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「意識を高く持ち、自分の判断軸で動く」株式会社ミルボン経理・財務統括マネージャー加藤正昭氏がキャリアの中で心掛けてきたこと

HUPRO 編集部
「意識を高く持ち、自分の判断軸で動く」株式会社ミルボン経理・財務統括マネージャー加藤正昭氏がキャリアの中で心掛けてきたこと

「美しさを拓く。 Find Your Beauty」をコーポレートスローガンに、美しい髪を創る分野に絞り込んだ事業を展開している株式会社ミルボン。現在経理・財務統括マネージャーを努める加藤正昭氏は、新卒で入社以来、7年目で子会社設立の内部体制構築、11年目で国際財務マネージャーと、責任のある業務を次々と任されてきました。経理・財務の枠にとどまらず同社のチャレンジを支え続ける加藤氏が社内で辿ってきたキャリア、その背景に持っていた考え方などについて、HUPRO編集部が詳しくお話を伺いました。

【キャリアグラフ】

製造業の経理への興味からミルボンへ入社

-最初に、学生時代のことをお聞かせいただけますか。

大学では経営学部、会計経営システムコースに在籍し、一般的な経理に関しての知識や会計などを学びました。もともと数字や計算は得意だったのですが、特に興味を覚えたのは簿記。勉強していくなかで、簿記ができれば企業をより理解できるのではないか、というイメージを抱きました。

在学中は会計関係の資格で言えば、FP技能士、AFP、簿記などを取得しました。学部的にも同級生の中に、公認会計士や税理士を目指す方が多くいました。専門学校にこもり熱心に勉強をする周りの環境に影響を受け、資格を取得してみようかなと考えました。

-新卒でミルボンに入社された動機やきっかけは何だったのでしょうか。

実は就職活動をするまで、ミルボンのことは知らなかったんですよ(笑)

僕が就職活動をしたのは、雇用環境が厳しかった就職氷河期。狭き門だったこともあり、大学で勉強をしたことを活かせるのは経理か営業かな、と、業種や業界を絞らず活動していました。そのなかで見つけたのがミルボンの経理財務の募集。漠然とですが製造業の会計・経理に興味があったので応募をし、採用されて現在に至ります。

「質問」と「意識」で成長した新人時代

-興味のあった製造業の経理部門、実際はどうでしたか。

最初に担当したのは債権管理、売上管理などの管理会計業務でしたが、正直実務は勉強とは全然違いました。簿記で仕分けの勉強はしてきたものの、日々変わりうる状況の中で、どういう取引が行われ、どういった形でお金が回っているのかなど、わからないことだらけの毎日だったので思い描いていた経理のイメージとは違いました。

当時は驚きましたが、ただ、新入社員なので分からないことがあるのは当然と思い、「3年間はとにかく学ぼう」と決めていました。とにかくいろんなところで、たくさんの方にお叱りをうけたのを記憶しています。

大事にしたのは、とにかくコミュニケーション、特に礼儀とマナーでした。先輩や上司は経験があるだけに、話の中で新人の僕が知らない言葉も沢山出てきます。それを一つひとつ「すみません、教えてください」と聞いて理解していきました。分からないものは分からない。嫌な顔をされようが、分かったふりは絶対にせず、きちんと質問をすることを心がけました。

-新人時代に学んだことで、現在に活きていることはありますか。

意識を働かせながら仕事をすること、ですね。

先輩や上司から指示があると、僕はその指示の背景を知って納得してから取り組みたいタイプです。ただ、経理の仕事には期限と納期があるので、なかなかそこまでは説明してもらえない。そこで他部署の人に聞いたりしつつ、断片的に得た知識を繋ぎ合わて、自分なりの答えを見つけようとを意識しました。

企業で働く以上は事業戦略を頭に入れておかなければなりません。指示を受けた時に、上司が何について話しているのか、どの案件のことなのか、現在どんな懸念があるのかに考えを巡らせ、更に、将来同じ立場になった時に原理原則は何なのかを根底としつつ、自分だったらこう判断する、という判断軸を持つように心がけました。この意識、マインドセットは、今自分が業務を行う上でのベースになっています。

「失敗」と「責任」でタフさが増した中堅時代

-入社3年目以降、担当される役割が増えていらっしゃいますね。

必死に頑張ったので、できる業務の幅が広がりました。この時期は支払い関連、固定資産管理や会計システム管理、従業員精算システム導入などを担当したほか、決算のための開示資料の作成にも携わり、大きな自信がつきましたね。

決算発表期日は、発表の結果を受けて株価が動くんです。いい成績が出たときの、決算を乗り切った達成感はなんともいえません。ただ、決算前の経理部門はかなりの激務。当時は現在ほどシステム化が進んでいなかったので、各事業部門から届いた紙のデータをもとに決算資料を作っていました。当然生産性が低く労働時間が長くなる。いつかこの仕組みを変えたいと思ったことは、その後のシステム導入に繋がっています。

