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新卒でポーラ入社後、投資先トリコ株式会社の取締役として活躍! CVCで成長した起業家たちと共に、1を100にできる人間になりたい。

HUPRO 編集部
新卒でポーラ入社後、投資先トリコ株式会社の取締役として活躍! CVCで成長した起業家たちと共に、1を100にできる人間になりたい。

株式会社ポーラ・オルビスホールディングスでCVCを立ち上げ、2021年7月、パーソナライズビューティブランド FUJIMIを展開するトリコ株式会社 取締役に就任した岸 裕一郎氏。今回は岸氏がCVCプロジェクトを立ち上げた経緯や投資の際に重視するポイント、今後のビジョンなどについてHUPRO編集部が詳しくお話を伺いました。

【岸氏のご経歴】

2014年3月 同志社大学 経済学部 卒業
2014年4月 株式会社ポーラ 入社
2014年9月 群馬支部に異動
2016年12月 新規事業提案
2017年7月 ベンチャーPJチームに異動
CVC立上げ準備
2018年1月 株式会社ポーラ・オルビスホールディングス 転籍
CVC立上げ
2021年7月 トリコ株式会社 取締役就任

【岸氏のキャリアグラフ】

逆求人フェスティバル”で掴んだポーラとの出会い

―新卒の際に化粧品会社に入社を決めた理由はなんでしたか?

大学時代に中国経済について学んでおり、中国マーケットの中で国内商品で伸ばせる商品として「化粧品」に興味があったというのが理由の一つではあります。ただ、それに関係なく、今取り組んでいるCVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)にもつながるのですが、元々ベンチャーキャピタルに興味がありました。

学生時代にIVS(インターネット企業の経営者や投資家が会する招待制カンファレンス)のようなものの学生枠に参加しました。その一環で「逆求人フェスティバル」という学生が企業サイドに自分のことをプレゼンして選考が進んでいくという形の採用に参加したところ、たまたまそこにポーラが出展していたんです。そこで思っていたよりもベンチャー的な一面も感じられたことと、自分がやりたかった日本の商品で海外を目指せるような会社だったので面白いなと思ったのがきっかけでした。

-「逆求人フェスティバル」ではどのように自分をプレゼンされたのですか?

学生の時にゼミだけでなく、「関東と関西の面白い学生達を集めて合宿をやろう!」という企画の学生団体の立ち上げも行っていたので、人を動かすのが得意です!というところをアピールしていたかと思います。0を1にするというか、新しいことを立ち上げることが好きですね。

-ポーラに入社当時に描いていたキャリアビジョンはどのようなものでしたか?

実は、そこまで具体的な思いはないまま入社しました。
実際に入社してみると、思っていたよりも結構アナログな会社だと思いました。

入社して半年ほどで群馬に配属になるのですが、当時のやりとりがほとんどFAXだったんです。ポーラではエステ事業も行っているのですが、5分に1本電話が鳴るような感じでした。普通に考えて自分がエステを予約する時って大体WEBから予約しますよね。それなのに、全部アナログな電話予約でした。こうしたところを変えたいと最初に考え始めました。そのあたりから、せっかくいい会社なのにもっと改善できるところがある、変えていきたいという思いが生まれたのだと思います。

-群馬支部に配属された時期はどのようなお仕事をされていましたか?

ポーラのビジネスモデルは全国に個人事業主の販売員さんが2~3万人いて、その販売員さんが所属するお店が日本全国2000店舗ほどあります。そのうちの30店舗のマネジメントを行っていて、売り上げを最大化していくという仕事をしていました。具体的に言うと、新規のお客様にご購入いただけるための戦略を考えて実行したり、どうすれば既存のお客様にリピートしてもらえるのか、販売員の採用をどうしていくかを考えていくのが最初の2年半の仕事でした。

販売員さんは良くも悪くも部下ではなくビジネスパートナーですので、今のCVCで出資させて頂いている起業家も近しいものがあると思っています。人に何か影響を与えるためには単純に利害だけでは相手は動いてはくれないです。コミュニケーションの取り方であったり、どうすれば人に動いてもらえるのかは当時学んだ経験が大きいです。

ライバルよりもエッジの効いた提案を。学生時代の経験とリサーチから辿り着いたCVCというカタチ。

-企画立案のクリエイティビティはどこから湧き上がるものなのでしょうか?

