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経営者のパートナーとしてともに荒波を超えていく。税理士法人 ブラザシップの軌跡とこれからの歩み

HUPRO 編集部
経営者のパートナーとしてともに荒波を超えていく。税理士法人 ブラザシップの軌跡とこれからの歩み

加藤氏の経歴

2003年 監査法人トーマツ入所
2008年 加藤会計事務所 独立開業
2014年 税理士法人ブラザシップ設立

松原氏の経歴

2002年 中央青山監査法人入所
2006年 ティー・ハンズオンインベストメント株式会社入社
2014年 税理士法人ブラザシップ設立

専門学校の同級生としての出会い

HUPRO編集部(以下、-)
-公認会計士を目指したきっかけを教えてください。
(松原氏)
自分にしかできない仕事をしたいと考え、この職を選びました。知人の公認会計士から「経営者のパートナーとして、一緒に企業を良くしていく仕事」だと聞き、興味を惹かれたのがきっかけです。
私が公認会計士を目指し始めたのは大学4年生の後半です。就職活動をしていたのですが、なかなかやりたい仕事が見つかりませんでした。当時は、終身雇用が当たり前ではあるものの、これから雇用形態は変化するかもしれないという予兆も見受けられました。そのため、将来困らないようにプロフェッショナルの道を選んだのです。

(加藤氏)
私は影響力のある人間になりたかったからですね。何かを成し遂げたかったです。
税理士として仕事をする父を尊敬していたので、そちらの道に進もうと考えました。一方で、多様な経験をしたかったので、父と同じ税理士ではなく、公認会計士を目指しました。

-公認会計士を取得するため、どのように勉強されていましたか?
(松原氏)
私が専門学校に通い始めたのは、大学卒業間際でした。大学の同級生は就職していき、自分だけ取り残されるという感覚がありましたね。大学卒業後は、実家に帰って専門学校に通ったのですが、肩身が狭いわけです。無職ですから。だからこそ、その状態から脱却するために360日、1日10時間勉強するという生活ができたのだと思います。2回目の試験で合格したので、3年弱はそのように過ごしました。
今はチャンスがたくさんある時代ですが、私の頃は「第二新卒」などという言葉自体ありませんでした。それくらい「成功」とされる道から一旦離れたら、取り返しがつかないという風潮があったので、危機意識は強かったです。

(加藤氏)
松原とは専門学校の同級生だったのですが、私も似たような状況でした。父が税理士なので、理解はあった方だと思いますが、プレッシャーは大きかったです。私は松原の1年あと、3回目の試験で合格しました。

-働きながら勉強することは考えなかったのですか?
(加藤氏)
私達の時代は、働きながら勉強する人はほとんどいませんでした。現在は制度が変わったので分かりませんが、当時は無職の状態で臨まないと受からなかったです。努力することは前提として、合格するためにはチャンスを掴めるかどうかも重要だと感じました。

ブラザシップまでの互いの道のり

-公認会計士試験合格後のキャリア選択について、お話を聞かせてください。
(松原氏)
当時は、監査法人に関しては売り手市場でした。先ほどお話しした通り、プロフェッショナルとして仕事をしたいと考えていたので、一般的な流れに従い、監査法人に入所しました。
結論から言うと、監査法人の仕事は私に全然向いていませんでした。監査は、投資家が企業の粉飾に騙されないようにチェックする仕事です。しかし、投資家に直接会うことは当然ないので、仕事をして感謝されるという経験がないわけです。段々自分の仕事が、どれだけ価値を生んでいるのかと疑問を持つようになり、そこが見えないことが苦しくなっていきました。もっとクリエイティブな経営判断をする仕事に魅力を感じて、公認会計士補ののち、公認会計士に受かってすぐに監査法人を退所しました。

-そのあと、ベンチャーキャピタルに入社されています。なぜ、事務所ではなく、ベンチャーキャピタルを選んだのですか?
(松原氏)
私が転職したベンチャーキャピタルはハンズオン型のファンドで、出資を行うだけではなく、社外役員として企業に加わり、一緒に経営を考えていくという形式を取っていました。知人に誘われ、非常にやりがいを感じて興味を惹かれたので、転職を決めました。これが結果的に非常に良い選択だったと思っています。

