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税理士事務所と税理士法人の違いとは?転職希望者に向けて働くメリット・デメリットも解説

HUPRO 編集部
税理士事務所と税理士法人の違いとは?転職希望者に向けて働くメリット・デメリットも解説

税理士とは、税務に関する専門家として、税務代理・税務書類の作成・税務相談という「税理士業務」を業とする職業・仕事・資格のこと(税理士法第2条各項)。独立した公平の立場から、納税義務者の納税義務の適正履行をサポートするとともに、申告納税制度の理念を実現するという職責を担っています(税理士法第1条)。

このような専門性の高い業務を担う税理士ですが、実際に事業を展開する際には、税理士事務所・税理士法人という屋号を背負わなければいけません

そこで、このコラムでは、税理士事務所・税理士法人の違いや、税理士事務所・税理士法人それぞれで働くメリット・デメリットについて解説します。これから税理士業界でキャリアを積もうという人にとって、「自分がどのような業態で仕事をするのか」「どのような方向性で独立を果たすのか」「どこに転職するのか」は決して無視できないポイントのはず。将来的なキャリア形成を見据えるためにも、税理士事務所・税理士法人の区別について、正確な理解に努めましょう。

税理士事務所と税理士法人の違いについて

まずは、税理士事務所と税理士法人の違いについて詳しく見ていきましょう。

あわせて、街中でよく目にする「会計事務所」についても定義を整理するので、以下をご確認ください。

税理士事務所とは

税理士事務所とは、税理士が個人事業主として税理士業務を個人経営している業態・運営形式のことを指します。

「税理士事務所」は税理士法上要求されている正式名称のことで、俗称として「会計事務所」と名乗ることも多いです(税理士法第40条2項)。つまり、税理士事務所と会計事務所はまったく同一の存在だと考えられます。

税理士事務所の特徴は次の通りです。

支店展開できない
代表税理士の死亡によって事務所が消滅する
所長税理士は個人事業主(個人に所得税が発生する)

まず押さえるべきポイントは、税理士事務所を開業している税理士は支店を展開できないという点(税理士法第40条3項)。たとえば、東京で税理士事務所を開業している税理士は、大阪に別の支店を展開することができません。支店展開をするためには、税理士法人の形式を取る必要があります。なお、税理士法人で働く社員(税理士)は、税理士事務所を自ら開業することもできません(税理士法第40条4項)。

次に、税理士事務所は「あくまでも所長税理士が個人事業主として開業している」という業態であるため、代表税理士の死亡によって事務所自体が消滅します。また、所長の納税義務は「個人所得税」という枠組みで果たす必要があります。

税理士法人とは

税理士法人とは、税理士業務を組織的に行うことを目的として、税理士が共同して設立した法人のことです(税理士法第48条の2)。2001年(平成13年)の税理士法改正で創設された新業態です。

税理士法人として事業を展開する場合には、かならずその名称に「税理士法人」という文言を使用して、周囲に対して税理士法人であることを分かりやすく明示しなければいけません(税理士法第48条の3)。

税理士法人の特徴は次の通りです。

支店展開できる
代表税理士が死亡しても法人格は存続する
税理士法人という会社に対して法人税が発生する

税理士法人のイメージは「会社」です。代表社員税理士(社長・代表取締役等)と社員税理士(従業員)という位置づけになります。税理士法人は法人税を納付し、毎月給与を受け取る社員税理士は源泉徴収による天引き後の給料を受け取るというように、一般事業会社のサラリーマンと同じような扱いになるのが一般的です。

そして、税理士法人の最大の特徴は、税理士事務所では認められていない支店展開が可能だという点。クライアントのなかには全国に支店を展開している大手企業も多数存在するため、支店展開できる税理士法人の方が全国展開している顧客のニーズを充たしやすいと考えられます。

また、「税理士法人」という方式で会社に法人格が認められているため、代表社員税理士が死亡しても法人としての業務を継続することができます。

税理士事務所(会計事務所)と税理士法人の違いを整理

以上をまとめると、税理士事務所(会計事務所)と税理士法人の違いは次の3点です。担当できる税務の内容に一切違いはありません。

支店展開の可否
代表者死亡後の取り扱い
納税義務の履行方法・課税内容の違い

「税理士事務所と税理士法人のどちらが優れている・劣っている」ということではありません。どのような業務に特化したいのか、どのような事業展開をしたいのかなどの観点から業態は選択されるものです。

