経理の仕事で最も重要なものが「年次決算」。日次業務も月次業務も、年次決算に向けた積み重ねです。この記事では、経理業務において、一年の集大成である年次決算について解説します。
「決算」とは、一定期間の収入・支出を計算し、利益や損失を算出することです。年次決算は、1年間における企業活動の総まとめ。決算書を作成して実績を外部に報告することと、税務署への税務申告は、会社法によってあらゆる企業の義務となっています。
上場企業においては、投資家への情報提供をより細かく行わなくてはなりません。よって、年次だけでなく、3ヶ月に一度の四半期決算・半期に一度の中間決算の公開も金融商品取引法により義務化されています。
その他に、月次決算・日次決算という業務もあります。これらは企業活動においてより細かく収支を確認したい場合に行うものです。どのレベルまで集計して把握するかは企業によって異なります。例えば、世界的に店舗を持つユニクロは、毎日の売り上げを日次決算によって把握し、売上の少ない日は仕入を調整するなどきめ細かい経営判断を行っていることは有名です。
法人税の確定申告ついて、法人税法では、「事業年度終了日の翌日から2カ月以内」に税金を申告し、納付することも義務付けられています。
しかし、税金申告までには、
決算→決算書類(計算書類)の作成→株主総会での承認→課税金額の計算→申告・納付
という作業工程があります。2ヶ月でこなすには非常にタイトなスケジュールです。
(そのため、会計監査を受ける必要がある上場企業においては、定時株主総会の期限を1ヶ月延長して、3ヶ月以内にできるという特例があります。)
いずれにしても、納税までを期限内にこなすためには、決算書などの報告書類は2週間程度で完成させる必要があります。
さらに、その期間中も日次業務や月次業務をこなさなくてはなりません。年次決算の作業中の2週間は、経理担当者にとって1年間で最も忙しくなる時期といえるでしょう。
年次決算は、以下のような順序で行われます。
ひとつずつ、何をすべきかを解説します。
会社における日々のお金の流れは、伝票から勘定科目ごとに「総勘定元帳」に記載されます。
決算では、勘定科目ごとに取引の総括を行いますが、最初に行うのが「試算表」の作成です。「試算表」には、帳簿に記載されたすべての科目の借方、貸方の金額が記載され、その内容によって「残高試算表」「合計試算表」「合計残高試算表」の3つがあります。
・残高試算表:総勘定元帳から勘定科目ごとに借方と貸方の合計を差し引きし、まとめたもの
・合計試算表:総勘定元帳から各勘定科目の借方合計と貸方合計をまとめたもの。会社が一定期間に取引した合計額が把握できます。
・合計残高試算表:合計試算表と残高試算表を組み合わせて作成するもの。
それぞれの試算表を作ることで、日々の仕分けや伝票から総勘定元帳への転記が正確に行われているかどうかを確認できます。
もし記帳にミスがなければ、各試算表の借方・貸方の残高は一致するはずです。
合わない場合は、その勘定科目についておかしな点がないかを遡って調べ、修正します。
試算表の作成の次に行うのは「決算整理」です。
決算整理とは、決算時点で行う最終的な修正のこと。企業の取引の中で1年分をまとめて帳簿に記録し、修正を行うものです。
主な決算整理事項は、以下のものがあげられます。
これらの決算整理を行い、あらたに記帳します。
注意事項としては、固定資産の減価償却費は、月次決算で仮に入れていることも多くそのままにしておくと間違った決算となってしまうことがあります。そこで、年次決算では、適切な減価償却費を計算するとともに、月次決算で入力した減価償却費の取り消しを忘れずに行いましょう。
また、貸倒引当金、賞与引当金などの勘定科目についても、決算に織り込むことになります。引当金については決算が始まる前に計算できてしまうものもあるので、決算前にできる作業は先に終えておくと、決算整理作業をいくらか楽にできるでしょう。
決算整理が終わったら、いよいよ決算書の作成です。
会計ソフトを導入している場合、決算整理まで終了すれば決算書類はワンクリックで出力できますが、それぞれの作成方法について簡単におさらいしておきましょう。
決算整理後の残高試算表(整理後残高試算表)を確認してみましょう。
このうち、費用と収益に属する勘定科目を集め、収益から費用の合計を差し引くことで純利益を算出できます。
同じく整理後残高試算表を確認しましょう。繰越利益剰余金に当期純利益を足すことで、利益剰余金を算出できます。
年次決算業務は忙しい中で様々な作業をしなければなりません。手際よく決算をおこなうためには、日ごろの経理業務をおろそかにせずにやっておくことが重要です。
例えば、月次決算で不明な科目はその都度つぶしておくことや、伝票記載においても勘定科目の補助科目を作って管理しておくなど、マメに確認して不明点をなくすようにしておきましょう。
決算作業の中で見逃してしまったり、数字が合わない内容を確認しようとしても、補助科目がわからないと調査に手間取ってしまいます。
年次決算業務は、経理業務の中でももっとも重い業務。しかも期間は2週間と短いです。いざという時に大変なことにならないよう、経理部内の業務をきちんと行っておくことはもちろん、日常的な経費精算業務や、棚卸業務など、経理部外の業務についてもスムーズに行えるような体制構築を行うことも求められるでしょう。