13歳で会計士を目指すことを決め、大学在学中に公認会計士試験に合格。その後「30歳までにベンチャー企業のCFOになる」というキャリアプランの旗を立て、監査法人や上場企業での挑戦を経て株式会社INFORICHのCFOとなった橋本祐樹氏。高い目標の旗を立ててがむしゃらに走ってきたという橋本氏のキャリア遍歴をHUPRO編集部が伺いました。
【略歴】
2012年2月 | 有限責任監査法人トーマツ入社 |
2016年9月 | 公認会計士登録 |
2017年4月 | ㈱インベスターズクラウド(現㈱RobotHome)入社 連結マネジメント部部長 |
2018年8月 | ㈱メルカリ入社、㈱メルペイ出向 FP&A |
2019年12月 | ㈱INFORICH入社 管理本部長 |
2020年4月 | 取締役CFO就任(現職) |
【キャリアグラフ】
ー公認会計士を目指すと決めたのは13歳とのこと。きっかけは何だったのでしょうか。
村上龍さんの「13歳のハローワーク」という本がきっかけです。当時はサッカー選手になる夢を持っていたのですが、反対する両親に「何をやりたいか決めなさい」と渡されたこの本で、会計士という仕事を知りました。数字が好きな人に向いている、そして社長の右腕になれる、という説明に子供ながら適性を感じ、会計士を目指すことにしました。
ーなぜ「主役」ではなく「右腕」が向いていると?
小学校時代に強豪チームでサッカーをしていたのですが、メンバーの中で自分は一番下手でした。ただ、下手なりにも縁の下の力持ち的なポジションでチームを支えて貢献し、チームは全国ベスト16まで進みました。この成功体験を通して、チームを強くできるなら自分はナンバーワンでなくてもいいと考えるようになりました。
ー大学時代に公認会計士試験に見事合格されていますが、勉強のコツはありましたか。
簿記が好きだったのが大きかったと思います。大学の公認会計士コースのカリキュラムがあまりにもハードだったので、入学当初に簿記会計コースにスライドしたのですが、簿記は勉強をしただけ点数が取れるのでモチベーションが保てました。大学2年の秋には簿記1級まで取得できて、その後に会計士コースに移って受験勉強に打ち込んだことで、在学中に合格できました。
ー大学卒業後は監査法人トーマツにご入所、どのような経験をされましたか。
トータルサービスという部署に配属され、上場企業の監査を行いながら、IPO準備支援やデューデリジェンスを経験しました。
当時尊敬していた先輩にいろいろなことを教えいただいたのですが、心に残っているアドバイスは「仕事のスピードは必ず後から付いてくるから、とことん考え抜いてアウトプットした方がいい」ということ。時間がかかっても結論を出すために考え抜く、というアドバイスを忠実に実行していると、自ずと思考能力が向上し業務のスピードも上がりました。
監査という業務は、経理の方々が頑張って作成する数字や書類をチェックするため、嫌がられることもありました。ただ、クライアントやカウンターパーティーから感謝の言葉をいただく瞬間は、企業や社会に貢献していると感じられ、仕事の原動力になりました。
ー事業会社への転職を考えられたのはなぜでしょうか。
理由は二つあるのですが、一つは自分の成長曲線の鈍化に危機感を覚えたことです。監査業務は3年ぐらいすると一通りのことは経験してしまいます。会計基準という正解があって、それに対してどうアジャストしていくかというスタイルは変わりません。それに気がついた時に、ここに居続けても新しいことはできないと考えました。
もう一つは当事者になるためです。監査は第三者目線からアドバイスをし、改善して終わりになってしまうので、当初から「自分ごと」感が希薄だと感じていました。小学校時代のサッカーチームのように下手でも試合に出て貢献したい、同じチームで自分の頑張りが会社の成長に貢献できる環境に身を置きたいと考えるようになり、事業会社にキャリアを移していこうと決めました。
ー株式会社インベスターズクラウド(現株式会社RobotHome)を転職先に選ばれた理由は何ですか。
転職は初めてで、しかも前職の監査法人とは異なる事業会社がターゲットだったため、自分の中に明確な判断基準はありませんでした。将来的にベンチャー企業のCFOを目指していましたが、監査法人の経験だけでいきなりベンチャー企業に行っても、恐らく貢献できないだろうと考え、まずは上場企業で事業会社のイロハを修行しよう、と思っていました。そのタイミングで転職エージェントから推薦されたのが、株式会社インベスターズクラウドでした。
ー監査法人から事業会社に移られて、違いは感じられましたか。
