のいる会計事務所に吸収されるかたちで進むM&Aも展開されています

近い将来、会計事務所のM&Aが進んでいく?

近い将来、会計事務所のM&Aが進んでいく?

すでに説明したように、会計事務所のM&Aは進んでいます。しかし、近い将来、会計事務所のM&Aはさらに激化していくことが予想されます。それは、第1に、AIや会計ソフトの普及によって従来のサービス提供を行う会計事務所に対する需要が減るため、第2に、より専門性高いサービスを効率的に提供する必要があるためです。

今後、会計実務にどんどんAIが適用されるようになれば、記帳代行サービスや税務申告代行サービスは自動化されるようになり、そのようなサービスで会計事務所が売上を確保できなくなる可能性があります。したがって、AIが普及するようになれば、これらの業務が効率化されるので、それほどサービスの供給側である会計事務所の数が必要なくなります。

つまり、市場の規模が縮小するので、会計事務所の数は絶対的に少なくなるのです。したがって、どんどん会計事務所同士のM&Aが進み、その時流に乗り損ねた会計事務所は淘汰される可能性があります。

第2の理由として、M&Aが今後進んでいくと予想されるのは、AIの普及と関連して、今後、税務コンサルや経営コンサルといったサービスを企業が求めるようになるだろうことが予想されるからです。AIの普及によって、今後簡単な経理業務は自動化されます。自動化されたのち、必要となるのは、会計情報などのデータを経営戦略や事業活動に活かすことです。そのためには、一つの会計事務所だけでは対応するための資源が足りなくなります。

より高度なサービスを提供するために、より専門性の高い人材がチームとなって問題解決をしていかなければなりません。したがって、より高度なサービスをより効率的に提供するために、会計事務所同士のM&Aが進んでいくと予想されます。

この記事を書いたライター

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