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「かけ算思考」で常に挑戦をアップデート。世界に誇るべき日本の外食産業にベンチャーの視点で貢献する株式会社トレタCFO小國健児氏のキャリア遍歴

HUPRO 編集部
「かけ算思考」で常に挑戦をアップデート。世界に誇るべき日本の外食産業にベンチャーの視点で貢献する株式会社トレタCFO小國健児氏のキャリア遍歴

学生時代に「米国公認会計士」を取得。外資系企業でファイナンスヘッドを務め、
現在は株式会社トレタで CFOとして活躍する小國 健児氏。

今回は小國氏が大切にしている自身の強みを構築するための「かけ算思考」や
ベンチャーの世界へ飛び込んだ経緯、今後のビジョンなどについて
HUPRO編集部が詳しくお話を伺いました。

2006年 日本IBM(株)入社
グループ経理⇒主計部
2010年 サノフィ(株)入社
財務戦略部⇒FP&A部
2014年 グローバル本社へ出向
⇒財務部にて資産運用
2016年 サノフィ(株)帰任
⇒事業部のファイナンスヘッド
2018年 GROOVE X(株)入社
⇒ファイナンス全般を担当後、2019年CFO就任
2021年 (株)トレタにCFOとして入社

【小國氏のキャリアグラフ】

「かけ算思考」で米国公認会計士取得へ

―どのような学生時代を過ごされていましたか?

高校はバスケットボールの推薦で入学し、付属高校からエスカレーター式に大学へ進学したので「受験」を経験していないのがある意味でコンプレックスというところがありました。そこで在学中は勉強に力を入れたいと考えていました。その時目を付けたのが「米国公認会計士」の勉強でした。

商学部だったので税理士や公認会計士を目指そうかと考えたこともあったのですが、何か特徴を付けたい、差別化したいと学生なりに考えた結果、将来どんな道に進んでも役に立つであろう「会計」×「英語」という分野が目に止まりました。
当時学生はまだほとんど挑戦していなかった米国公認会計士の資格に挑戦し、在学中に全科目合格しました。

-その後の就職の際にはどんなことを軸に動かれていましたか?

業界ではなく職種を重要な軸として考えていました。
せっかく会計を勉強したということもあり、ダイレクトに知識を役立てる環境を探しました。

当時の大手日本企業は職種別の採用をしておらず、入社してからどこに配属になるかわからない状況に違和感があったのと、自分のキャリアはなるべく自分でコントロールしたいと考え、職種別採用を行っている外資系中心に受けていった結果、日本IBMに入社をしました。

-日本IBMのグループ経理、主計部ではどのようなお仕事をされていましたか?

まずは子会社の経理を担いました。日本IBMは大きな会社で子会社が何十社とあり、その子会社の経理をまとめて行うシェアードサービス子会社にて、決算や確定申告など、経理らしい経理実務を学びました。

次に主計部というところへ異動になり、ここでは日々発生する取引について、米国基準の会計方針に照らし合わせてどのように処理すべきかのガイダンスを作成したり、本社への各種分析・レポーティングといった仕事をしました。

-その後、最初の転職を決めたのはどういった理由でしょうか?

それまでは自分がやってきた勉強をダイレクトに活かしながら実務を経験することを重視していましたが、それはある種の安全策でコンフォートゾーンから出ていないということに気づきました。必ずしも勉強したことを仕事にするのではなく、自分が本当は何をやりたいのかというところに意識を向けたときに、もっと事業寄りの仕事がしたいと思うようになり、社内外でオポチュニティを探ったところ、先に社外で見つかったというのが転職のきっかけです。

-入社されてから財務戦略部。そして海外赴任も経験されていますが、具体的にどんな業務をされていたのですか?

財務戦略部では、一般的な財務の仕事に加え、事業提携の際の財務面でのサポート、M&Aの検討、資産運用など幅広く経験させてもらいました。そのような仕事をしたくて自分なりに勉強をしていたということもあり、それらの知識や前職での実務経験が好循環で回っていく感覚があり、非常に楽しかったです。

その後、FP&Aという、日本企業でいうところの経営企画部のようなところに異動し、事業計画や予算の策定をおこない、その達成のために事業部と並走するという役割を経験しました。もともと事業寄りの仕事がしたいと考えての転職でしたので、こちらも非常に満足度が高かったです。

そして、サノフィ株式会社はフランス系の会社なのですが、財務の本社機能がベルギーに移管されていくタイミングで、ベルギーで働く機会を得ました。このポジションは、グループがもつ兆円単位の資産を運用するという非常に専門性の高い業務内容でした。
また結構珍しいことだと思いますが、日本ではマネジメント経験はなかったにもかかわらず、このタイミングでマネージャーになり、本社で初めて部下をもつという形になりました。初めての海外勤務&マネジメント経験ということで、チャレンジングではありましたが、小さいチームだったこともあり和気あいあいと働きながら、海外生活を満喫しました。

-帰国後はどんな業務をされたのですか?