大企業の経理部門は会社の一部しか見ることができない。その点、当時のミルボンの規模なら会社とともに自分が成長できるというのが入社を決めた理由の一つで、実際にその通りになりました。

-お話を伺うと着実に成長されてきたようですが、失敗談やそこから学ばれたことはありますか。

ありますよ、大きいコトが。4年目だったか、期日を間違えて一カ月早い手形の支払いを出してしまったんです。支払わなくてもいい時期に早めに支払うということは、会計関係の資金繰りにも大きな影響があります。当時の常務が「支払いの方だから、一カ月早くしてあげたと堂々としていればいい」と言ってくださったさり、会社の懐の深さに触れましたが、当時は随分気持ちが落ち込みました。

ただ失敗したことをいつまでも気にしていても仕方がない、次にどう対策をするのか、どう手を打つのか。誰にでも間違いは起こり得るので、その後の改善策を考えることこそ大事だと、ひしひしと感じた経験でした。

責任感は人一倍強いので、任される業務が増えていくプレッシャーは常にありました。それでも、やるべきことはやらなければならず、環境に適応し心が強くなっていったのもこの時期です。

タイの現地法人設立に全面的に関わる

-タイの現地法人設立に携わったお話をお聞かせいただけますか。

手形の間違いから這い上がったころ、タイに工場を設立する計画が持ちあがりました。財務部門が内部体制の構築などを含め統括的に立ち上げをサポートすることになり、僕がプロジェクトにメインで携わることになったんです。

現地の経理スタッフの募集・面接などの採用活動や予算組み、運用処理などの会計周りだけではなく、就業規則、契約などの法務領域も含めて、内部体制の構築に関わりました。採用した経理マネージャーの教育も僕が受け持ったので、2-3年の間は、1年の半分くらいはタイに出張していました。

-かなりハードな時期だったのですね。辛い瞬間などありましたか。

現地で採用した経理担当者がなかなか定着しなかった時ですね。採っては辞めて、また採っては一から教育し直して、を繰り返していた時期がありました。現地法人の方々との関係性の構築にもかなり心を砕いていたのですが、なかなか思ったように進まず、本社からも叱責をうけたりして、会社員人生のなかで一番へこんだ時代です。

やっていたことは経理というより経営に近い状況。任せられてやりがいはあったのですが、タイ工場だけを担当していたわけではなく、国内での業務も山積みでした。この時期は心身ともに限界を感じることも多かったです。ただ、「今ここで投げ出さずにやり抜けば、1年後の今日見える景色は絶対に変わっている」と考えることで、自分を支えていました。

-どうやって苦境を乗り越えられたのでしょうか。

とにかくコミュニケーションを工夫しました。メールだけではなく、オンライン会議で顔を見つつ簡単な英語でやり取りをしたり、必ず月1回出張したり。仕事上のコミュニケーションだけではなく、仕事のあとに一緒に食事に行ったりして、プライベートでも関係性を構築するように努めました。このやり方で少しずつ信頼関係を築けたことで、経理スタッフが定着してくれるようになりました。

判断に悩むことがあります。悩んでいることを察知して背景や必要性を説明してあげることで、タイの経理マネージャーが常に相談してくれるようになり、良い関係を築けました。1年後にこうなる、と信じてやってきたことが現実になったんです。何よりこの時苦境を乗り越えられたのも、周りのサポートや支えがあってできたと、感謝の気持ちを強く持ちました。

国際財務マネージャーを経て、経理・財務統括マネージャーへ

-2015年には国際財務マネージャーに就任。具体的にどんなお仕事ですか。

この時期に一気に発生していた海外での子会社の立ち上げを一括して任されました。タイの製造工場以外にも駐在事務所や子会社の立ち上げがあり、その全てを僕ともう一人の二人で担当しました。

さまざまな国を見る統括マネージャー的な立場だったのですが、新しい経理採用のアドバイスや採用面接の立ち合いといった財務領域以外に、代理店戦略や人事戦略などの相談を受けることもありました。信頼関係を築く前提として大切にしてきたのは、財務の強みは強みとして、他のこともカバーしていくこと。専門分野でなくても、まずはギブしないとテイクはできない。もう一人にスタッフとそんな話ばかりしていました。

その結果、財務のことでなくても、いまでも海外の代表の方が相談してくれます。「ちょっと相談したいんだけど」「こういう風に考えているんだけど、どう思う?」など、海外の代表の人としっかりとした信頼関係がこの時期に築けたという実感があります。やればやるだけ感謝される。「助かった、ありがとう」の一言があったから頑張れた、やりがいを感じられる仕事でした。

