償却資産とは、固定資産税の対象となる固定資産のうち、土地と家屋以外の事業用資産のことです。一般的に「固定資産」と表現したとき、土地と家屋だけが課税対象として税額計算の基礎に算入されると考えられがちですが、実は、固定資産税の対象には土地及び家屋以外の事業用資産も含まれるので、これらを分かりやすく「償却資産」とカテゴライズしています。
そこで、この記事では、償却資産にはどのような資産が含まれるのか、償却資産税額の計算方法や申告手続き・申告時期などの手続き面に至るまで、総合的に解説します。償却資産税の申告範囲や時期については間違いが多いので、適切な形で納税時期を迎えられるように、事前に情報を整理しておきましょう。
償却資産とは、固定資産税の対象となる固定資産のうち、土地・建物以外の事業用の資産のことを指します。ただし、すべての事業用資産が償却資産として固定資産税(償却資産税)の対象となるわけではなく、減価償却額・減価償却費が法人税法または所得税法の定めにより損金または必要経費に算入されるものだけに限られます。
【償却資産とは】
①土地・家屋以外の事業用資産
②減価償却額・減価償却費が損金・必要経費に算入されるもの
土地・家屋については、特段事業を営んでいない個人も固定資産税の支払い義務が課されています。他方、償却資産とは、あくまでも事業で使用される減価償却資産です。したがって、償却資産税の支払い義務が課されるのは、事業を営む個人・法人に限られることになります。
それでは、ここからは、償却資産税の課税対象となる償却資産とはどのようなものが含まれるのかを具体的に紹介します。すべての事業用資産が固定資産税(償却資産税)の課税基礎に算入されるわけではないので、申告の際には注意が必要です。
それでは、償却資産税の対象として算入される事業用資産、償却資産税の対象に算入されない事業用資産について具体的に見ていきましょう。
償却資産税の課税対象になる事業用資産は以下の通りです。
①構造物:舗装路面、庭園、外構工事(門・塀・緑化施設など)、看板(広告塔など)、ゴルフ練習場設備。受変電設備、予備電源設備など。その他の建築設備・内装・内部造作なども含まれます。
②機械及び装置:製造設備などの機械及び装置、クレーンなどの建設機械、機械式駐車設備など
③船舶:ボート、漁船、遊覧船、釣り船など
④航空機:飛行機、ヘリコプター、グライダーなど
⑤車両及び運搬具:大型特殊自動車(フォークリフト、レッカー、ブルドーザーなど)
⑥工具、器具及び備品:パソコン、コピー機、LAN設備、応接セットや陳列棚、看板(ネオンサインや立て看板)、厨房機器、冷蔵庫、医療機器、理容、美容器具、自動販売機など
もちろん、ここに列挙されたもの以外にも、以下の場合には償却資産として申告対象になります。自社における事業用資産の課税上の扱いについて判断が難しい場合には、税理士などの専門家に相談しましょう。
・福利厚生のために使用するもの
・建設仮勘定で経理されている資産・簿外資産・償却済資産・遊休または未稼働の償却資産のうち、賦課期日において事業の用に供することができるもの
・改良費
・使用可能期間1年未満の償却資産・取得価額20万円未満の償却資産のうち、個別に減価償却をしているもの
・グリーン投資減税適用資産や国家戦略特区税制適用資産など、租税特別措置法の規定の適用により即時償却をしているもの
それでは、償却資産の具体的なイメージを掴むために、業種別に代表的な償却資産について見ていきましょう。
・各業種共通の償却資産:パソコン、エアコン、LAN設備など
・製造業:製品製造設備、梱包機など
・印刷業:製版機、印刷機、断裁機など
・娯楽業:ゲーム機、両替機、カラオケ機器など
・飲食業:テーブル、厨房用具、業務用冷蔵庫など
・小売業:陳列棚、ラミネーターなど
・旅館業:客室設備、厨房設備、空調設備、駐車場設備など
・医療関係:医療機器など
以上のように、業種別に償却資産として扱われるものは多岐に渡ります。申告漏れの際には手間かかりますし、場合によってはペナルティが課されることもあるので、事前に課税対象か否かの情報は精査しておくのがおすすめです。
