士業・管理部門のキャリアコラムが集う場所|HUPRO MAGAZINE
士業・管理部門のキャリアコラムが集う場所

カテゴリ

過少資本税制とは?外国法人から資金援助される際の注意ポイント

公認会計士 大国光大
過少資本税制とは?外国法人から資金援助される際の注意ポイント

最近は企業がグローバル化をしてきて、日本企業が海外に進出するのみならず、外国法人が日本法人を設立して事業活動をするケースも増えてきています。その際に論点となるのが過少資本税制となります。今回は、この過少資本税制について現役公認会計士が解説します。

過少資本税制とは?

外国法人が日本法人に資金を援助する際に、株主としての出資と債権者としての貸し付けの両者が選択されることが多いでしょう。
どちらも子会社にとっては資金を得られるので問題ないのですが、外国法人からの借入の方が利息を支払うことができるため、節税の効果としては借入を選択することになるでしょう。一方で出資の場合は海外に利息分を支払うためには配当をすることとなり、費用計上できないため税務上損となります。

よって、出資を選択せずに貸付を選択することによって、外国法人が日本法人に多額の貸付を行うことが予測されます。
このようなことが起きると、外国法人は基本的に少額の出資で日本法人を設立し、貸付によって運営をしようとします。これでは日本の税金が外国法人に流れてしまうため、それを防止するための制度として過少資本税制というものがあります。
この制度では、原則として外国親会社の資本持分の3倍を超える部分の国外支配株主等に対する支払利子について、損金算入できないとすることとされています。

過少資本税制の具体的な例

過少資本税制は次の要件をどちらも満たした会社に適用されます。

・国外支配株主等や資金提供者に係る平均負債残高と国外支配株主持分の割合が3倍を超える企業 ・負債の平均残高と自己資本の割合が3倍を超える企業

なお、国外支配企業というのは、外国法人や日本の非居住者が出資金額の50%以上を直接もしくは間接的に保有している企業を言います。また、形式的には当たらなくとも、実質的には支配されている場合にも適用される為注意が必要です。

過大支払利子税制とは?

過少資本税制と同様に、外国法人等が気を付けなければならない制度が過大支払利子税制です。海外でも同様の制度はありますが、日本では日本版アーニングストッピングルールと呼ばれることもあります。
過大支払利子税制は、計算式で言うと関連者純支払利子等の額から調整所得金額の半分を差し引いたものが損金不算入額とされます。よって、この不算入額からはみ出した部分については損金算入が認められません。
これは、意図的に借入利子を増やすことによって、国内法人の所得を意図的に圧縮し税金を逃れることを防止するために設けられた制度となります。ここでいう関連者純支払利子については、次の通りとなります。

関連者というのは、直接または間接的にその企業を50%以上支配しているものを言い、この他にもこの人物に実質的に支配されているものを言います。また、純支払利子というのは、関連者への支払利子から、受取利息を控除した金額を言います。単年度での制度ではなく、損金不算入とされた金額は翌事業年度以降7年間繰り越すことができます。
なお、全ての会社に適用されるわけではなく、関連者純支払利子額が1,000万円以下である場合や、関連者支払利子等の合計額が総支払利子額の50%以下である場合等は適用されません。

移転価格税制と過少資本税制の関係性

過少資本税制と競合する制度として、移転価格税制が存在します。移転価格税制は、海外関連会社との取引をする際に、第三者と同様の条件で価格決定をしていない場合に、差額を損金不算入や益金参入される制度となります。海外関係会社に対して技術指導をしておきながら業務委託料を収受していないとその分税金が加算される制度となります。
移転価格税制と過少資本税制は重なる部分があるため、両者の計算を実施した結果、損金不算入額が大きい方を採用することとなります。よって、海外関係会社がある場合は、どちらの税制も念頭に入れておかなければならないため、注意が必要です。

税法上損をしないためには何に注意をすべき?

このように、過少資本税制、過大支払利子税制、移転価格税制等は、海外法人とのやり取りをする上では知っておかなければならない税制であると言えます。これらの制度については、税金計算をする際に考慮しても若干遅いと言えるでしょう。というのも、税金計算する時点では税金を減額することは難しく、法人設立や貸付及び利息の収受の際にこれらを踏まえて取引をする必要があるからです。特に法人設立時に資本金が過少となってしまい、過小資本税制から免れるために増資をしてしまうと、増資コストがかかってしまい、結局のところ高くついてしまう可能性があります。

また、貸付金の利息についてもあまりとらないようにしようと考え、割安な金利としてしまうと、移転価格税制の対象となってしまったり、過大支払利息税制にそもそも引っかからないのに利息を割安で計算してしまったりすることがあります。よって、必ずどれくらいの資金が必要かを勘案してから全体的な構造を決定する必要があります。

この記事を書いたライター

公認会計士、税理士。監査法人東海会計社代表社員、税理士法人クレサス代表社員。大学時代に公認会計士旧二次試験に合格後大手監査法人に就職し、27歳で独立開業。国際会計と株式公開支援が専門。セミナーや大学で講師を務めたり書籍の出版も行っている。
カテゴリ:コラム・学び

おすすめの記事