少人数で仕事をしていたので、業務の幅が広く様々なことを経験しました。投資先の発掘から、投資決定や金額の検討、投資したあとのフォロー、ファンド自体の運営まで、全てです。ベンチャーキャピタルは、数あるベンチャー企業の中から、経営者の人柄なども含めた事業の将来性を見て、投資するか判断します。そこの見極めが如実に成果として現れる仕事だったので、非常にシビアですが、同時にやりがいも強く感じました。
ベンチャーキャピタルで働いたことにより、企業の経営に携わり、お客様のチャレンジを後押しすることができました。このような経験をしたからこそ、危機察知や多角的なアドバイスができるようになり、今の仕事にも活きているのだと思います。

-加藤先生もキャリア選択について、お話し頂けますでしょうか。
(加藤氏)
私の時も、同様に売り手市場で、その中でも大手と言われる監査法人に興味があったので、デロイト トーマツに決めました。その時は父の事務所を継ぐことは考えていませんでした。多様な経験をしたいと考えていたのと、自分に事務所の仕事は向いていないと思っていたからです。
父の事務所を事業継承することになったのは、父の急死がきっかけでした。人生これからという時だったので理不尽さを感じたものの、素晴らしい事務所を残してくれたので、それを閉めるという選択肢はありませんでした。むしろ、さらに事務所を立派にして、父の生涯を意味あるものにしたいと考え、継ぐことを決心しました。

-事業継承のタイミングで、二人で活動を始めたのですか?
(加藤氏)
最初は、家族に手伝ってもらいながら、1人で事務所を経営していくつもりでした。松原はその頃、まだベンチャーキャピタルで働いていましたし。
事務所を継いだ当初は、お客様は離れていくのではないかと不安でした。お客様は私について全く知らないですから。でも、結果として一社も離れることはありませんでした。「先代にお世話になったから、君に引き続きお願いする」と、皆さんおっしゃってくださって。なかなか言えることではないですよね。そこから、父が残してくれた大切なお客様の役に立ちたいと強く思うようになりました。

会計事務所として、中小企業のお客様と仕事をしていく中で、どこも財務・会計を課題としていることに気付きました。経営者が人格者で営業力もあるのに、業績が伸びきらない理由は、絶対にこれだと確信を持ちましたね。
私達のメインのお客様である中小企業は、99%が税理士を外部委託して税務業務を任せています。税理士は企業の財務・会計の内容を知りつつ、それを税務申告にしか利用していないという状況は非常にもったいない。税理士が企業の財務・会計を把握した上で、経営支援に生かせると、もっと日本の中小企業は活性化するはずです。これが実現できれば、お客様に受けた恩を返せると思いました。
実際、財務・会計の知識を活かして、コーチングスタイルで経営者の内発的な答えを引き出していくと、お客様の業績が良くなっていきました。私が成功する姿を見せれば、きっと追随してくれる人が出てくると信じ、事務所を大きくしようと考え始めたのはそこからです。

(松原氏)
ちょうどその頃、私がいたベンチャーキャピタルが10年の期限を迎えようとしていました。自分の勤め先がなくなるという話を、周りにはなかなか話せずにいたのに、なぜか加藤だけにはすんなりと話せたのです。そうしたら、加藤がすぐに会いに来て、一緒に事務所をやろうと誘ってくれました。彼がやろうとしていた中小企業向けの支援は、非常に社会的意義があることだと、すぐに分かりました。未開拓の市場で自分が今まで培ってきた力が役立ちそうだと考え、加藤の話を受けましたね。

(加藤氏)
松原は父とも仲が良くて、昔は3人で食事に行っていました。その時に父から冗談で「2人で事務所を経営しろ」と言われたことがあって。その時は私も継ぐつもりがなかったので、笑い話で終わったのですが、結果的に父の言葉が実現しているので、喜んでいると思います。

経営者のパートナーという存在

-経営支援を行う上で心がけていることはありますか?
(松原氏)
やっぱり経営者が主役だということです。彼らが持っているポテンシャルを引き出すのが私達の仕事であり、それができないのは自分の力不足だと思っています。
想像以上に、経営者は数字に苦手意識がある方が多いです。しかし裏を返せば、そこさえ手当てできれば、経営者の能力をもっと発揮できるということです。経営者に対する信頼感を忘れずに、私達が良きパートナーとして力を引き出していけば、絶対に企業を良くできるという自信があります。

