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「CFOである以前にCxOであるべき」オープンエイトCFO澤田裕貴氏が語る、CxOに大切な2つの心構え

HUPRO 編集部
「CFOである以前にCxOであるべき」オープンエイトCFO澤田裕貴氏が語る、CxOに大切な2つの心構え

大学時代の営業経験をきっかけに「社会に良い影響を与えられる仕事がしたい」と考えるようになった澤田裕貴氏。証券会社で経験を積み、国内M&Aアドバイザリー、外資系コンサル、そして外資系投資銀行と着実にキャリアを重ねていきました。そして2019年からはベンチャーであるオープンエイトのCFOに就任。

思い描く未来に向かって邁進する澤田氏に、キャリアを選ぶ上での軸や、CxOの仕事に対する考え方についてうかがいました。

2008年 名古屋大学卒業 大和証券SMBC(現 大和証券グループ本社)入社 
コーポレートファイナンス部
2011年 フロンティア・マネジメント入社 ファイナンシャルアドバイザリー部
2014年 マーサー・ジャパン入社 M&Aコンサルティング部
2015年 UBS証券入社 投資銀行本部
2018年 メドピア入社 経営企画部長
2019年 オープンエイト入社 取締役CFO

「世の中に影響を与え、社会を良くしたい」と証券会社、M&Aの世界へ

-澤田さんは大学卒業後、新卒で大和証券SMBCに就職されています。就職先に証券会社を選んだ理由は何でしょうか?

学生時代は、家庭教師でアルバイトしていました。最初は教える側だったのですが、途中から営業をやるようになりました。営業の仕事では、「なぜ勉強がしたいのか」をご本人やご家族から聞いて、その希望を叶えるための方法をご家族と一緒に考えていました。そして「自分の提案が、子どもたちやその家族のその後の人生に、良い影響を与えるきっかけになる」ことに、やりがいを感じたのです。

就職活動を始めるにあたり「自分が生み出したもので、世の中に大きな影響を与えられ、社会を良くできる仕事をしたい」と考えました。幅広くいろいろな会社を見て、投資銀行やコンサルなら自分の想いを実現できそうだと感じました。その中から、社風を含めて「自分に合っている」と感じた大和証券SMBCに入社したのです。

-大和証券SMBCで、どのような仕事をしていましたか?

コーポレートファイナンス部へ配属になり、企業に対してM&Aやエクイティファイナンスなどの投資銀行のサービスを提案する仕事をしていました。しかし途中で大きな組織変更があり、中堅社員があまりおらず、ベテラン社員と私のような若手社員だけの組織になりました。

若手の自分が資料を作成して、クライアントである大企業と直接仕事ができたのは、良い経験になりました。しかし一方で「これは危険だな」とも感じていました。私が提供する価値は、果たしてグローバルの市場でも戦えるものなのか。それを判断する術がありませんでした。「このままでは『井の中の蛙』になってしまうのではないか」という危機感を覚え、転職しました。

-大和証券SMBCで、どのような仕事をしていましたか?

―どのような軸で、転職先を選んだのでしょうか。

M&Aの経験をしっかり積めるかどうかです。大和証券でもM&Aは経験していました。しかし「貴社はこの数百億円のM&Aをするべき」という大きな提案はできるのですが、実際M&Aの実行まで携われる機会は、ほとんどありませんでした。契約を締結し、お金が振り込まれる最後のところまでを経験したいと考え、それが叶うフロンティア・マネジメント社に入社したのです。

フロンティア・マネジメント社では、ひとつひとつの意思決定の中で、経営者がどのようなことを考えているのかを学べました。M&Aを成就させるには、細かい専門知識はもちろん大事ですが、それ以上に物事の動くさま、人の心が動くさまを理解しなければいけません。自分が矢面に立ち、案件に対して責任を持たなければ、わからないことです。その機会を多く持てたことは、結果としてすごく良かったと思っています。案件に責任を持ち、物事を動かした経験は、現在のオープンエイトでも生きています。

外資系でM&Aと投資銀行業務の経験を積んだ後に、事業会社へ転職

―2014年にHRコンサル最大手のマーサージャパンに移っていますが、転職理由は何だったのでしょうか?