リサーチが好きで、海外の事例も多くリサーチしたりしていることが関係しているかもしれません。また、群馬にいてよかったと思うのは、販売の第一線で「こういうのが売れそうだ」というのが直感的に理解できるような場所にいれたことです。ポーラでも年間にいくつもの新商品を発売する中で「売れるもの」と「売れないもの」が明確に見えてくると、売れる要素やポイントが肌感覚でわかるようになってきて、そのあたりから新商品のアイデアなども考えるようになっていましたね。

-新規事業を立案するに至った背景はどのようなものでしたか?

CVCがやりたかったというよりは、前提として新規事業を立ち上げたいという思いが大きかったです。ポーラグループの中には社内ベンチャー制度がありまして、当時の私は4つの事業を同時に提案しました。やはり、化粧品会社なのでコスメ関係の提案しか通らないのだろうとも考えていたので、うち3つがコスメ関係の事業でした。それこそトリコで行っているようなパーソナライズサプリメント事業の提案もありました。

一方で、まだ当時は入社3年目くらいだったので、コスメ関係の提案を出したところで他の先輩たちには勝てないだろうなと思ったので、ちょっとエッジの効いたものもミックスしながら「こいつ面白いな」と思ってもらえたらいいなと考えました。そこで、学生の時にIVS等でベンチャーキャピタルを知っていたということ、且つ海外を見ればロレアル、P&G、ユニリーバ…どこもCVCを活発にやっていたという背景があったので、これは日本でもいけるんじゃないかと思って織り込んで提案したら、たまたまCVC案が通過して今に至るという感じです。

-CVCを立ち上げるにあたって周りからの期待やプレッシャーはありましたか?

楽観的なタイプなので当初は全く深刻には考えてなかったですね。ただ、当時は社内ベンチャー制度が10年ぶりくらいに復活したタイミングだったので、それもあって「やるからには、やり切らないといけない」というところと、「絶対に成功させる」という思いはだんだん大きくなっていきました。CVCは社内の人間にはまだ馴染みのない分野だったので、なにをやっているんだ?と興味を持っていただけた感じです。

-VCや投資経験がない中でどのように具体的な知識を身につけられたのでしょうか?

知識の身につけ方としては大きく3つです。1つ目は自分でネット媒体などをリサーチするということ、2つ目は実際に投資をされている方のお話を伺うということ、3つ目はやはり自分で実際にやってみるということが大きかったと思います。今振り返るとその3つなのですが、当時は知識の身につけ方を理解していなかったのでキャリアの中でも一番苦戦しました。

CVCを提案はしたものの、化粧品と違ってやり方が全く分からないですし、業界用語すらわからなかったです。特にVCの難しいところはベンチャーキャピタルとしてのビジネス理解はもちろんのこと、相手の企業がやっている事業もかなり深い領域まで理解しなくてはいけないという側面です。当時は、両方全くわかっていなかったのでどう実現していくかに初期の頃はかなり苦戦しました。

-苦戦した時期を乗り越えられた要因はなんでしたか?

せっかく会社から期待してもらえたのだから応えなければならないという思いと、幸いなことにビジネスパートナーが起業家なので、苦心しながら事業を立ち上げている方が近くにいることが大きかったと思います。初期の頃は、失敗するにもバットを振らなくては何も始まりませんが、その段階にすら至っていないということも多く辛い時期でした。そんな時に出会った起業家の方が「自分は命を燃やしながらこの事業に打ち込んでいる」と仰っていて、この人たちはここまで向き合っているのに自分が簡単に弱音を吐いてはいけないという思いで乗り越えられました。

-これまでの失敗から学んだ「勝ち筋」とは…?