売上高でいうと1,000億円規模の事業部のファイナンスヘッドに就任しました。ファイナンスヘッドは正式なタイトルではありましたが、FP&Aもしくはコントローラーのヘッドといったほうがより実態に近いと思いますが、事業にコミットして事業部長と一緒に実績をつくっていくために、ファイナンス面でサポートをする役割を担いました。

-キャリアを見ると、新卒で就職されてから2年ごとに常に新しいことに挑まれていますが学びへのモチベーションの源泉はなんですか?

経理財務の仕事は、座学の勉強が比較的ダイレクトに実務に繋がることが特徴のひとつだと考えています。努力をすれば実務に結びつき成果がでやすいところがモチベーションになっています。だからこそ今でも学び続けていますし、本を読む、セミナーに参加するなど自己投資は続けています。

現在目の前にある仕事をするための勉強は当然必要ですが、将来やりたい仕事に繋がる勉強もバランスよく続けることはさらに大事だなと感じています。将来的にいつかCFOを目指したいという思いもあったので、幅広く学び、複数の部署を経験することが、個人の差別化に繋がるという考えのもと、モチベーションを高く維持することに繋がっていました。

外資系企業から一転、エキサイティングを求めてベンチャービジネス

-その後ベンチャービジネスの世界へと飛び込みますがどういった経緯があったのですか?

少し大げさなことを言うと、自分がどのように日本経済への貢献をしたいかと考えた時に今のままではダメだと考えたのが理由です。
外資系で長く働いていると世界の中での日本法人の立ち位置が明らかに下がっていくのを肌で感じることがありました。日本は成熟したマーケットなので利益率は高いですが、それを配当という形で本社に送りますが、本社ではそれを成長率の高い新興国にどんどん投資します。

このような光景を目の当たりにした時に、外資系の日本法人にずっと在籍することに疑問を持ったのが転職の理由の一つです。

その中でもベンチャー企業を転職先として選んだのは、生きるか死ぬかのベンチャー業界は、エキサイティングな世界が広がっており、プロフェッショナルとしても成長できそうだなと考えたからです。

-数あるベンチャー企業の中から転職先の決め手はどういった点でしたか?

判定軸を考えると「ワクワクするかどうか」が当時の一番大きな軸でした。
エージェントを通して出会ったGROOVE Xという会社はペットのような家庭用ロボットを作っている会社で、企業としてものすごく尖っていて、なにかワクワクすることやっているなという雰囲気が強く、役職にはこだわらずに飛び込んでみました。非常にフラットな会社で、社長以外はみんな並列という特殊な企業でした。

ベンチャー企業CFOとして、大きなプレッシャーと常に闘い続けた日々

-ベンチャー企業に転職し、一年後にCFO就任されていますね。

会社の成長に伴いシンプルな全員フラットな組織ではなく、明確な役割が必要になってきました。そのなかで抜擢していただきCFOへ就任することになりました。

-Hard Thingsとは具体的にどんなことがあったのでしょうか?

率直に言ってベンチャー企業のCFOは大変だということを体験しました(笑)。大企業で働いていたときと比べて責任感が別次元の重さで、自分が判断を誤れば会社の運命を変えてしまうかもしれないというプレッシャーがあります。

家庭用ロボットというそれまで存在していない新しいマーケットを作っていくというのは、当然ながら当初の計画通り進むなんていうことはないですし、開発にもマーケティングにも非常に大きなお金が必要となる足の長い事業です。そのような状況で、投資家に魅力を伝えていくためのストーリーをつくりながら、実際にそのように事業が進捗できるように社内の重要な意思決定に関わっていくというのは、非常に難易度の高い仕事で眠れない日々が続きました(笑)。

-CFOとしての意思決定で意識されたことはありますか?

基本的には、数字とロジックでコミュニケーションをとることが求められると考えています。ただし、それだけでは不十分で、少しアート寄りな世界も大事にするべきだと思っています。多くの方々に協力いただき成果に向かって動いていくためには、論理以外の部分の定性的なコミュニケーションの仕方というのも非常に重要だと考えています。

-現在CFOを務めるトレタに転職された経緯について教えていただけますでしょうか?