たとえば、「ひとりで税理士としてやっていきたい」「地域密着型で日々の納税サポートを行いたい」という場合には、税理士事務所が適切なことが多いでしょう。もちろん、節税の観点から法人化することは妨げられません。

その一方で、「大手企業を相手に税務コンサルなどに力を入れたい」「全国から顧客を集客したい」という場合には、支店展開などの方法で拠点を多数置くことができる税理士法人を選択するケースが多いはずです。

このように、税理士事務所・税理士法人では、税理士法によって許容された業務範囲は同一であるとはいえ、実態として取り扱う業務内容に違いが生じることになります。両者の違いは、「優劣ではなく、選択による結果」だとお考えください。

税理士事務所と税理士法人で働くメリット・デメリット

ここまで紹介したことから、税理士事務所・税理士法人には数々の違いがあるため、結果として取り扱い業務にも差が生じるということが分かりました。

そこで、ここからは、税理士試験にチャレンジ中の受験生、現在税理士として仕事をしながら転職を検討している方、そして、今は業界未経験だがこれから経理・会計業界でのキャリア形成を検討している方に向けて、税理士事務所と税理士法人で働くメリット・デメリットについて、それぞれ比較していきながら解説していきます。

税理士事務所で働くメリット

意思決定スピードが速い
個人に深く関わって仕事ができる
アットホームな雰囲気で仕事ができる

税理士事務所は、小所帯でアットホームな雰囲気で運営されている場合が多いようです。顧客の中心層は個人事業主や地域の中小企業などが一般的です。

個人の裁量も大きく、経営者の方と税務に関して相談をしたり提案ができることは、働く上で大きな魅力といえるでしょう。税務業務全般に満遍なく触れることができるという意味で、「基本から学びたい」「将来的には自分も税理士事務所を経営したい」という人がノウハウを取得するのに向いています。

税理士事務所で働くデメリット

税理士事務所は税理士法人よりも小規模経営になることが多いので、税理士法人に所属するケースと比べると、大企業や額面の大きい仕事を担当する経験は積みにくいのがデメリットです。また、今後グローバル化が進む世情において、国際的な取引を行うクライアントにも出会いにくいでしょう。結果として、国際税務や大規模M&Aなどのノウハウに触れる可能性も低いでしょう。

したがって、「大きなお金に関わる仕事がしたい」「大型の案件をしたい」「新鋭的な業務にチャレンジしていきたい」というキャリア展開を希望している人にとっては、税理士事務所で働くメリットは少ないと考えられます。

税理士法人で働くメリット

大きな法人を相手に仕事ができる
細分化された環境で自分の強みに集中できる
支店が展開されていれば日本全国で活躍できる

税理士法人で働くメリットは、クライアントに大手企業が多いこと・仕事あたりの単価が高額なケースが多いことが挙げられます。知名度のある顧客相手にバリバリ仕事をしていきたいという人にはメリットが大きいでしょう。

また、税理士法人では基本的にチーム制を組んで案件を処理する体制が取られるので、「細分化された業務のなかから自分の得意ジャンルを伸ばしていきたい」という人にもおすすめです。税務には得意・不得意があるもの。人数規模の多い税理士法人には、苦手を他者に頼りながら自分なりの専門性を磨くという環境が揃っています。

さらに、税理士法人なら2つ以上の事務所を持つこと(支店展開)が可能になるので、希望する地域で仕事をしたい(場合によっては海外事務所も)という希望を充たしやすいでしょう。赴任先で新たなビジネスキャリアの可能性が生まれるなど、税理士としての仕事だけにこだわらない・幅広いビジネスシーンに触れたいという人におすすめです。

税理士法人で働くデメリット

税理士法人は「会社」です。特に、税理士試験・公認会計士試験に合格した人の多くが最初に入所する大手ファームでは、何百人という専門家・事務員が共同で仕事をしています。

したがって、「自分で首尾一貫全てのことをしたい」「業務に裁量が欲しい」など、業務選択の幅に主体性を見出したいという方には、規模の大きい税理士法人は不向きでしょう。

まとめ

税理士事務所と税理士法人の違いは、「個人経営か会社か」という点。税務という業務の特殊性を担う仕事であることも合わさって、両者の間には数々の違いが存在します。

そして、税理士事務所・税理士法人のどちらでキャリアを積んでいくかは、「自分がやりたい仕事の内容」を明確にするのがポイント。自分の軸がはっきりすれば、希望通りに成長できる・想像以上のステップを歩める環境に出会えるでしょう。

この記事を書いたライター

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