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「向き合いたいのは日々を懸命に戦う企業家たち」 中小企業の経営者であり、税理士という専門家である両面の立場から ビジネスや会計業務に関する生きた情報をより多くの人々に拡散していく。 ヒロ☆総合会計事務所 代表税理士・田淵宏明氏のキャリアとは

HUPRO 編集部
「向き合いたいのは日々を懸命に戦う企業家たち」 中小企業の経営者であり、税理士という専門家である両面の立場から ビジネスや会計業務に関する生きた情報をより多くの人々に拡散していく。 ヒロ☆総合会計事務所 代表税理士・田淵宏明氏のキャリアとは

ヒロ☆総合会計事務所 代表税理士として、さらに人気YouTuberとしても活躍の場を広げている田淵宏明氏。
今回は田淵氏が税理士を志したきっかけ、YouTube番組を展開する理由、今後のビジョンなどについてHUPRO編集部が詳しくお話を伺いました。

父のリストラをきっかけに「手に職をつけたい」と目指した税理士資格

―税理士を目指したきっかけはなんでしょうか?
関西学院大学 経済学部1回生の頃に塾講師をしていた父が少子化の影響を受けてリストラに遭い、それを機に「手に職をつけた方がよい」と考えるようになりました。
経済学系の国家資格というと税理士、会計士、中小企業診断士などがありますが、私立大学の学費で当時は家計も厳しく、アルバイトしながら取り組むのなら科目合格制で取れる税理士であれば目指せるのではないかと考えて勉強を始めました。大学2回生の終わりに簿記2・3級に合格し、3回生の4月から本格的に税理士試験に入り始めました。

-周りが就職活動などを行っている中、資格の勉強を続けることに不安はありましたか?
4回生の時にはもう周りも就職が決まっていましたし、不安はすごくありました。
卒業して1年ほどは無職の時期もあったので、合コンに行った時の「無職」という響きが自分で言って辛さを感じていましたね(笑)

-具体的にはどのように資格の勉強をされていましたか?
TAC(資格専門の予備校)に通っていました。家だとサボってしまうので、基本的に本試験のの直前あたりは予備校の自習室で朝からずっと勉強するスタイルでしたね。大学との両立に関しては、経済学部は1・2回生の頃は厳しいのですが、幸い3回生からはきちんと単位を取っていればゼミくらいになるので、先手必勝でかなり授業のコマ数を減らしていました。

-暗記の秘訣などはありますか?
少し変わったやり方かもしれないのですが、電車の中で覚えていました。
税理士の試験は書くと腱鞘炎になりそうなほどの文字量があるので、理論暗記の本を持ってぶつぶつ暗唱するような感じで…専門学校の帰りに梅田から宝塚まで乗り、もう一回梅田まで戻ってそれから自宅最寄り駅でで降りるという、電車内での暗記作業が私にとっては一番頭に入りやすかったです。

街の会計事務所から世界四大会計事務所へ。開業の原点となったのは…

-初めて入所された中原会計事務所ではどのようなことを学ばれましたか?
友人の父が経営している会計事務所に2年ほど在籍しました。
そこは、街の会計事務所という雰囲気で一般的な個人事業主や中小企業の税務申告や資金繰りのアドバイスをしていました。勉強したことを実務に生かしていける環境でしたし、税理士として、社会人として必要なことも学ばせていただきました。

-入所1年後に税理士試験全科目合格されますが、学生と試験勉強の両立から仕事と勉強の両立となって苦労されたことはありましたか?
最後の1科目だった「所得税」はすでに一度受験した経験があったので、そこまで大変ではなかったです。これから税理士を目指される方にはやはり、先手必勝で学生時代に一つでも多くの科目をクリアしていくことをオススメします。働きながら勉強している方を見ているとものすごく大変そうなので、頭が柔らかくて体力もある若いうちにやっぱり取るべきだなと思いました。

街の会計事務所から世界四大会計事務所へ。開業の原点となったのは…

-その後、世界四大会計事務所の1つ・アーンスト・アンド・ヤングのメンバーファームである新日本アーンスト・アンド・ヤング税理士法人(現EY税理士法人)に転職されますが、やはり国際税務業務に従事したいという野望をお持ちだったのでしょうか?

