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取締役の辞任で必要な手続きとは?権利義務取締役ってなに?

HUPRO 編集部
取締役の辞任で必要な手続きとは?権利義務取締役ってなに?

この記事では、会社の取締役が辞任する際に必要な手続きについて解説いたします。取締役は勤務先の会社とは「委任契約」を結んでいますので、取締役側の意思表示でいつでも辞任することができます(ただし、権利義務取締役の問題は生じます)一方で、取締役は「雇用契約」を結んでいる一般的な従業員とは扱いが異なることに注意しておきましょう。

取締役が辞任した場合の手続き

取締役は、勤務先の会社と「委任契約」という契約を結んでいる扱いになっています(会社法330条)
「雇用契約」を結んでいる一般的な従業員とは、以下のような点で扱いが異なります。

①取締役は本人の意思でいつでも辞任することができます(従業員の場合は2週間前の退職予告が必要です)
②取締役の氏名や住所は登記事項となりますので、法務局で登記変更の手続きを行う必要があります。

それぞれの内容について、順番に解説いたします。

取締役はいつでも辞任できる

法律上、取締役はいつでも辞任することができます。委任契約は口頭で伝えるだけでも解消することができますが、後日の法律トラブルを予防し、登記手続きを完了するために「辞表」などの書類を提出するのが一般的です。(従業員の退職では「退職願」を提出しますが、取締役など会社と委任契約を結んでいる役員は、「辞表」や「辞任届」を提出します)

取締役は会社に対して「善管注意義務」を負っている

ただし、取締役はいつでも自由に辞任できるとはいえ、会社にとって明らかに不利益な時期の辞任は避けるのが賢明と言えます。というのも、会社と委任契約を結んでいる取締役は、会社との関係で「善管注意義務」という義務を負っているからです
(委任契約を結んでいる当事者は、当然に善管注意義務を負うことになっています:民法644条)

善管注意義務とは、簡単に言えば「会社の利益になるように誠実に職務を行わないといけない」という法律上の義務のことです。取締役の辞任がこの善管注意義務に反するとみなされた場合には、辞任によって会社に生じた損害を賠償する義務が課せられる可能性があります。健康上の問題などが生じた場合を除き、業務引き継ぎもなく繁忙期などにいきなり辞任するといったようなケースでは、取締役は会社に対して損害賠償義務を負うリスクがあることを理解しておきましょう。

権利義務取締役とは?

取締役といえども、自由に辞任できない可能性があります。
一人の取締役が辞任することによって、定款や法律で定められている取締役の必要人数が満たせなくなるケースもあるからです
例えば、取締役会を設置している会社では取締役は3名以上いなくてはなりません。そのため、もともと3名いた取締役のうち1人が辞任したとすると、その会社は法律上の要件を満たしていないことになっています。
こうした事態を避けるために、取締役の辞任後に必要な人員補充が行われるまでは、会社に対して辞任の意思表示をした取締役は、取締役としての法律上の権利義務を引き継ぐことになります。簡単に言えば、会社に辞任を伝えたとしても、欠員が埋まるまでは取締役としての地位と義務は継続することになります。こうした扱いの取締役のことを「権利義務取締役」と呼びます。

取締役はいつでも辞任できるのが原則ですが、例外的なケース(辞任後に必要な人員が埋まらない場合)では辞任していない扱いとなることを知っておきましょう。なお、取締役が辞任の意思表示をしたにもかかわらず、会社がいつまでたっても公認の取締役を選任しないことも考えられます。このようなケースでは、辞任する取締役は裁判所に対して後任の取締役を選任するよう申し立てを行うことが認められています。

辞任の場合は議事録の作成は不要

なお、取締役の辞任に際して「議事録」は基本的に作成する必要がありません
(取締役会議事録・株主総会議事録の両方が必要ありません)
次で見る「②登記変更の手続き」においても、これらの議事録の写し等が求められることがないからです。ただし、株式会社の決議によって強制的に取締役を「解任」する場合には株主総会議事録が必要となります。取締役が自発的に辞任する場合と、強制的に解任する場合とでは扱いが異なることに注意しておきましょう。

法務局での登記

取締役が辞任した場合は、辞任の日から2週間以内に法務局で登記を行わなくてはなりません。登記を行う際には、取締役が退職したことを証明する書面が必要となります。
取締役本人が自発的に退職した場合(辞任した場合)には、本人が提出した辞表や辞任届などの書類を使うのが一般的です。これらの書類には、取締役本人の署名や記名押印が必要です。
一方で、株主総会決議などによって強制的に取締役を解任した場合には、株主総会議事録などを法務局に提出する必要があります。なお、上で見た辞任した取締役が「権利義務取締役」である場合には、必要な欠員補充がされるまでは登記を行うことができません。取締役の辞任があった場合には、2週間以内に欠員の補充を行なった上で、登記の手続きを完了する必要があります。

まとめ

今回は、会社の取締役が辞任した場合に必要になる手続きについて解説しました。取締役は通常の従業員と異なり、法律上重要な義務が課せられているといえます。辞任は取締役の意思で自由に行えるのが原則ですが、辞任によって会社に不利益を与えてしまうようなことは避ける配慮が必要です。

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