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「常に5年後を見据え、本質を見極め行動していく」株式会社タイミー取締役CFO八木智昭氏のキャリアを辿る。

HUPRO 編集部
「常に5年後を見据え、本質を見極め行動していく」株式会社タイミー取締役CFO八木智昭氏のキャリアを辿る。

「一人ひとりの時間を豊かに」株式会社タイミーでCFOを務める八木智昭氏。常に先の未来から逆算し、周囲がやらないことを選択して今までのキャリアを歩んで来ました。日本の大手銀行から外資証券会社、事業会社への経験を有する八木氏のキャリア遍歴をHUPRO編集部が伺いました!

2008年4月 三菱東京UFJ(現:三菱UFJ銀行)入行
2014年10月 三菱UFJモルガン・スタンレー証券に異動
2015年2月 モルガン・スタンレー証券に一時転籍
2020年3月 株式会社アぺルザ 入社
2020年12月 株式会社タイミー 入社 執行役員CFO 就任
2021年4月 株式会社タイミー 取締役CFO 就任

【キャリアグラフ】

キャリアの選択肢を広げるため金融業界へ

―八木さんはどんな学生時代を過ごされていたのですか?

努力をコツコツして、自分の目標を高く持ってそれを乗り越えていく性格でしたね。小学生、中学生、高校生の頃はずっとサッカーをやっていて、大学ではフットサルのチームを友人らと自ら作るなどしてスポーツに明け暮れていました。単位取得をしっかりとこなしながらも、大学生活の大半はフットサルに打ち込んでいましたね。

―大学卒業に向かってご自身のキャリアについて考えると思うのですが、最初はどんなキャリアを歩みたいと考えていましたか。

私は中央大学の法学部を卒業しているのですが、学部で学ぶような法律関連の仕事に就きたいとは考えていませんでした。スポーツに明け暮れる日々で、在学中にインターンなどでビジネスに触れる機会がなく、就活の直前になってどうしようかと焦りました。

せっかく法学部に入っているのだから資格を取って士業で働くことも選択肢にはありましたが、大学卒業の時点で自分のキャリアを一本に狭めることは良くないと考えていました。とりあえず今は間口を広げて色々な業界を幅広く見てみたいと思ったので、業界を絞ることなく就活していました。

―就活は具体的にどんな感じで進めたのですか?

「この仕事をやりたい!」という程職種への理解もなく、とにかく様々な企業を受けていました。全ての業界のトップ企業だけを受けていたので、過酷な就活でしたね。とにかく多くの企業を受けたので、就活の後半に行くにつれて職種や業界に関する情報が溜まっていくという利点もありました。

結果としては、結構な数の内定を頂けて、どこに就職しようかと考えた時に就活のきっかけでもあった「幅広くやりたいことを見つけたい」という考えから、全ての業界に関わることの出来る金融機関、銀行に就職を決めました。

周りと差をつける。周囲がやらないことに取り組み続ける

―実際三菱東京UFJ銀行(現:三菱UFJ銀行)に入行されていかがでしたか?

最初に配属された支店が小規模で、自分が出世ルートから外れているとその時点では感じてしまいました。この時は他の同期と同じように普通に働いていくだけではダメだと思い、人がやっていないことをやろうと考えました。

他の人とは大胆に違うことをやろうと考えたときに、そもそも企業が銀行に借り入れをするのは事業拡大をしている時であるということに着目して、こちら側から事業提案を行うことを始めました。

―事業提案は上手に行きましたか?

事業提案等の新しいことを始めるには当然現状の業務で結果を出す必要があり、その上で通常ノルマも達成しなければいけないので最初は結構大変でしたね。

そんな状況下で時間を確保するためにも、仕事の仕組み化を行い、効率的に仕事をまわせるようにしました。そして一期目にノルマ達成でき、その分できた残りの時間で事業提案に取り組みました。
ノルマも早々に到達でき、事業提案も行える好循環を生み出すことができました。

―他の人とは違った取り組みをする上で、大切にしている考え方はありますか。

何をするにも、物事の本質を考えるようにしています。行動を起こす前に、なぜそれが必要とされるのか、どういった理由でやらなくちゃいけないのかを考えることで、そもそもこれはやらなくていいのではないか、逆にもっとこうした方がいいのではないかという本質を見極めるようにしています。

銀行で働く中でノルマは何のためにあるのだろうと本質を考えたからこそ、私は事業提案に辿り着くことができました。

―その後、名古屋への異動のタイミングで満足度が谷の時期に入っていますね。この時、いったい何が挫折に繋がったのですか。

今まで働いていた支店ではお客様が中小企業であったのに対して、名古屋の営業本部に異動してからは大企業取引に変わり、取り扱っているものなどの難易度が格段に上がって、最初の数か月は何も分からない状態でした。