-やりがいをお話いただきましたが、反対にご苦労はありましたか。

「国際財務のことだけをやっていればいい訳じゃない」と、国内のことも任され、一気に業務が増えたことですね。国際・国内両方の経理と財務を見ることを求められ、将来のことを見据えての悩みも増えてきました。

ミルボンには「つぶれない会社を創る」というイズム、言わば信念があります。永久的に続く企業にしようと考えた時に、どういう組織であればちゃんと続いていくのか。ミルボンの考え、イズムが続いていくように次の世代を担う人材が育っているのか。現在の経理・財務は幅広い業務を行っているが、将来の財務戦略を設計して、資本効率や投資効率をより経営的な視点を考えなければならないのではないか。重い責任を感じ、そんな将来のことを考えてより思い悩むようになりました。期待よりも不安が多かった時期です。

-その後、いよいよ2019年には経理・財務統括マネージャーになられた。実質的な経理・財務のトップになられていかがですか。

グループ全員に対しての責任が圧し掛かっている感じですね。グループ全体の財務計画・投資計画の立案や資金管理、現地法人の海外進出などを、中期の事業計画に沿って財務戦略画を立てて包括的にコントロールしています。ミルボンが今後どうなっていくのか、延長線ではなく、5年・10年後にこうなりたいから逆算して、そうなるために必要な投資効率・資本効率、利益の配分などを戦略としてしっかり考えています。より経営に近い立場でお仕事させて頂ける環境にはとてもやりがいを感じていました。

-マネージャーとして、部下を育てるうえで意識していることはありますか。

きちんと意見を聞くことですかね。意見を聞いて納得できるところは、提案をしながら、部下が自分の意見を元にして動けるようにします。責任感を育てるためです。逆に見当違いな意見の場合は、はっきりと「それは違うね」と言いますが、考えて意見を出したことは褒めるように心がけています。

ありがたいことに、メンバーはみんな素直で向上心と責任感があるので、仕事はどんどん任せています。実際に僕は実務は一切していません。ただ、どこまで介入するか、どういう形でフォローすればいいか、その基準が人によって違います。SOSが出ているのか、自分で試行錯誤しているので触れない方がいいのか、調整のさじ加減にはいつも悩みます。仕事の3割ぐらいは、部下の観察に気を取られていますね。

価値観が変わっていくなかで、働き方も含めてどのように永続的、継続的な企業を目指すのか。例えば僕がいなくなってもきちんと回りますよ、という強い組織を作る必要があります。どうしたら、いかなる状況でも回る体制を作れるのか、しっかりと将来を見据えて考えなければ、と思っています。

将来のビジョンと管理部門の魅力

-5年後・10年後にどうなっていたいか、思い描くビジョンはありますか。

ミルボンの挑戦を経理・財務の面から支えていきたいですね。ミルボンは新しいことを、単なる発想レベルではなく、きちんと事業化していける、楽しさや夢のある企業です。

この会社に17年いて、5年10年前を振り返るとかなりの変化がありました。同じように、きっと5年後10年後も大きく変わっているはずです。国内では美容産業の創造、海外ではアジアで揺るぎない存在となり、さらにヨーロッパの事業拡大。最終的には業務用ヘア化粧品の分野で世界トップを目指しています。

僕がいる間にどこまでいけるのか。

自分が何ができるのかをしっかり考えて、チャンスや刺激を楽しみつつ、中長期で構想していることが実現できれば、と強く思います。

-最後に、経理・財務部グループを目指す人に向けて、求められる人材像や管理部門の魅力をお教えいただけますか。

経理や財務は業種・業界を問わず普遍的なところがあるので、姿勢・スタンス・やる気が大切です。内向的なイメージがありますが、それは実情とは異なる。お金はどんなことにも絡んでいますので、社内でやりとりをする機会や折衝をする場面がたくさんある部署で、コミュニケーション能力は欠かせません。

弊社の管理部門の例でいうと、強みは目的意識。経理や財務は従来の慣行を引き継ごうと思えばできる部署ですが、成長するためには、目の前の仕事は何のためにやっているのか、どんな目標のために必要なのかを常に考えて、目的を持って無駄なく合理的に業務を遂行するマインドが必要です。

企業はヒト・モノ・カネで成り立っていますが、お金が無いと何もできません。経理・財務部門は、事業計画や投資計画など、会社の将来に財務戦略から関われる、魅力ある仕事です。加えて、異なる業務を行っている多様な人との関りも多く、コミュニケーションをとる難しさや楽しさがある。数字を可視化して他部門との折衝することで、会社が変わっていくことを数字で実感できるのが、面白さを感じる部分ではないでしょうか。

-本日はお時間をいただき、ありがとうございました。

今回お話をお伺いした 加藤正昭氏が経理・財務グループ 統括マネージャーを務める 株式会社ミルボンのHPはこちら!

この記事を書いたライター

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