令和3年8月17日~19日に実施された2021年度(令和3年度)第71回税理士試験の結果が、令和3年12月17日発表されました。合格された方、おめでとうございます!(インターネット版官報は「こちら」から)
このコラムでは、令和3年度税理士試験の結果詳細及び税理士試験合格者の合格後のキャリア、働き方について情報提供致します。あわせて、残念ながら不合格になった方にも役立つキャリア形成のポイントもご紹介するので、最後までご覧ください。
それでは、令和3年度(第71回)税理士試験の結果速報について紹介します。
令和3年度(第71回)税理士試験の受験者数は27,299人(実人員7,205人)で、前年令和2年度(第70回)税理士試験の受験者数26,673人(実人員6,703人)よりも増加傾向です。ただし、令和2年度が新型コロナウイルス感染症の影響・資格を目指す人自体の減少傾向を受けて大幅に受験者数を減らしたという事情があったため、令和3年度の受験者数は「やや持ち直した」と考えるのが正確でしょう。
ただ、それに反比例する形で、5科目到達者数・一部科目合格者数の数は低下、令和2年度よりも合格率が下がったという全体的な傾向がうかがえます。
参照:「令和3年度(第71回)税理士試験結果」(国税庁HP)
前年度と比較すると、令和3年度税理士試験は最終合格者が約60人減少、合格率も1.5%低下するという厳しい結果となりました。女性の受験生の最終合格者数が前年度と変わりない点を踏まえると、女性受験生が健闘した試験結果だと考えられます。
なお、令和元年度(第69回)税理士試験の試験結果は、5科目到達者数749人、一部科目合格者数4,639人、合格率18.1%です(令和2年度(第70回)税理士試験結果)。つまり、令和3年度は合格率は例年並みに戻り、最終合格者数は減少傾向を維持しているといえるでしょう。
次に、令和3年度(第71回)税理士試験の年齢別合格率をチェックしていきましょう。
全体的な合格率の低下を受けて、各年代の合格率も満遍なく下落傾向です。ただし、31歳~35歳世代の合格率は令和2年度税理士試験21.7%だったことを踏まえると、社会人受験生の受験レベルが相対的に高まっていると読み解くことができます。
さらに、税理士試験の科目別結果データにも注目していきましょう。特に、科目合格制が採用される税理士試験では、試験の選択戦略が最終合格には欠かせないポイントです。
残念ながら今回不合格となった方のうち「受験した科目に手ごたえがなかった」「勉強を開始して間もない時期の受験だから落ちても当然だ」という人は、今後の受験戦略を練り直す余地があるでしょう。
科目別合格率の下落率が激しいのが簿記論・法人税法・住民税の3科目です。
簿記論・法人税法は令和元年度から令和2年度にかけて合格率が大幅に増加した反動で、令和元年度水準にまで合格率が低下しています。
住民税は令和元年度・令和2年度と高水準の合格率を維持していたのが、令和3年度は他の科目と同水準の合格率に。住民税の受験者層が「最終的な5科目」として選択することが多く、受験生レベルが高いことを前提とすると、今年度の「ひとり親及び寡婦に対する税制上の優遇措置」「個人住民税における長期譲渡所得の課税特例措置」「個人住民税の総合的な理解を問う問題」の難易度が比較的高かったことが見受けられます。
これに対して、会計学科目である財務諸表論は合格率の上昇傾向が維持されたまま。会計上の見積り・キャッシュフローの基礎理解が問われるなど、例年通りの基本問題が出題されたことが要因でしょう。
税理士試験に5科目最終合格を果たした方は、合格発表日(令和3年12月17日)、官報に受験地・受験番号・氏名が掲載されます。その後、合格証が郵送されるという流れです。
これに対して、5科目には到達していない科目合格者・免除決定の受験生・不合格の受験生に対しては、税理士試験等結果通知書が郵送されます。つまり、一部科目に合格したか否かは結果通知書が手元に届くまで分からないという状況です(令和4年1月6日までに通知が届かない場合には国税審議会税理士分科会事務局宛((代)03-3581-4161)まで照会)。
なお、税理士試験に受験申込みをした科目をすべて欠席した人には試験結果の通知はありません。
「はじめて税理士試験を受験して2科目に合格した」「最終科目合格に手が届かなかった」など、税理士試験の受験生のなかにはいろいろなステージが混在しています。
ただ、いずれの段階にも共通するのが、「税理士試験の最終合格を目指せる環境に身を置く重要性」です。現役大学生なら学業との並行、社会人なら働きながら受験勉強の時間を作ること、専業主婦の方なら家事・育児との両立など、各受験生が置かれた状況に応じて「最終合格を目指せるだけの勉強時間を確保する」という姿勢がポイントになります。
たとえば、次のような選択肢があるので、ご自身の状況に適したキャリアをご選択ください。
「今の仕事を辞められない」「勉強時間を集中的に確保したい」という場合には、資格スクールで効率的なカリキュラムをこなすのか、完全独学に切り替えるのかなど、来年度以降に向けた具体性のあるプランを検討してください。
また、「仕事でも税務に触れながら税理士試験に挑戦したい」という場合には、会計事務所や一般事業会社の経理部門に転職するのがおすすめです。特に、すでに3~4科目に合格している受験生の場合には、最終合格後のキャリアについて具体的に考える時期に差し掛かっています。BIG4などの大手税理士法人でも科目合格者の求人を出しているので、積極的に挑戦しましょう。
特に、会計・経理業界は人材不足の業界です。できるだけキャリアの浅い段階から優秀な人材を確保するために、各社・各事務所が「試験休暇制度」「専門学校の学費補助制度」「残業の免除制度」「勤務時間の臨機応変な対応可」などの税理士試験受験生に向けたサポート体制を充実させています。
「会計・経理業界で働きながら税理士試験最終合格を目指したい」という方は、応募条件などを細かくチェックして、気になる一般事業会社・税理士事務所・税理士法人に応募をしてみましょう。