キャッチアップもなかなかできず、今まで大きな挫折を経験したことが無かった私にとっては、正直この時が人生史上一番きつかったです。逆に言えば、この時に精神的に底を見る経験をしたので、今後これ以上は大きなダメージを受けることはないという仕事に対するメンタルの保ち方を確立することができました。

3ヶ月ほど経ったころには大抵のことは一人で回せるようになり、ここでも自分の目標を達成できる好循環を作り出すことができました。以前よりもお客様の規模が大きいので事業の幅が広く、より経営戦略や新規事業の提案に取り組めたことは非常に良い経験になりました。

証券会社への転籍。フィンテックとの出会い

―その後、海外転勤の機会を逃したことで満足度が下がっていますが、そもそもなぜ海外転勤を希望していたのですか。

将来は英語を使って海外で働くことに憧れがあり、名古屋の営業本部で一緒に働いていた上司や先輩がみんな海外転勤を経験していましたので、自分も海外転勤をずっと希望していました。英語の勉強などかなり努力はしたのですが、結局行くことはできませんでした。

―三菱UFJモルガン・スタンレー証券に転籍されていますね。

そうですね。転籍しようと思ったのはより事業に近い立場で働くことができると考えたからです。海外転勤が叶わない中で、それ以外で他にしたいことを考えた時に事業拡大のためのM&Aや資金調達、経営戦略などに携わることができる証券会社で働きたいと考えていました。

そこで、モルガン・スタンレーであれば、トップティアの企業を相手にダイナミックな仕事ができて、加えて海外転勤のために勉強した英語を活かすことができると考えたので、社内公募を受けて転籍をしました。

―モルガン・スタンレーでは具体的にどのような仕事をされていましたか。

金融機関セクターで、M&Aなどの案件に携わっていました。ここでも周りとは違う、新しいことをやりたいと考えていました。今後の日本の金融業界を考えたときに、テクノロジーが金融に流入してくると考え、フィンテックに目をつけました。

―この時も、八木さんは周りが気付かないようなことに着目されていたんですね。

モルガン・スタンレーにいるとアメリカなどの先進的な市場の情報が入ってくるので、そこで得た情報の中から当時まだ日本ではあまり知られていなかったフィンテックに注目していました。

今ではフィンテックに特化した部署が日本の企業にもありますが、当時はまだあらゆる金融機関でも取り組む所が少なく、フィンテックに関して集めた情報を自ら周囲に提供していました。

その一、二年後には大手金融機関ではフィンテックが当たり前になり、またフィンテックを活用したベンチャー企業も出てきたので、そのIPO案件も新たに担当しました。現時点のことだけを考えるだけでなく、将来的な収益のポテンシャルをゼロから作っていく活動をしていました。

今までと全く違ったベンチャー企業の世界へ

―モルガン・スタンレーへの転籍、TMTへの異動を経て、2020年3月に株式会社アぺルザに転職されていますね。金融業界で活躍していくことを選ばずに、なぜこのタイミングで転職を決めたのでしょうか。

フィンテックの案件に強いこだわりはなく、自分が金融業界で価値を創出するための手段にすぎませんでした。また、テックを担当しているTMTのグループに異動した時は、上場企業の他、ベンチャー企業の担当(主にIPO支援)も行っていて、その中でベンチャーでの仕事が面白そうだなと思うようになりました。

そこで裁量権を持って自分が主体となって事業を作っていけるベンチャー企業であること、社会課題の解決に立ち向かう事業に携わっていることの二点から、アぺルザへの転職を決めました。

―今まで働いていた金融業界と比べ、ベンチャー企業は全く違う環境だと思いますが、そこに戸惑いや守備意識はありましたか。

金融機関では味わえない経営スピードの速さに驚きました。何ヶ月も費やして地道に調べて進めていくのではなく、即座に経営判断を行い直ぐに行動に移し、行動しながら軌道修正する等、時間の使い方から動き方まで今まで経験したものとは全く異なっていたので、ある程度の想定はしていましたがびっくりしました。

また、銀行だとルールやフローが決まっていてその中で判断していくのですが、ベンチャーはルールが無く自分たちで作っていくので、そこに順応してくことが最初は難しかったです。

ただ、今までと同じように何事も本質を見極めることを意識していたので、「このルールにはこういうロジックがあって作られている」と理由を自分の中で毎回突き詰めるようにしていたので、0→1にも臨機応変に考えることはできていましたね。