VCの知識と、起業家への理解というお話をしましたが、起業家に関しては元々我々のCVCは女性起業家を支援するCVCにしていこうというコンセプトでスタートしたんです。ただ、これが大きく空振りして、全く上手くいきませんでした。というのも、メディアからの引き合いはすごくよかったのですが、寄付ではないのでリターンを求めるとなると、優秀な女性起業家の方に投資をしなくてはいけません。

ところが優秀な方であればあるほど別に“女性だから”投資を受けるということに何の価値もないんです。こちらが提供したいことと、相手が求めていることが全くマッチしなかったので、この点は私達の自己満足だったという反省がありました。

そのあたりから、相手の事業をちゃんと理解しなくてはいけないという側面に立った時に、「最も価値を提供できる」「自分たちが一番詳しい分野」に投資をしていくことが最短距離なのではないかと思い始めました。結果的にトリコもそうですが、化粧品やサプリメントは自社でも作っているので事業理解もあり、大体のことは自社でも行っていることなのでスタートアップにノウハウを提供できることも多くありました。

そこで初期の2年くらいはD2C(消費者直接取引)にフォーカスをして、投資予算の70%くらいを投資していこうとガラッと方針を変えたのが大きな転換点となりました。ただ、女性起業家が成功していくべきだというのは今も変わらないと思うので、それを打ち出していくのではなく、結果論としてそうなってほしいと考えています。

-CVCに関して、なぜファンドではなく自社のB/S(バランスシート)から行っているのですか?

もちろんファンドにするという選択肢もあるのですが、今は総合企画室という部署の中で行っています。ここではグループの取締役会などを運営している部署なのでCVCが機能さえすれば一番経営に近いところででき、意志決定を仰ぎやすいというポイントが大きいです。今回のM&Aも総合企画室で取り組んでいたので、自分たちの部署の中で投資を行ってM&Aまで出来るというのは社内にとってもいい形になるのではないかと思っています。今後、投資する社数や管理が増えていった場合は一部ファンド化する可能性もあるかなと考えています。

CVC投資先のポイントは「遠回りしても必ずゴールに辿り着ける」と信じられる人であること

-現在、具体的にどのようなお仕事をなさっているのですか?

CVCに関しては、大きく3つのフェーズに分かれて仕事をしています。
まず、投資するスタートアップをソーシングするフェーズ。次に、検討させて頂く場合にはデューデリジェンス(投資先の価値やリスク等の調査)を行って、投資を実行するなら契約書を締結するフェーズ。そして、投資を実行したあとはその会社を支援していく、というのが大枠になっています。それに加えて、社内でそういった会社をCVCとして管理していく業務や、自社のグループと他社の協業の調整を行ったりしています。

-お仕事の中でやりがいや面白さを感じるのは?

トリコに入って、その中で一緒に仕事をしていくのはすごく楽しいですね。
私個人の話なのですが、今の部署は2人体制ということもあって、CVCって良くも悪くもチーム感というよりは個人事業な世界だなと思っています。一方でトリコは会社の中でチームとして何かを作り上げていく雰囲気が強いので、そういう意味でもすごく楽しいと感じています。

-投資先候補の中からトリコに投資しようと思われた理由はなんでしょうか?

前提として、パーソナライズサプリメントに関しては自分でも社内ベンチャーの時に考えていたことでもあったので事業自体が非常に魅力的に感じましたし、勝てる事業だと思いました。ただ、誰が、どうやっていくかでやはり大きく変わっていくところがあるので、実際にCEOの花房さんにお会いして「この人だったらいける」と感じられたところが大きいと思います。

-「この人だったらいける」というのはどういう所で感じ取られるものなのでしょうか?