もともと英語が好きで、学生時代に唯一真面目に勉強した科目でもあったんです。
街の会計事務所だけでなく、大きな事務所で英語も使うような華やかな世界を見てみたいと思い、当時はかなりハードルが高かったのですが、アーンスト・アンド・ヤングにネットでエントリーしてみるとすぐ面接に呼ばれ、そのまま転職という流れになりました。

仕事内容としては国際税務がメインで、外資系企業子会社の日本での税務申告が多かったです。あとは、日本企業が海外に進出する際の税法のリサーチなどもありましたが、これは我々も海外の税金の知識を勉強してきたわけではないので、現地の会計事務所と連携を取るというイメージでした。英語の読み書きに関してあまり壁はなかったのですが、私は帰国子女でもなく単に英検やTOEICを頑張っていただけなので、いきなり外国人から電話がかかってきたりすると戸惑いはありましたね。

-新日本アーンスト・アンド・ヤング税理士法人での仕事を通して、今の仕事に活かされていると思うのはどのようなことですか?

税理士の中でも本当にマニアックな仕事だったので、今の仕事に活きていることは実は少ないかもしれません。ただ、税務に対しての心構え、接し方はかなりシビアだったので、常に根拠を条文で調べ、その記録などのファイリングも緻密にマニュアル化されていました。そうした考え方、徹底的に調べる力を学んだと思います。

-その後、開業を考え始めたのはどんなタイミングだったのでしょうか?
一気に給与水準も上がって仕事にもやりがいがあったのですが、仕事上の相手となるのは外資系企業のコントローラーと呼ばれる経理部長や経理担当の方でしたので、中小企業と比べると経営への向き合い方が大きく違いました。やはり中小企業の経営者の方はそれこそ日々懸命に戦っているので…。街の会計事務所と大手の国際税務との両方を経験した上で、自分が今後やっていくならば、本気度の高い中小企業の方々と一緒に仕事をしたいと原点に立返り、27歳くらいの早い段階から開業を考えていました。

29歳でヒロ☆総合会計事務所を設立 事務所と講師の二足の草鞋の日々

-会計事務所設立の際の苦労などはありましたか?
最初はやはり集客ですよね。それまでは大きな事務所の看板があって仕事が勝手に入ってきますが、独立して間もなくは仕事も来ません。ちょうどアーンスト・アンド・ヤングを辞める直前に、住宅を購入して子どもも生まれるタイミングだったんですよ。事務所の収入だけでは厳しく、専門学校で所得税法の講師を同時に始めたのでその両立が大変でした。

集客に関しては営業経験がなかったので、まずは飛び込み営業を勉強してみようと色々やってみましたし、あとはやはり紹介ですよね。ホームページ等も作りましたが、基本的に目の前のお客様に今思えば過剰にサービスをして、そこから紹介してもらい広がっていったという形ですね。

-現在、事務所の規模はどのくらいまで拡大されたのでしょうか?
開業から2年半は自分一人で、そこから少しずつ増えていって現在は15名ほどのスタッフが在籍しています。

-代表税理士として、現在お仕事をメインに行われていますか?
私はもう現場からはだいぶ離れているのですが、主にマネジメントとマーケティング担当です。ただ、創業時からのお客様は、私が一人で担当するところも何社かあります。担当を持ちながらマーケティングとマネジメントを行って、あとはYouTubeがメインになっていますね。自分の時間の6割~7割は配信業務に取られています。そこにセミナーや取材やオンラインサロンの運営、本の出版など幅広くやっています。だから事務所にいることがほとんどないですね、週に一日くらい、いるかいないかという感じです。

登録者数27万人の人気チャンネル『税理士YouTuberチャンネル』とは!?

登録者数26万人の人気チャンネル『税理士YouTuberチャンネル』とは!?