―事業会社で働くうえで、前職の金融業界での経験が活きたことはありましたか。

金融業界で働いていた時はアドバイザーの立場にいたので、事業会社に関する教科書的なナレッジはありました。ナレッジがあることで既に自分の中で判断軸が形成されていたことには今までの経験が役立っていましたね。

ただ、事業会社側になると自分の判断が会社全体に影響を及ぼすので、責任を持ったうえで意思決定をしなければならない重圧があり、そこに事業会社特有の難しさとやりがいを感じていました。

―その後、株式会社タイミーに転職されたのですね。どうしてご転職をされようと思ったのですか?

アペルザでは事業会社側の業務を一通り経験して、事業の根幹を学ばせていただいたので、次は違う事業会社でチャレンジしたいと考えていました。また、事業会社で営業責任者として上り詰めていくのではなく、経営の意思決定者の一人として社会課題を解決していくCFOという形で働きたいと思っていました。転職の条件としてCFOとして働けることも想定していました。

ただ、最初からCFOをストレートで目指すのでなく、事業サイドの考え方をしっかりと理解した上で、金融キャリアと事業キャリアの両輪で動かしていかなければならないと考えてはいました。

株式会社タイミーで社会課題の解決を

―では、二度目の転職先として、株式会社タイミーを選ばれた理由を教えてください。

「社会性のある企業」というのが理由です。私が入社したのが2020年12月で、丁度その時コロナ禍の影響で、飲食業界で働いていた人たちが次々と職を失っている状況でした。そんな有事の際に、タイミーが職を失った方に様々な仕事の機会を提供していました。まさに社会性があると感じました。

また、タイミーは従来の求人の在り方をビジネスモデルごと大きく変えた企業だったので、日本の社会課題のうち最も大きい課題である少子高齢化による人手不足を解決できると確信を持ちました。社会課題に立ち向かうベンチャーで働きたいと考えていたので、タイミーに転職を決めました。

―タイミーに転職された後、「毎月修羅場が続く」とありますが何があったのですか?

コーポレート体制が整えられていなかったことが大きかったです。タイミーは会社としてまだまだ未成熟な箇所も多く、毎月何かしらのハプニングが起きていました。コーポレートの体制もまだまだ固まらないまま、ハプニングへの対応に追われていた時には精神的に疲弊していましたね。

徐々にコーポレート体制も固まってきて、現在では内部統制への取り組みや、事業サイドが効率的に業務を行える仕組みなど、全社的に貢献できる土台作りをすることが課題でもあります。

―その後、「シリーズD資金調達完了」と共に満足度も上昇していますね。この資金調達は順調に進んだのでしょうか。

これは非常に大変でした。今回の資金調達はシリーズDだったので通常今までの資金調達と同じことではありますが、2020年の夏にタイミーは対飲食企業が中心だった事業を対物流企業に大きくシフトしました。

対物流企業中心の事業として資金調達をする中で必要な実績が6ヶ月程しかなく、なかなか提案がスムーズに通ることはありませんでした。実績としての6ヶ月もコロナ禍の数字でしたので、投資家に提案しても一過性のものであると判断され、企業価値を立証できずに苦戦していました。

そのような状況の中でも巨額の資金調達を実行しなければならないので、色々な角度から市場環境の未来を推測して、「こういったポテンシャルを持ったお客様が入るから、これだけの売上が見込める」というように、数字で将来をゼロから予測して投資家に提案していました。

―最後に、管理部門で働くことを目指すヒュープロマガジンの読者に向けて、メッセージをお願いします。

管理部門はいわゆる表舞台に立つわけではないので地味だと思われるかもしれませんが、管理部門での経験は必ず他の仕事に活きます。しかし、いきなり管理部門に入るよりは色々な部門で経験を積んだ後で、管理部門に入ってナレッジを活用していくことに面白さがあると思います。

私自身も視野を狭めずに、5年後を見据えて行動する実践ができたことは非常によかったと感じています。もし将来を見越さずに就職活動を設計していたら、事業サイドを経験せずに初めからストレートでCFOを目指していたかもしれません。過去の事業サイドでの経験があるからこそ、現在のCFOとしての自分があると思います。

自分のキャリアの可能性を最初から決めつけることなく、歩んで行っていただければと思います!

―本日はお話を聞かせていただき、ありがとうございました。

今回お話をいただいた、八木智昭氏がCFOを務める株式会社タイミーのHPはこちら!
株式会社タイミー

この記事を書いたライター

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