大きく3つあります。1つ目は経営者の色です。スタートアップ界隈では特に合理的な起業家の方が多いと思うのですが、やはり化粧品というのはやや情緒的な商材でもあるので、合理的すぎても上手くいかないと思います。アート性が豊かでありつつも、事業に関してはロジカルに考えられるという両面を合わせ持った方がいいなと考えていて、花房さんはこの点が特にバランスの良い方だなと思いました。

2つ目は、やはりエグゼキューション力の高さです。D2Cは商品を作る所からカスタマーサクセスしていくところまで、色々なことが起きるのですが、それらすべてを推進していけるような人でないと難しいと思っています。特に、パーソナライズサプリメントの製造ともなると煩雑ですし、何種類も作るので効率は良くないです。そのため、工場側の立場からすると嫌がられることもあるんです。そこをしっかりやり切り、既に商品を作られていたというのはエグゼキューション力の高さを感じました。

3つ目はやはり市場にたくさん商品がある中で、いかに自社商品が魅力的か、他商品との違いを伝えていかなくてはいけないので、そうしたマーケティングができる人かどうかも重要なポイントになりました。

-経営者以外の面で投資する際に着目するポイントはありますか?

フェーズによりますがシード段階でいうと、マーケットと、そのマーケットに対して何が課題なのか、その課題に対してどう参入していこうとしているのかが重要だと思っています。そのあとの細かな事業戦略などは適宜変えていくことだと思うので、どこのマーケットでどういうアングルで戦っていくのかというところを見ています。

今後のビジョン- 0から1だけでなく、1から100にする人間になりたい-

-今後のキャリアビジョンはどのように描かれていますか?

抽象的な話になるのですが、投資している企業はこれからきっと影響力の大きな会社になっていくと思うので、そうした人たちと対等に話をしていくためにも、自分も負けずに成長していきたいと思っています。

具体的にはCVCでいうと、今のポーラ・オルビスグループの中で、「ポーラ」や「オルビス」というキーブランドに次ぐ新しい根幹となるようなブランドを輩出していきたいという目標があります。その一つになるという確信があるのが「トリコ」です。FUJIMIをしっかりとサポートしていくのが自分のミッションだと感じています。これからFUJIMIをグローバルに伸びるブランドにしていくために、今後は採用にも力を入れていきたいと考えています。FUJIMIのことが好きで、ブランドを支えていきたいと思っていただける方にぜひ来ていただきたいですね。

また、個人としては、CVCをやってはいますが、実際にスタートアップ企業の中で事業を伸ばしていくという経験はないので、今のトリコでの業務は非常にいい経験になっています。事業の中のことも理解しつつ投資も行う人間は少ないと思うので、0から1だけじゃなく1から100にできるような人間になれたらいいなと思います。

CVCは結果が見えづらい仕事ではあるので、明確な目標を設定してやっていくことも重要です。いつかは、グループの売上の10~20%はCVCから生み出していきたいと考えています。

-現在、トリコの社外取締役として大切にされていることは?

やはり、信じることです。その会社をちゃんと尊重しながら、その人を信じた上で関わっていきたいというのが、私の軸となる考えだと思います。

-今後CVCを行いたい方々へアドバイスをお願いします。

もっと多くの会社がCVCに参入して頂けたらいいなと思います。まだ国内ではCVCを行っている会社は少ないのですが、その一方で、日本企業の内部留保は600兆円規模ともいわれています。その1%をスタートアップ投資に切り出すだけでも一気に見える世界が変わってくると思うんです。

ただ、会社としてCVCに興味があったとしても、なかなかやり方がわからない方が多いというのが現状です。しかし、CVCができる会社自体はたくさんあると思うので、人さえ増えれば変わってくると思います。企業も投資をやっていくべき、という風潮にはなってきているので、今後、取り組む会社が増えるのは間違いないです。なので、是非そこに飛び込んでいただきたいです。

-本日はお話を聞かせていただきありがとうございました。
お話を聞かせていただいた岸氏が取締役を務めるトリコ株式会社のHPはこちら!

この記事を書いたライター

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