-事務所を承継した8年間で売上が10倍になったということですが、こちらは経営管理に力を入れた結果ですか?
(加藤氏)
先ほど話した通り、会計事務所の潜在的な強みに気付いたのが全てだと思います。既にそれに気付いていた人もいたかもしれませんが、誰も挑戦しなかったのは、そこに大きな壁があったからです。でも、私はお客様に受けた恩を絶対に返すという強い思いがあったので、諦めませんでした。
あとは、元々1人で会計事務所を運営していたというのも大きいと思います。自分の思いに共感してくれる仲間を集めて、自由に組織を作れました。もっと大人数の組織では、なかなかできなかったことでしょう。
最初に松原を誘えたのは本当に幸運でした。彼が来てくれたおかげで、組織の大部分は出来上がったので、あとは私と彼の考えに共感してくれる人を集めるだけでしたから。

-社員のエンゲージメントを重視していらっしゃるのですね。そちらを高める上で、何が1番重要だと思いますか?
(加藤氏)
私達の経営理念は「全職員の物心両面の幸福を追求し、社会に貢献する」です。社員の幸福を追求することが最も重要で、ここを曲げないからこそ、社会貢献ができる。いきなり遠いところから良くしようと思っても上手くいかないですよね。やっぱり、働きかけるなら身近な人からということです。エンゲージメントを高めることは、組織が成り立つために、マストなことだと考えています。

-他に組織体制を整えていく中で、重視している点はありますか?
(松原氏)
私も加藤と同じく経営理念が1番だと考えていますが、それ以外だと「採用」ですね。私達の理念に共感する人を集めることを重視しています。
もちろんスキルはとても大事ですが、それよりも「社会人としてどうなりたいか」、「中小企業に対する思い」などが、私達と合致する人を求めています。本気で相手を良くしたいという思いを持ち、組織として成果を上げることを重視できる人材で、誠実かどうか。採用は全く妥協しません。

-今後の展望についてお聞かせください。
(加藤氏)
会計事務所業界において、圧倒的な存在になることを目指しています。私達が憧れの存在になることによって、共感してくれる人が増えるかもしれません。社会インフラともいえる会計事務所が活性化することによって、中小企業も元気になる。そうすれば就労人口が増え、失業が減り、幸せな人が増えるのではないかと考えています。

(松原氏)
売上として10憶円を達成することです。私達がそれを成し遂げることによって、お客様が直面する様々な困難を、経験できると考えています。そこから新たな価値提供に繋げていきたいです。
加えて「会計事務所の新しい未来をかたちづくる」ことをビジョンとしています。AIやITが発達していく中で、従来の会計事務所の業務は段々縮小していくと考えられています。今はマイノリティですが、将来的には、私達が行っている経営のアドバイスや資金調達という業務を、全ての会計事務所に求められる時代が来るでしょう。そのような時代に乗り遅れる事務所が少しでも減るように、私達の仕事をスタンダードにできるような活動をこれからもしていきたいですね。

-最後にHUPRO MAGAZINEの読者に向けてアドバイスをお願いします。
(加藤氏)
私達が行っている業務は、会計事務所業界の価値を最大限に発揮した方法の1つであり、もちろん違うやり方もあると思っています。残念ながらこの業界に対して、衰退していくというビジョンを持つ人がいるかもしれませんが、それは1つの側面しか見ていないと言わざるを得ません。会計の未来は明るいです。働く場所をしっかりと選んで、自分の価値を出してほしいと思います。健全なプライドを持って働くということを、ぜひ考えてほしいです。

(松原氏)
私は紆余曲折を経て、加藤のおかげでこの仕事に就いていますが、今考えても幸運だったなと思っています。それくらい財務・会計の仕事は重要です。世間ではこれからなくなっていくと言われていますが、実際は処理が簡易になるだけで、経営者のパートナーという存在として残り続けると思います。ぜひ仕事にプライドを持ち、自分を磨き続けてください。

-本日はお話を聞かせて頂き誠にありがとうございました。

今回お話を伺った加藤氏と松原氏が務める税理士法人 ブラザシップのホームページはこちら

この記事を書いたライター

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