海外でのM&Aの経験を積みたかったからです。当時私は30歳前後でしたが、周りの35歳前後の先輩は、新しい領域に挑戦するより「自分が35歳までに成し遂げてきたこと」をベースとして仕事している人が多い印象を受けました。グローバルの経験を積んでキャリアアップするには、今しかないと転職を決断したのです。

マーサージャパンは人事の会社ですが、M&Aに特化したコンサルティング部隊を持っていました。マーサーでは、グローバルでM&Aが起こるときの組織統合を担当していました。現在はオープンエイトでコーポレート部門を管掌していますが、マーサーでの経験が生きていますね。

―マーサージャパンで1年間勤務したあと、今度はUBS証券に入社していますね。なぜでしょうか?

「証券会社のメジャーリーグに挑戦したかったから」です。国内のプロ野球で力を付けた選手が、「せっかく野球をやるなら、一度はメジャーで自分の力を試したい」と考えるのに近いかもしれません。外資系の投資銀行は、いわば日本のサラリーマンの中でも最高峰の頭脳の持ち主が集う場所。その現場を経験してみたかったのです。

UBSには3年間在籍し、エクイティファイナンスやIRなど、投資銀行業務全般を担当していました。英語力など、まだまだだと思う一方で、思考力など「メジャーリーグで通用する力」が自分にあることを確認できたのは良かったです。

―UBSから、事業会社であるメドピアに転職したのはなぜですか?

どの会社で仕事をしていても、学生時代に抱いた「社会を変えられる仕事をしたい」という想いは、ずっと根底にありました。しかし担当する案件の規模が拡大するにつれて、相対的に「自分が主体的に案件に関わっている」という実感が薄れていきました。そして、自分は大きな会社の案件に関わることよりも、自分の手触りを感じられる範囲で、社会を広く大きく変えたいのだということに気づきました。そこで自分自身が経営に関わることで会社を動かし、社会を変えられる、事業会社を希望したのです。

メドピアでは、事業化・業務提携・M&Aなどアライアンス関連の仕事、ファイナンス・資金調達・IRの仕事、そして人事を主に担当していました。特に人事の業務経験を積めたのがよかったですね。事業会社の経営企画部長として会社を動かし、会社が動いた結果、社会を動かせるという部分にやりがいを感じました。

社会をより良くできるサービスに魅力を感じ、オープンエイトのCFOへ

―その後、いよいよオープンエイトに参画するわけですね。きっかけや、決め手となったものは何でしょうか?

リファラル採用です。これまでの転職は、すべてそうですね。転職にあたっては、取締役になるということもあり、「誰と働くか」を、より重視しました。私がオープンエイトに参画したのは、主力事業である「Video BRAIN」を立ち上げ、事業転換しようとしていたタイミングでした。「Video BRAIN」は、誰でも動画を簡単に作れるようになるサービスです。せっかく「良いプロダクトを作りました、良いサービスを作りました」というのがあっても、その情報発信の仕方が良くないと、その魅力は伝わらないですよね。「良いものは良い」というのが動画で伝わりやすくなれば、社会全体がおそらくもっと良くなるはずだと直感したのです。

―現在の仕事内容や、大切にしていることを教えてください。

オープンエイトに参画した当初は、ファイナンスとアライアンスだけでしたが、その後約3か月で経理・法務・総務などのサポートを含め、コーポレート全域まで権限が拡大。CFOとしての役割だけでなく、今は実際に我々と契約して頂いたクライアントに、カスタマーサクセスと一緒に往訪することなども増やしています。

私は「コーポレート戦略で大事な3つのこと」という話を、よく社内でしています。
1 資金調達や採用などを通じ、コーポレートとして会社の成長に貢献する
2 コーポレートにとってのクライアントは従業員である
3 コーポレートは、会社の品格を守る部隊である

業務を効率化しようとすると「コーポレートが従業員を管理する」という発想になってしまいがちです。そうなると「ちゃんとこれを出せ」「やらないと知らないぞ」など、偉そうになってしまう。そうではなく、「従業員=クライアントが満足することをやっていこう」という観点が大切です。しかしいくらクライアントが従業員だからといって、何でもOKして良いわけではありません。クライアントだからこそ、厳しくするところは厳しくする。このバランスをいかに保てるかが大事。私たちのコーポレート部門の強みは、この3つのバランスが取れていることだと考えています。

―澤田さんはTwitterやFacebookなど、SNSを使いこなしていますね。どのようなことを意識していますか?

