固定資産を取得して悩むのが、取得にかかった費用をどこまで取得原価に含めて計上すれば良いのかです。
取得原価に含めるのか否かで費用に影響しますし、利益又は損失の額も変動するので、適切に計上しなければいけません。
今回は、固定資産の取得価格に関する会計処理について解説していきます。
土地や建物などの固定資産を購入した際には、固定資産自体の購入価格(購入代価)のみならず購入に関わる費用がかかることも多いです。
取得に関わる費用は付随費用と呼ばれ、固定資産を取得した期の費用として処理する場合と、取得原価に含める場合があります。
固定資産を取得した際にかかった費用が取得原価に含められる付随費用なのか確認が必要です。
固定資産を取得するケースは購入のみならず、自社で建設するパターンや、交換を行う場合に至るまで様々と言えます。
それぞれケースに応じてどのように会計処理するのか、把握していく必要があるのです。
会計上は『連続意見書』において、正当な理由がある場合を除き、買入手数料や引取運賃などの付随費用は購入代価とともに、取得原価を構成することになっています。
つまり、固定資産を購入した際に付随費用は購入原価に含めるのが原則です(連続意見書第三・第一・四・1)
付随費用を含めた取得原価を基に、各期に減価償却費を計上していくことになります。
ですが、税務上では会計上の抽象的な記載ではなく、より明確な記載がされているのです。
税務上では会計上における正当な理由がある場合ではなく、取得原価に算入しないことができる付随費用が具体的に規定されています。
・不動産取得税などの租税公課
・建設に要した調査、測量、設計、基礎工事などのうち、計画変更で不要となった費用
・減価償却資産取得の契約を解除後、他の減価償却資産を取得したことによる違約金
・減価償却資産取得に要する借入金の利子
・割賦販売で取得した減価償却資産の取得価額が、代金回収の費用や利息などに区分されている場合
出典:No.5400 減価償却資産の取得価額に含めないことができる付随費用
このような場合には、取得価額に算入せず固定資産を取得した期の費用に計上することができます。
購入する場合以外にも固定資産の取得とする場合があり、それぞれ取得原価の決定方法が異なるのです。
以下では、それぞれの取得原価の決定方法について解説していきます。
同一種類同一用途の固定資産の交換の際には、対価とした自己所有の固定資産の適正な簿価により評価します(連続意見書第三・第一・四・4)
時価などを基準として公正に評価した額により評価します(連続意見書第三・第一・四・5)
対価とした株式の発行価額をもって受け入れた固定資産を評価します(連続意見書第三・第一・四・3)
原価計算基準に従って製造原価を計算した額を、時価建設した固定資産の評価額とします(連続意見書第三・第一・四・1)
固定資産は長期的に会社において利用していくので、価値が徐々に低下していきます。
会計ではこれに合わせて費用を配分する為、費用配分の原則の下減価償却を行い、各期に費用として配分していくのです。
付随費用が取得原価に算入されることで、付随費用分に関しても各期に費用として配分していくことになります。
取得した際に費用とする場合には、1度に費用計上するのに対して、付随費用は固定資産の取得原価に含められた後、利用による収益と費用の配分を期間的に対応させていくのです。
今回、固定資産の取得価格に関する会計処理について解説してきましたがいかがだったでしょうか?
土地や建物などの固定資産を取得した場合には、取得価格に付随費用を含めて取得原価を算定するのが原則です。
『連続意見書』によれば会計上は正当な理由がある場合には、取得原価に付随費用を含めなくても良いとされています。
これに対して、税務上はより具体的に列挙されているので、分かりやすいです。
取得原価に関しては『連続意見書』において評価方法が掲載されており、それぞれの方法に従い評価していきます。
固定資産の評価額は、固定資産の利用とともに費用配分の原則により、減価償却費として各期に費用配分して収益と期間的に対応させるのです。
固定資産の付随費用を取得原価に算入することで、固定資産と共に減価償却費を構成することになり、各期に費用配分されます。
これに対して付随費用を取得原価に算入しない場合には、取得した期の費用として計上することになるので、費用が取得原価に算入するよりも多くなります。
費用が多くなると利益が少なくなる又は損失が大きく計上されますが、利益操作の為に取得原価に含めるかどうかを決定するのではなく、あくまでも含めないで良いパターンが存在しているという認識に過ぎないのです。
今回ご紹介した内容が、固定資産の取得価格に関する会計処理の理解の一助となれば幸いです。