「被保険者賞与支払届」とは、賞与、いわゆるボーナスを従業員に支給した際に、管轄の年金事務所または事務センターに提出すべき書類です。本記事では被保険者賞与支払届について経営者や経理担当者が知っておきたい手続きの流れを解説いたします。
一般的にボーナスと呼ばれる賞与は、会社が従業員に対して特別に支給する給料のことです。支給時期は一般的に夏と冬(主に6・12月)が多く、中には決算月にも支給する会社もあります。賞与は社会保険料率や所得税の計算方法が通常の給与とは異なっています。そのため、賞与の支給は年3回以下と決められており、4回以上の支給は賞与ではなく給与とみなされますので注意が必要です。
賞与は毎月の給与とは違い、会社に法律上の支給義務はありません。そのため、支給のルールや時期に関しては会社が自由に決められます。業績によっては減額されたり、支給されなかったりする場合もあるのです。しかし、賞与を支給する前提で採用するのであれば、労働基準法第15条により、雇用の際にはあらかじめ賞与の有無を明記する義務があります。
「被保険者賞与支払届」とは、賞与を支給している会社が、管轄の年金事務所または事務センターに提出しなければならない書類です。賞与についても健康保険・厚生年金保険については毎月の保険料と同率の保険料を納付することになっていますので、きちんと届出を行う必要があります。もし提出を忘れたり、内容にミスがあったりした場合、雇用被保険者にとって、後の年金受給額にも関わる重要な書類なのです。
被保険者の賞与支払届に必要な書類は、以下の2つです。
・各従業員の賞与の支払額を記載している「被保険者賞与支払届」
・支払合計人数と支払合計額を記載している「被保険者賞与支払届総括表」
この2つの書類を、管轄の年金事務所または事務センターに、賞与の支給日より5日以内に提出する必要があります。
仮に賞与の支払いがなされなかったとしても、「被保険者賞与支払届総括表」に賞与の支給の有無を記載して提出する必要がありますのでご注意ください。
事前に被保険者と賞与支払月を年金事務所または事務センターに届出をしておくと、賞与支払予定月の前月に、被保険者情報が印字されたものが郵送されてきます。
届出をしていない場合は、あらかじめ管轄の年金事務所に資料を請求しましょう。
賞与の支払い月を申請している場合は、仮に提出を忘れても支払日の2ヶ月後に年金事務所から賞与支払届督促状が送られてきます。
被保険者賞与支払届・被保険者賞与支払届総括表を提出すると、年金事務所または事務センターから「保険料決定通知書」が送付されますので、社会保険料のチェックを行い、賞与支払月の翌月末までに、通常の社会保険料と一緒に納付します。
提出は書面のほかに、CDやDVDなどの電子媒体で提出する方法があり、これは被保険者賞与支払届に限らず、社会保険事務全般の書類に対応しています。電子申請をする場合は、電子証明書の取得に費用が掛かりますが、事務の簡略化という点では検討してみても良いかもしれません。
参照ページ:日本年金機構 社会保険事務を担当されている皆様へ
被保険者賞与支払届は、賞与の支給日より5日以内に提出する必要があります。もし提出漏れがあった場合は、「事業主からの自主的な申出にかかる申出者リスト(賞与支払届提出もれ用)」という書類を用意して、管轄の年金事務所または事務センターへ速やかに相談してください。
気を付けたいのが、賞与を支給後2年以上経過すると、保険料の徴収時効が成立してしまうことです。そうなると、被保険者の将来の年金額に反映されず、将来の年金額が減額になるなどといった不都合が生じますので、しっかりとスケジューリングを組んで提出漏れを防ぐようにしましょう。
被保険者賞与支払届、被保険者賞与支払届総括表の用紙ならびに記入方法については、日本年金機構のサイトに詳しい記入例があります。用紙はPDFの他にエクセルでも提供されていますので、手書きではなく電子データで作成することも可能です。
参照ページ:日本年金機構 賞与を支給したとき
※手書きの場合に記入ミスなどにより訂正する場合は、該当部分を二重線で消し、上に新しい金額などを記入します。もし、該当部分が多い場合は、その行をまるごと二重線で消し、別の行に正しく記入し直します。
「被保険者賞与支払届」「被保険者賞与支払届総括表」の手続きについては支給から5日後までとなかなかタイトなスケジュールとなっています。毎月の給与に比べると、賞与のスケジュールは変則的なため、ベテランの担当者であっても管理をしっかりしていないと見落としてしまう可能性も。被保険者の将来の年金額に関わる重要な書類のため、しっかりと業務フローに組み込み、処理漏れがないようにしましょう。
賞与は一般的に年2回、6月と12月に支払われることが多いです。いわゆる「ボーナス」を支払う場合、賞与を支給している会社は「被保険者賞与支払届」を管轄の年金事務所または事務センターに提出しなければなりません。
提出は書面のほかに、CDやDVDなどの電子媒体で提出する方法もあります。これをしっかりと提出しなければ、被保険者の将来の年金額に関わってくるので、余裕を持ったスケジュールを組み、管理を徹底していくことが大切でしょう。