-Youtube配信を始められたきっかけは何でしたか?
私はどちらかというとマーケティングが得意で、2012年ごろに作ったホームページと並行してWEBでも集客をしようということで始めました。勢いに任せてガンガン集客しようとしていた時期で、人手が足りなかったんですよね。採用にずっと苦労してきたので、人に頼らないで完結するビジネスを創ろうということでYouTubeを始めました。元々セミナーなど人前で話すことが好きでしたし、何となくYouTubeって面白そうだし、できそうだなと。且つ、広告収益が入ってくるので、一つのビジネスに出来るんじゃないかという思いでスタートしました。

-チャンネル開設から一年後に登録者数1万人を超えたということですが、配信する上で工夫されたことはありましたか?
登録者数100人までに半年近くかかりましたし、やはり配信にはかなりの労力がかかるので正直やめようかなと思う時期もありました。それでも、面白いと思えるから続けられたというところがあります。50本くらい動画を配信した頃から数百回の再生回数は稼げるようになってきたので、改善を重ねながら配信を続けることで伸びてきたのかなと思います。

-税理士にとっても、YouTuberとしても大切な、話す力はどのように身につけられたのですか?
専門学校で講師をしていた2年間が大きかったと思います。
始めた頃に受けた研修は今でも覚えていますが、15分間の講義を10名ほどのベテランの先生方の前で行うんです。かなりプレッシャーがかかるのですが、そのために当時何をやっていたかというと、ビデオカメラで自分の姿を撮って良い所や悪い所を研究していました。それが現在のYouTube配信の原点ともいえるかもしれません。セミナーでの話し方と配信での話し方は全く違っていて、それぞれに合わせた話し方をしないといけないので、そこは今も試行錯誤ですね。

-YouTubeのような無料で見られる媒体で展開しようと思った理由は何でしたか?
ビジネスとしての旨味もありますし、事務所の仕事や自分の力だけで世の中の中小企業のみなさんに生きた情報を届けるのは限界があるので、YouTubeならばそこを上手く拡散できるのではないかという2つの理由ですね。ビジネスとしての旨味は広告収益はもちろん、ネット上に資産が構築されていくのでブランディングにもなりますし、課題となっていた採用にも繋がっていっています。しんどいけれど良い事ばかりなので、やめられないなという感じです。

-仕事のやりがいはどういったところに感じますか?
事務所の仕事であれば、お客様が増えたり弊社のサポートを受けて喜んでいただけることですし、スタッフであれば仲間みんなでモチベーション上げて頑張って働いてくれる姿を見るのも楽しいです。YouTubeは生で声が届きますし、たまに街で声をかけて頂くこともあるんですよ。「給付金の情報助かりました!」と喜んでいただいている声を聞けるので、それはすごく自分の中でモチベーションになります。

5年後10年後に思い描くビジョンとは

-今後のビジョンはどのように描いていらっしゃいますか?
ひとまず目先の目標としては、現在15名体制の事務所を来年は20名ほどに増やしたいというところがあります。YouTubeの方は現在登録者数26万人(2021年12月現在2なので、まずは30万人台に乗せたいなと思っています。事務所は弊害がない限りはもちろん大きくしていきたいと考えていて、30名、50名体制へと5年後10年後には描いていきたいなと思っています。YouTubeもやはり100万人登録というのは高い目標としてあるので…事務所経営者としてのYouTuber活動を今後も続けていきたいと思っています。

―税理士を目指す読者へのメッセージをお願い致します。
AIで税理士の仕事はなくなるとメディアなどでは言われていますが、それはメディアが煽りすぎている情報でもあると思っています。確かに仕事の一部分として、年末調整や簡単な確定申告など、私たち税理士が今いらないと思っている作業はなくなる可能性があるかもしれません。

現にコロナ禍でも、逆にプラスになっている状態でもあります。思っている以上に未来は明るい仕事だと思っています。若い頃からお客様が会社の大事な情報を託してくれるという仕事は世の中にはなかなかないですし、それだけやりがいのある仕事です。また、様々なビジネスの裏側を見ることができます。この2点はやはり税理士の仕事の醍醐味だと思います。税理士の資格を取ったからって必ずしも税理士にならずとも応用の効く知識ですし、AIに仕事を取られてしまうのではという不安を抱えている方はまず資格を取ってから考えてみてもいいのではないでしょうか。

5年後10年後に思い描くビジョンとは

ー今回はお話をお聞かせ頂き、ありがとうございました!

今回お話をお聞かせ頂いた田淵宏明氏が代表を務める、ヒロ☆総合会計事務所のHPはこちら! 田淵宏明氏のYouTubeチャンネル、税理士YouTuberチャンネル!! / ヒロ税理士はこちら!

この記事を書いたライター

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