次に、償却資産税の対象にならない事業用資産は以下の通りです。
・自動車税、軽自動車税の課税対象となるもの(自動車、小型フォークリフトなど)
・無形固定資産(電話加入権、ソフトウエア、特許権など)
・繰延資産
・棚卸資産
・耐久年度1年未満・取得価額が10万円未満で、消耗品費などとして経費にしたもの
・取得価格20万円未満の償却資産のうち、税務会計上3年間で損金(経費)に計上したもの(一括償却)
ここからは、償却資産税の納税申告手続きについて具体的なステップごとに紹介します。
償却資産税は、賦課期日である1月1日を基準として算出される税額を、償却資産の所有者が、償却資産がある市町村(東京都23区については都税事務所)に対して申告しなければいけません。
償却資産税の申告は、1月31日までに償却資産が所在する市区町村もしくは都税事務所に申告します。償却資産税の場合、所得税や法人税と異なり、申告側で計算する必要はありません。したがって、申告するのは償却資産の内容のみです。
すでに前年度に償却資産を申告しており、それが償却資産課税台帳に登録されている場合は、12月中に償却資産申告書等又は申告のお知らせハガキが送付されます。他方、新たに事業を開始した場合は、市区町村(東京23区は都税事務所)に連絡すれば、申告書等を送付してもらうことができます。
1月末は申告が大変混み合うので、早めに申告するようにしましょう。
前年度申告された方は、この1年間に増加、減少のあった資産について申告してください。今年度初めて申告される方は賦課期日である1月1日現在所有する全資産について申告する必要があります。
申告について必要な書類は以下の通りです。
・償却資産申告書(償却資産課税台帳):必ず提出ください
・種類別明細書(増加資産・全資産用):新規・増加があった場合のみ
・種類別明細書(減少資産用):減少があった場合のみ
なお、申告の対象となる資産がない方、資産の増減がない方については、申告書の備考欄にその旨(資産なし、増減なし等)を記載して申告してください。
申告内容に基づいて調査が行われ、償却資産の価格などが決定されます。評価額については、減価償却の計算とは異なり、旧定率法の償却率をベースに、資産ごとに計算して評価額が求められます。
償却資産課税台帳に登録された価格等は、市区町村・都税事務所において公示日から閲覧可能です。もし、その登録された価格に不服のある場合は、課税台帳に価格等を登録した旨を公示した日から、納税通知書の交付を受けた日の翌日から起算して3ヶ月以内に審査の申出をすることができます。また、この審査の申出に対する決定について不服があるときは、当該決定に対してのみ取消しの訴えを提起することができます。
償却資産税は、減価償却を加味した償却資産の評価額を基礎として、1.4%の税率で計算されることで税額が算出されます。ただし、償却資産税には免税点があり、その年の評価額が合計で150万円未満の場合には、償却資産税はかかりません。
もし、課税内容に不服がある場合は、その処分があったことを知った日の翌日から起算して3ヶ月以内に審査請求をすることができます。
償却資産税は、4回に分けて分納できます。例えば、東京23区の場合は、6月、9月、12月、翌年2月の年4回で分割納付となります。
償却資産税について申告漏れがあった場合には、最大5年を限度に遡及して支払わなければいけません。また、正当な理由なく申告しない場合には、過料が科されたり、不足額について延滞金が徴収されるおそれもあります。さらに、虚偽申告が発覚した場合には、罰金などの処分が下されるケースもあります。
償却資産税は、どこまでの事業用資産を申告すればよいか判断が難しいケースが少なくありません。後からペナルティなどを課される前に、事前に税理士などの専門家に相談して、適切な申告を心がけましょう。
事業を展開する以上、法人税などの各種税金の申告は重要なポイントとなります。賦課期日直前に事業用資産に関する情報を整理しはじめても間に合わない可能性があるので、顧問税理士などに適宜依頼をして、修正申告などの手間が生じないようにしましょう。