SNSには、「普段はつぶやかないけど、ちゃんと見ている人」が実はたくさんいます。実は先日も「これからこのポジションの採用を強化したい」と発信したところ、「実は僕、そのポジションの経験があって、かつ転職を考えているんです」と後輩から連絡がありました。今回のインタビューも、SNSがきっかけですよね。私自身も、ずっと人と人のつながりから転職していますし、つながりを大切にしています。採用も資金調達も、「Facebook見ました」「Twitter見ました」から始まったりしますからね。

答えのない領域でCxOが下す意思決定が、会社組織、そして日本を変える

―オープンエイトや澤田さんご自身の、今後5年後、10年後の展望をきかせていただけますか?

核となる事業の「Video BRAIN」は、スタートしてまだ約2年あまり。成し遂げたいことはたくさんありますが、まだまだこれからです。2021年1月の資金調達でSaaS企業として広く認知され、ようやくスタートラインに立ちました。動画を通じて、質の高い情報を誰でも体感できるようにするという、この事業のポテンシャルは、本当に大きなものです。これからも「社会を良くしたい」という気持ちを持ち続け、ずっと追求し続けて行きたいです。

―最後に、今後CFOを目指したいと考えている人へアドバイスをお願いします。

「良い事業を作れ、良いサービスを作れ、売上を作れ。そしたら資金調達やIPOはこちらでやる」としか言わないCFOは、CFOではありません。私は「CFOである以前に、CxOである」という意識を強く持っていますし、そうあるべきだと考えています。

「この領域は自分の担当じゃない。お前が何とかしろ」と言ってしまうのは楽です。しかし良いサービスは良い売上に繋がりますし、売上は結果として資金調達に繋がります。「これはCFOの領域ではない」と切り離せるものは、ほとんどないのです。

CxOにとって大切なことは、2つあります。1つめは「会社にとって重要な領域、特に答えがない領域や複合的な要因が重なる領域に対し、意思決定していくこと」です。その意思決定が、会社の方向性を大きく変えることもあります。また、会社だけでなく、日本を、社会を変えるということも起こりえます。自分が会社組織を動かし、ひいては日本を動かす立場であることを、常に自覚しておく必要があるのです。私はこの自覚と責任感を、大和証券時代に学びました。自分が会社の顔、代表であるということを、若手の頃から意識していたわけです。

2つめは、「その分野の中で絶対的に優れていること」です。例えば私の場合は、ファイナンスやIPOなどの領域において、少なくとも社内で誰よりも詳しくなければいけません。そして業界でも一番詳しくあるべきです。ですから、最新の情報を絶えずアップデートしたり、まったく新しいことに自ら挑戦したりするなど、その分野における最先端であり続けることが必要です。しかし、最先端ばかりを追い求めて「CxO」であることを見失っては本末転倒です。自分の領域だけではカバーできない複合的な課題は絶対に発生します。自分の専門とは異なる領域も、大事にする必要があるのです。

これからCFO、そしてCxOを目指す方は、ぜひ「CxOとしての自覚」と「専門性」のうち、今の自分にはどちらがまだ足りていないかを振り返ってみてください。それによって、今後取るべきアクションが変わってくるはずです。

ー本日はお話を聞かせて頂き、ありがとうございました。

ー本日はお話を聞かせて頂き、ありがとうございました。

今回お話をお伺いした、澤田裕貴氏が取締役 兼 CFO/コーポレート戦略室 室長を務める、株式会社オープンエイトのHPはこちら!澤田裕貴氏のTwitterはこちら!

この記事を書いたライター

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