前職で重要なミッションの一つを達成できたところで一息つけるタイミングがありました。後述するように自分のCFOとしての特性を考えたときに、より自分のバリューを出せる環境があるのではという思いに至り、また別のチャレンジがしたいと転職の意志を持ち始めました。スタートアップで働いていると社外の様々な方にお世話になる場面が多くありますが、お世話になった方々に転職を考えているとお話すると非常に有難いことに色々紹介してくれる方がいました。前職はエージェントを通してでしたが、トレタには知り合いの紹介で繋がりました。結果、後任のCFOが入社してくれたタイミングで転職することになりました。

トレタでは当初からCFOのポジションで入社をさせていただきました。CFOには様々なタイプがいると思いますが、誤解を恐れずに大別すると、資金調達や資本政策が得意な投資銀行出身の人、会計や内部統制に明るく強い管理部門を作るのが得意な会計士出身の人、私のように事業にコミットしていくのが好きなタイプなどがいます。

「どういったタイプを求めていますか?」と弊社代表との面談時にお聞きしたところ、フィット感が強かったというのが決め手の一つです。また自分が興味を持っている事業分野であることも大事な要素で、今後の日本経済にどう貢献するかを考えた時に、外食産業は日本が誇るべき産業だと考えていたので、そこに関われるのは面白そうだと思いました。

-現在はCFOとしてどんなお仕事をされていますか?

今は調達したお金をどう効率的に使って事業を伸ばしていくかというところを期待されています。弊社は2013年の創業時から、飲食店向け 予約/顧客台帳サービス「トレタ®」を基盤としてきましたが、コロナ禍で新しいサービスを続々とリリースし、会社の資源をどう配分するかという差配の必要性が高まっているタイミングです。自分でもやりたかったことであり得意分野だと思っていのでそこに注力した働きをしています。

-仕事にやりがいを感じるのはどんな瞬間でしょうか?

今、会社がどういう状況なのかを見える化することによって代表やメンバーに気づきがあり、そこから資源配分等の提案をすると、すんなりと受け入れられていく場面があります。過去にはそれがきちんと見えておらず正しい意思決定ができなかったかもしれないが、やり方によっては全員が納得したうえで進んでいくことができる。それが上手にいった時が仕事の一番面白いところだと思います。

また弊社は、飲食店にサービスを提供しているので、飲食店に行けば、消費者として自社サービスを体験出来て、自社サービスが徐々に普及していく過程を見られるのは非常に今の仕事のやりがいに感じている部分です。

-現在、トレタではどんな人材を求めていますか?

弊社は「すべての飲⾷店に、テクノロジーがもたらす豊かさを。」をミッションに掲げ、飲食店向けの各種サービスを提供しています。基盤事業である「トレタ®」に加えて、今年は飲食店の電話予約をAIで自動受付する「トレタ予約番」や飲食店向け店内モバイルオーダー「トレタO/X」など立て続けにリリースし、導入飲食店の拡大を図っているというタイミングで、非常に企業として面白いステージです。

弊社では5つのプリンシプル(原則)を掲げているのですが、その中の1つである「主語は自分」というのが個人的に特に重要だと思っています。我々のようなベンチャー企業ですと、まだまだ整っていないことが多くありますので、放置しているとこぼれ落ちてしまうボールが多くあります。それらを積極的に拾い、必要であれば自ら新しいプロセスを提案・構築していく主体性が求められます。ここを意識してやり切ることができる人に是非来てもらいたいです。

「軸」を明確に選択の集中でキャリアを拓く!

-5年後10年後のキャリアは、どうありたいとお考えでしょうか?

個人レベルでいうと、5年後10年後はあまり考えなくなってきました。
若い頃は将来から逆算してキャリアを作っていく感覚があるタイプだったのですが、だんだん年齢やポジションが上がっていくうちに、会社の成長が自分の評価というようになってくるので、会社の成長にしっかり貢献するのが全てなのかなと思っています。

会社レベルでは、当然IPO(新規上場)は念頭にありますが、私のミッションとしては、IPOは、あくまで通過点に過ぎません。事業を継続的にしっかり成長させていく、支えていくということに注力してこの先仕事をしていきたいです。

-キャリアや転職に悩む読者へのメッセージをお願い致します。

キャリアに関しては自分の頭で考えて、決断の軸を明確にすることが重要になってくると思います。「スペシャリスト」と「ジェネラリスト」どちらをめざしたいのか?「できること」と「やりたいこと」は何か?などの軸を明確にしたうえで、今回のチャレンジが何を実現するためのものなのかを言語化することでキャリアはよりクリアになり、決断に納得感が出ると思います。

自分の決断に後悔をしたり、隣の芝が青く見えることは人間誰しもが経験することです。
そんな時に、どんな軸で判断したかを振り返ることができれば、自分の決断を前向きに捉えて進んでいくことができます。是非自分の中で大事にしたい軸を明確にしてキャリアを切り拓いていってください。

-本日はお時間いただき誠にありがとうございました!

今回お話をいただいた、小國氏がCFOを務める
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この記事を書いたライター

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