株主総会の準備の大変さにはビックリしましたね(笑)。監査法人時代に株主総会に出す書類をチェックしていたので手続きは知っていましたが、事業会社がその書類を準備するために内部で何をやっているかは知りませんでした。
業務そのものの違いとしては、待っているだけではバリューが出せないことです。監査法人では自分が仕事を生み出すことはほぼ無かったのですが、事業会社では会社が成長するために必要なことを常に考え、自ら動いて課題を解決する姿勢が求められます。
ただ、この違いに気づいたものの、積極的に人を巻き込んで動くという経験が少なかったため、インベスターズクラウドでは事業に貢献できている実感は少なめでした。
ーその後株式会社メルカリの子会社「メルペイ」へ転職されましたね。
インベスターズクラウドで1年ほど働いて上場会社のルーティンが理解できたので、次の転職こそはベンチャー企業のCFOを狙おうと意識していました。
そんな時に、監査法人トーマツ時代にお世話になった先輩から「メルカリが子会社を立ち上げるので採用のミートアップをやっている」とご連絡をいただいて。当時FINTECHにかなり興味があったので話を聞きに行き、楽しそうだと思って転職を決めました。
-メルペイではどんな経験をされましたか。
経営企画担当として主に予算管理や管理会計構築の立ち上げに携わったのですが、社内には
優秀なメンバーが多く刺激を受けましたね。事業開発部のメンバーは企業の価値向上に繋がる提携先はどこかを常に考えていましたし、プロジェクトマネージャーはユーザーが圧倒的に使いやすいFINTECHは何かを考え抜いてアプリを作っていました。
自分が持っている資格やキャリアが武器になるのか、この組織でどれだけ貢献できるのか、圧倒的な知識と経験を持つメンバーを前に焦りながらも、とにかくがむしゃらに走りました。
ー2019年12月に株式会社INFORICHのCFOに就任。転職を決めた気持ちをお聞かせください。
メルペイで得られることは多かったのですが、キャリアプランの目標である「30歳までにCFOとして優秀なベンチャー企業経営者の右腕になる」という初志を貫きたいと思いました。
実は監査法人トーマツからの転職活動の際にINFORICH代表の秋山とは会っていて、誘いは断ったもの1年に1回のペースで食事をしていました。メルペイ入社後には副業でINFORICHの事業をサポートしていたのですが、サービスを「ChargeSPOT」にピボットした秋山の描くビジョンに共感できたことと、ベンチャーに行きたいと思ったタイミングが合致したので、転職して全力でコミットすることに決めました。
ー目標に掲げていたベンチャー企業のCFO、実際にはどうですか。
IPOの準備を皮切りに、とにかくやることが多いです。社長がビジョナリーで新しい事業アイデアをどんどん出してくるのですが、CFOは守りを固めなければいけないので、時々「ちょっと待って!」と言いたくなります(笑)。
忙しい時は、決断するプレッシャーが相対的に重く感じられるのですが、事業会社で自分が成長できることの理由の一つは、決断の打席に立つ回数だと思っています。困難に遭遇した時に結論に持っていくためにどれだけ考え抜くか、そしてどれだけ周囲を巻き込めるか、決断に向き合う回数が多ければ多いほど、成長の糧になります。
決断をして責任を持つことから逃げないこと。苦労があってもこのことを大事にしています。
ー今後の目標をお聞かせいただけますか。
目の前の壁を登りきることしか正直考えていません。INFORICHのIPOを成功させて、グローバルに拡大していくのに並走することが当面の目標です。
ただ、メルペイでゼロからイチを作り出すのが上手な人たちを見ていて、将来はゼロイチができる職種に思いっきりシフトチェンジをしたいな、という希望を抱くようになりました。今のキャリアビジョンを達成したら、ゆくゆくは社会に影響を与えられるようなものづくりにチャレンジしてみたいと考えています。
ーHupro Magazineの読者に向けてのメッセ―ジはありますか。
キャリアに迷っている方に向けてのアドバイスになるのですが、悩み続けるぐらいなら、早く目標を立ててそこに向かってがむしゃらに努力してみてください。僕は13歳という早い時期に会計士というキャリアを定めたので、デメリットがあったかもしれません。ただ、早く上の方に旗を立てて登っていく方が、数多くの打席に立って成長できるので、後悔が少ないはずです。弊社では、チャレンジングな打席に立てる機会が沢山あります。数字が大好きで、知的好奇心が旺盛でがむしゃらに働ける仲間を募集しています。
今回お話を伺った橋本氏が取締役CFOを務める株式会社INFORICHのホームページはこちら